コーティング液の粘度が季節で変わり仕上がりが揺れる課題
コーティング液の粘度が季節で変動する理由とは
コーティング作業において、液剤の品質や性能を保つことは非常に重要です。
なかでも、コーティング液の「粘度」は作業性や仕上がりに大きな影響を与える要素の一つです。
粘度とは、簡単に説明すると液体の「とろみ」の程度を示す数値です。
水のようにサラサラしているものは低粘度、ハチミツのようにトロリとしているものは高粘度と表現されます。
しかし、この粘度は季節や温度に敏感に反応するため、夏と冬、または昼夜の温度変化でコーティング液の挙動が変わってしまうことがあります。
それによって仕上がりにムラができたり、施工性が大きく左右されたりするケースが多いです。
粘度変動によるコーティングの仕上がりへの影響
コーティング作業時の理想粘度は、メーカーが推奨する温度・湿度範囲で最も安定した性能を発揮するよう設計されています。
ところが現場では、夏場と冬場で同じ粘度を維持するのが難しく、以下のような問題が起きることがあります。
夏場の高温環境下での粘度低下
夏場に気温が高くなると、コーティング液の分子運動が活発になり、粘度が下がります。
液体がサラサラになることで塗り広げやすくなる一方、下記のようなデメリットも生まれます。
・液ダレや垂れ、流動による塗膜厚ムラ
・短時間での蒸発や乾燥が進みやすく、均一な塗布が難しい
・巻き込み気泡、ピンホール(小さな穴)の発生率上昇
仕上がりが流れてしまったり、薄すぎる部分と厚い部分ができて性能が安定しなくなるリスクがあります。
冬場の低温環境下での粘度上昇
逆に冬場は気温の低下によって液の分子運動が鈍くなり、粘度が高くなります。
コーティング液がドロリとしてくると、次のような問題点が表面化します。
・材料の馴染みが悪く、塗り伸ばしや攪拌(かくはん)に手間がかかる
・刷毛やローラー跡が残りやすい
・必要以上に厚く塗布する事例が増える
このような「塗布ムラ」「ツヤむら」が発生しやすく、美観面・性能面ともに大きな影響が出る場合があります。
施工現場でよくある粘度異常によるクレームや不具合
コーティング液の粘度変化による不具合は、実際の現場でどのような事象として表れるのでしょうか。
代表的なトラブル例を紹介します。
塗膜のたれ・垂れジワ
夏場に希釈を必要以上に多くする、または粘度が下がりすぎてしまうと、表面から液体がたれて仕上がりが不均一になる「たれ」や「垂れジワ」が出やすくなります。
特に垂直面や天井への施工時に目立ちやすい症状です。
塗装中の目ヤセ・目飛び
冬場に粘度が高すぎると、施工中にローラーや刷毛で均一に広がらず、元の表面の地模様(目)がはっきり浮かび上がる「目ヤセ」「目飛び」が起こります。
この場合、追加の塗布が必要となり工期が延びたり、材料コストが増加する原因ともなります。
艶ムラ・色ムラ
粘度のバラツキがあると、部分ごとに塗布量や膜厚が違い、乾燥後に艶(ツヤ)や色のムラが発生し、美観を損ねます。
住宅・店舗のコーティングでは顧客クレームになるリスクもいるため、プロにとって要注意のトラブルです。
コーティング液の最適な粘度管理方法
こうした粘度変動の課題に対し、どうやって現場で適切な粘度を維持するかがポイントです。
ここでは、現場で実践できる3つの粘度管理対策をご紹介します。
温度計や粘度カップを使った定量的な確認
室温やコーティング液の温度を正確に把握しながら作業を進めましょう。
さらに「粘度カップ」(Fordカップ・Zahnカップなど)を活用してサンプル液を実際に計測し、標準値に近づける調整が重要です。
感覚ではなく具体的な数値で粘度を判断することで分かりやすくなります。
現場にあわせた希釈・調整の実施
夏場は水や溶剤希釈量を控えめにする、冬場は暖房などで液剤温度を事前に調整しておくなど、「現場環境に合わせて粘度をコントロールする」ことが大切です。
メーカー推奨希釈量を守り、必ず試し塗りで仕上がりを確認してから本施工に入ると、安定した作業に繋がります。
液剤保管方法の工夫
粘度トラブル防止には、液剤の保管温度が重要です。
屋外や倉庫で極端な温度差の生じる場所は避け、できるだけ20℃前後の安定した環境で保管しましょう。
また、使用する直前に十分攪拌し、沈殿や溶剤分離を防ぐことも忘れないようにしてください。
メーカーや現場での工夫例
コーティング液メーカーや現場の工夫からも学べることが多いです。
可変粘度型コーティング液の選択
最近では、気温変化による粘度の変動幅が小さい設計のコーティング製品が登場しています。
現場環境の幅広い変化に柔軟に対応できるので、安定施工を目指す方はこうした最新型製品の採用も検討してみてください。
現場での仮設温室や簡易加温の実施
冬場の冷たい現場では、液剤を加温して粘度を保つため、湯煎や仮設温室を使う現場もあります。
特に一斗缶やペール缶を温める専用ヒーターや、温度管理付きの保管庫を用意する事例も増えています。
こうした一手間が仕上がりの品質安定に直結します。
粘度変動対策はトータルコストや信頼にもつながる
コーティング液の粘度管理は「その時その場で上手くいけば良い」という問題ではありません。
粘度変動による失敗で施工し直しとなれば、材料コストや人件費が余計にかかります。
また、美観の不良や機能性の低下が発生すると、顧客からのクレームや信用低下に繋がる可能性が高いです。
一方で、粘度管理にきちんと取り組む現場ほど、再施工やロスが減り、安定した施工品質と効率的な作業が実現できているというデータもあります。
まとめ:仕上がりを左右するコーティング液粘度とその管理
季節によってコーティング液の粘度が変動する現象は、どの現場でも発生しうる大きな課題です。
そのまま放置すると、たれ、ムラ、艶ムラなど、仕上がりや機能面のトラブルが多発します。
気温・湿度が変化することを前提に、温度・粘度測定、希釈量のこまめな調整、液剤の適切な保管といった管理策を徹底しましょう。
メーカーや現場の工夫を取り入れつつ、常に安定した施工と仕上がりを追求することが、最終的には顧客満足やコストメリットにも繋がります。
コーティング仕上げのプロフェッショナルを目指すうえで、粘度管理の知識と実践ノウハウは欠かせません。
季節変動にも惑わされない高品質な施工を行うために、今日からでも粘度に注目した現場管理を心がけてみてください。