新聞用紙の高灰分抑制と印刷適性バランスの改善事例

新聞用紙の高灰分抑制と印刷適性バランスの改善事例

新聞用紙における灰分の役割と印刷適性の重要性

新聞用紙は、情報を広く、迅速に伝えるメディアとして社会に不可欠な存在です。
その生産工程においては、コスト面や資源の効率活用、印刷の鮮明さ、そして用紙そのものの強度など、多角的な課題への対応が求められます。
特に、「灰分」は新聞用紙の品質を大きく左右する要因の一つです。

灰分とは、主に紙の中に填充される無機物(カオリンや炭酸カルシウムなど)成分を指します。
灰分を高めることで用紙の不透明度やコスト削減効果が期待できますが、過度に増加すると印刷適性や用紙の強度に悪影響を与える可能性があります。
そのため、高灰分抑制と印刷適性とのバランス調整が、新聞用紙製造の現場では常に重視されています。

灰分が新聞用紙に及ぼす影響

紙の不透明度向上

新聞は裏写りを防ぐため、用紙の不透明度が求められます。
灰分を高く設定することで、光の透過を抑え裏写り減少を図ることができます。
しかし、過剰な灰分添加は用紙の過度な柔軟化を招き、耐久性や機械適性を低下させます。

コスト削減への効果

新聞用紙生産において、パルプ資源はコストの大部分を占めます。
このパルプの一部を灰分によって置換することで、製造コストの低減が可能です。
一方、印刷適性を損なうリスクがあるため、最適な配合比率が必要となります。

印刷適性とは何か

新聞用紙の印刷適性とは、インクの定着性、発色性、裏抜け防止、表面平滑性といった、印刷機での再現性や読みやすさにかかわる総合的な性能を表します。
ニュースが正確かつ素早く読者に伝わるためには、これらの印刷適性は犠牲にできない要素です。

インク定着性と発色

灰分が過剰な場合、インクの吸収が妨げられることがあり、印刷後にインクが表面に残り、発色が弱くなる場合があります。
また、乾燥工程においてもインクが適正に吸収されないことで、指にインクが付着したり、裏面への抜けが増加する問題が生じます。

表面平滑性の課題

綺麗な印刷面を得るためには、用紙表面が適度に平滑でなければなりません。
灰分には表面平滑性を向上させる効果がありますが、粒径や充填方法が最適でない場合には、逆に表面荒れが生じたり、紙粉が増えるリスクも指摘されています。

高灰分抑制の必要性と課題

塗工を行わない新聞用紙では、灰分を加えることでの媒体性能やコスト低減効果が重要ですが、昨今の印刷方式や高速化に伴い、過剰な灰分がオペレーションや刷り品質に不利な影響を与えるケースが報告されています。

紙粉の発生と抑制

灰分を多く添加した紙は、抄紙工程や印刷工程で紙粉が発生しやすくなります。
この紙粉が印刷機内に溜まると、機器トラブルや印刷ムラの原因となります。
したがって、灰分を必要以上に高めない工夫が求められています。

機械適性の低下

灰分が高いと、紙の強度が低下し、断紙や折り目の割れなど機械適性の低下にもつながります。
特に新聞輪転機の高速印刷では、こうした欠点が顕著です。

改善事例1:灰分管理の最適化

ある国内大手新聞用紙メーカーでは、従来26%だった灰分配合率を24%まで低減する取り組みを実施しました。
抄紙段階での無機フィラーの粒径制御と、パルプ品種の調整による配合見直しを進めたのです。

この効果として、紙粉発生量が従来対比で20%削減され、インクの発色も改善する結果となりました。
さらに、機械トラブルの回数も半減し、効率性と品質の両立が実現しました。

改善事例2:フィラー種類の切り替え

灰分に多用される炭酸カルシウムは、コストパフォーマンスに優れる反面、必要以上の発生は印刷適性を損なう要因です。
そこで、別の新聞社向けには、カオリンクレイの配合比率を上げ、炭酸カルシウム比率を下げた事例があります。

この切り替えにより、表面平滑性とインク密着性の双方が向上しました。
加えてカオリンは紙の表面密着性が高く、持続的に灰分量を抑えつつも新聞印刷の品質向上につなげることができました。

改善事例3:パルプの最適配合によるコスト抑制と品質向上

高灰分抑制にあたってはパルプ配合比率も重要です。
電子メディアが増加した昨今、新聞用紙メーカー各社は古紙パルプの高比率化と、それにともなう品質安定技術の開発を進めています。

古紙パルプはコスト削減に寄与しますが、灰分とともにインク吸収性や紙粉発生の調整が求められます。
そこで、高品質古紙パルプの選別や、抄紙工程での緻密な脱水・繊維分散制御が導入され、従来に比べ強度を維持したまま灰分を抑制し、かつ印刷適性も損なわない用紙設計に成功しました。

改善プロセスにおけるポイント

工程全体でのPDCAサイクル

新聞用紙の灰分抑制および印刷適性維持は、単一の工程だけでなく「原材料選定→製造→印刷→使用感」まで一貫した品質管理が不可欠です。
各部門ごとに細やかなデータ収集・分析・改善を繰り返すことで、最適バランスが維持されます。

顧客(新聞社)とのコミュニケーション

最終的な新聞品質は、印刷現場の意見や顧客クレームのフィードバックが重要です。
メーカーは定期的に新聞社との意見交換・試験印刷を行い、用紙の改善点や要望を素早く反映する体制を築いています。

今後の展望と持続可能性への配慮

新聞業界のペーパーレス化・電子化が進む中、新聞用紙自体の重要性も変化しつつあります。
一方、持続可能な社会の実現に向けて、RCF(Recovered Fiber:再生繊維)やバイオマス材料の開発拡大も進行中です。

高灰分抑制と印刷適性バランスの向上は、新聞用紙単独の課題だけでなく、資源循環や環境負荷低減にも直結します。
古紙利用率の向上やエネルギー効率の改善、化学薬品使用削減などとあわせ、今後も業界の責任ある対応が求められるでしょう。

まとめ

新聞用紙においては、灰分のコントロールが不透明度やコスト削減、印刷適性といった重要性能に大きな影響を及ぼします。
過度な灰分は印刷適性や機械適性に悪影響を与えるため、最適なバランスが必須となります。

現場では、複数の無機フィラーやパルプ配合比率の見直し、顧客との密接な連携による試験運用、そしてサステナビリティを意識した資源選定などが進められています。

こうした改善事例を参考にしつつ、今後も新聞用紙業界は品質追求と環境対応の両立を図りながら、社会に貢献し続けていくことが期待されます。

You cannot copy content of this page