クリーンベンチISO5の風速フィールドマップとHEPA漏れスキャン
クリーンベンチISO5とは何か
クリーンルームや研究室、医療・製薬の分野で欠かせない存在となっているのがクリーンベンチです。
なかでもISO5クリーンベンチは、非常に高い清浄度が求められる現場で活躍します。
ISO5は国際的なクリーンルーム規格で、粒径0.5μm以上の粒子が1立方メートルあたり3,520個以下という極めて厳しい基準を満たしています。
このため、半導体やバイオ、精密機械分野において重要な役割を果たしています。
ISO5クリーンベンチは、製品の品質や実験結果に直接影響を及ぼす可能性がある空気中の微粒子や汚染物質の混入を防ぎます。
従って、可動部や作業領域の空気流れを厳格に管理できるよう、運用や点検に高い技術と精度が求められます。
風速フィールドマップとは
風速フィールドマップの目的と重要性
クリーンベンチISO5の性能を安定して維持するためには、作業域内の気流分布を正確に把握しておくことが欠かせません。
そこで用いられるのが「風速フィールドマップ」です。
これは、作業面全体における空気の風速分布を可視化する作業で、ベンチの全域で設計値通りにクリーンエアが供給されているか確認するために行われます。
風速にムラがあると、局所的に乱流や滞留が起き、汚染物質が混入するリスクが急増します。
風速フィールドマップを用いて定期的に空気の流れをチェックすることは、ISO5クリーンベンチの信頼性と安全性を担保するための基本的なメンテナンス項目のひとつです。
測定方法と標準的な手順
風速フィールドマップの測定は、主に熱線式風速計やアネモメーターが利用されます。
ベンチの作業面を一定のグリッド状に分割し、各交点ごとに風速を記録します。
例えば、幅1200mm×奥行600mmのクリーンベンチであれば、100mm間隔ごとに計測点を設けるケースが一般的です。
測定時は、通常運転状態でサンプルなどの障害がない状態で行い、計測値のばらつきや平均風速を算出します。
ISO5クラスの場合、垂直流(ダウンフロー)では概ね0.3~0.5m/s程度の平均風速が求められることが多く、各測定点でこの基準を下回らないように調整します。
フィールドマップ作成時の注意点
測定機器の精度はもちろん、気流に影響のある障害物がないか、測定環境が一定かを事前に確認することが重要です。
また、フィルタの寿命やファンの劣化が進むと徐々に風速が低下するため、計画的な定期測定が欠かせません。
万一、基準を外れる測定点があれば、フィルタやファンの清掃・交換、ダンパの再調整など機器側のメンテナンスが必要です。
正確なフィールドマップ取得は、運用トラブルの“早期発見”と“未然防止”に直結します。
HEPAフィルタの役割と漏れスキャン
HEPAフィルタの構造と清浄化の仕組み
クリーンベンチで供給される清浄エアは、ファンで引き込んだ外気がHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を通過する際に、ほぼすべての微粒子や粉塵、細菌類が物理的に捕集されることで達成されています。
ISO5レベルのクリーン領域を維持するには、HEPAフィルタの「完全性」が絶対不可欠です。
HEPAフィルタは理論上、0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を誇ります。
しかし、フィルタ自体や取り付け部に劣化や損傷、シール不良があると、その隙間から未浄化エアが漏れ、ボックス内の清浄度が著しく損なわれます。
HEPA漏れスキャン検査とは
HEPA漏れスキャンは、「HEPAフィルタの完全性」を保証するための専用検査です。
特定粒径のエアロゾル(試験用粒子)をフィルタの上流側に導入し、下流側(作業域)でエアロゾル検出器を移動させて漏れスポットがないか徹底的に調べます。
これにより、フィルタの接合部や取り付けフレーム、ガスケット部分で気密不良が発生していないか可視化できます。
スキャニングは通常、ベンチ全体のHEPAフィルタ面を5cmごとに丹念に移動しながら実施します。
漏れ基準は、下流側で上流導入量の0.01%未満(1/10,000以下)が一般的です。
ここまで厳密に高精度チェックを行うことで、微細なフィルタピンホールやシールのわずかな隙間も見落としません。
漏れスキャン後の適切な処置
万一、漏れが検出された場合は、該当部位のフィルタ取付け直し、シール材増し締め、あるいはHEPAフィルタ全交換が求められます。
また、漏れスポットの再検査やクリアランステストもしっかり行い、完全に基準を満たした状態でしかクリーンベンチは稼働させてはいけません。
漏れスキャン合格の記録は、品質保証や第三者検査にも重要な証拠となります。
風速・フィルタ検査の実施頻度と管理ポイント
クリーンベンチISO5の性能維持のためには、風速フィールドマップ測定・HEPA漏れスキャン検査のどちらも“定期的な実施”が原則です。
JISやISO規格、GMP(医薬品製造関連の管理基準)では、これらを「年1回以上」行うことが求められることが殆どです。
突発的な性能低下や異常時だけでなく、HEPAフィルタの標準使用年数(2~3年程度)ごとや、設置環境・運用条件が大きく変化した場合も、追加実施が望ましいです。
日常点検としては、風速異常警報や圧力損失の監視、運転開始時のベンチ全体清掃も欠かせません。
測定結果や検査履歴は必ず記録管理し、もしも異常データや傾向が見られた場合は迅速な是正対応を徹底します。
クリーンベンチISO5の信頼性を高めるために
クリーンベンチは、適切な初期設置と定期点検を徹底してこそ、その高い清浄度が維持できます。
とくにISO5レベルとなると、非常に繊細な管理が要求されるため、その運用には経験と知識が欠かせません。
専門業者による年次点検やアフターサポートの活用も、全体の信頼性向上には有効です。
ISO5クリーンベンチの運用では、たとえ一部分の性能低下であっても、作業全体や製品・試料に取り返しのつかない汚染リスクをもたらします。
「検査の省略」や「基準未達」の見落としは、研究や生産プロセス全体の根幹を揺るがすため、どんな小さな点でも科学的根拠に基づいた厳格な管理が不可欠です。
まとめ
クリーンベンチISO5の品質・安全性を守るには「風速フィールドマップ」と「HEPAフィルタ漏れスキャン」の2大検査の徹底が必須となります。
風速の均一性維持、HEPAフィルタの気密保持は、日々の運用にも安心と信頼をもたらします。
研究資産や製品品質を守るためにも、これらのテストや点検を正確かつ計画的に実施しましょう。
今後も進化を続けるクリーン環境技術と共に、最高水準のクリーンオペレーションを目指していくことが、現場や業界全体の発展につながっていきます。