特色インキの調色担当者がベテラン依存で属人化が深刻な理由
特色インキの調色担当者がベテラン依存で属人化が深刻な理由
特色インキの調色は、印刷業界において欠かすことのできない重要なプロセスです。
企業やブランドのイメージカラーの再現、特殊な色味の展開、品質保持といった多岐にわたる要求に応える必要があり、その業務は非常に繊細さと熟練した技が求められます。
しかし現在、調色現場ではベテラン依存が進み、業務の属人化が大きな課題となっています。
ここでは、なぜ特色インキの調色担当者がベテラン中心となり、その結果として属人化が深刻化しているのかについて、詳しく解説します。
特色インキの調色とは何か
特色インキの役割
特色インキとは、CMYKなどのプロセスインキでは表現しきれない独自の色彩を再現するために使用されるインキです。
企業ロゴやコーポレートカラー、パッケージデザインなど、ブランドイメージを強調する場面で頻繁に活用されます。
調色業務の手順
調色とは、インキを複数種類混ぜ合わせて狙い通りの色を作り出す工程です。
紙や印刷機、照明環境などの条件ごとにインキの発色が異なるため、微妙な配合の調整が求められます。
お客様の要望通りの色味を、スピーディかつ安定して提供できる体制が品質維持には不可欠です。
ベテラン依存が進む主な理由
調色技能の高度な専門性
調色は、単なるレシピ通りの作業ではありません。
配合量の微細なズレによる発色の違い、湿度・温度・紙質など外部要因の影響までをも経験的に把握し、瞬時に判断する能力が必要です。
この「勘所」は、長年現場で培った経験知に強く依存しています。
教科書的な知識や簡単なマニュアルだけで再現できるスキルではないため、新人が即戦力になるのは困難です。
技術の伝承が難しい現場環境
多くの印刷会社では、調色工程が属人化しており、ベテラン担当者が個人メモや自身の勘で業務を遂行しています。
業務が忙しいこともあいまって、体系的な教育・研修プログラムが整っていないのが現状です。
加えて、調色担当者は「自分のノウハウは自分だけの武器」として捉える傾向も強いため、知識共有の仕組みづくりがなかなか進みません。
再現性とスピードの両立が難しい
調色は、同じ色指示でも原材料のロット変更や季節による変化で結果が異なります。
そのため、わずか数g単位での配合修正が求められ、色見本(カラーチップ)を見ながら即座に原因分析・対策判断する能力が必要です。
ベテランは、経験や過去データ、現場感覚に基づき素早い判断ができますが、新人ではこの判断力が不足しがちです。
そのため、どうしてもベテランへの依存度が高くなります。
属人化が深刻化する現場の課題
人材の高齢化と後継者不足
日本全体の人口減少や働き方改革の影響を受け、調色担当者の高齢化が進んでいます。
印刷業界においても若手の新規採用が難しい状況が続き、後継者育成のスピードが追い付いていません。
このため、ベテランが退職・離職するごとに「一気に技術やノウハウが失われてしまう」リスクが高まっています。
納期・品質に直結する危険性
担当者が特定の人物に偏る属人化が進むと、病気や突然の異動・退職などで業務がストップしてしまうリスクがあります。
また、経験者ごとに微妙な判断基準の違いが出がちで、品質の均一性や安定した納期確保が困難になってしまいます。
コスト増加への波及
ベテランによる調色は確かに精度が高いですが、属人化が進んだ現場では非効率な業務運用になりがちです。
「この人しかできない作業」のために他のスタッフが待機したり、属人的なノウハウに頼るために無駄な試作ややり直しが発生しやすくなります。
ひいては原材料のロスや人件費の増加につながり、コスト面での競争力低下を招く恐れがあります。
ベテラン依存・属人化を解消するためのポイント
ノウハウの見える化
まずはベテラン調色担当者の持つレシピや判断基準を、できるだけデータ化・文書化してナレッジ共有する取り組みが重要です。
調色工程ごとのワークフロー整理や、過去の事例・トラブル集の蓄積も「現場で使える知識」として役立ちます。
標準化・デジタル化の推進
配合レシピや判定基準を標準化し、デジタルツール(色彩測定器、カラーマネジメントソフトなど)を活用することで「誰がやっても同じ品質」に近づくことができます。
AIやIoTを用いた調色アシストシステムの導入は、精度・安定性の底上げに直結します。
現場全体での人材育成
属人化を防ぐには、OJT(実務を通じた指導)とOFF-JT(座学やケーススタディ)をバランスよく組み合わせた人材育成が不可欠です。
調色技能検定や外部セミナーへの派遣も人材の底上げに効果的です。
ベテランが新人指導に時間を割けるよう、現場の体制や評価制度の見直しを行うことも重要です。
調色工程の属人化解消が企業にもたらすメリット
品質・納期の安定化
技術ノウハウが明文化され複数人で担える体制になることで、お客様からの多品種小ロット・短納期の要求に柔軟に対応しやすくなります。
属人化リスクが減ることで、トラブル時のリカバリーや突発的な欠員時にも安定して生産が可能です。
調色コストの最適化
配合を標準化したり、AI分析で最適レシピを提示したりすることで、原材料ロス削減や工数短縮が実現できます。
人件費や試作回数の削減にもつながり、全体的なコスト競争力の強化が可能です。
人材育成サイクルの強化
調色のノウハウを広く共有・定着させることで、誰もがスキルアップできる風土が醸成されます。
若手の積極登用や多能工化推進も進みやすくなり、ベテランの負荷軽減にもつながります。
まとめ
特色インキの調色担当者は、技術の専門性や現場感覚への依存度が極めて高く、属人化が深刻な領域です。
今後も市場ニーズや技術変化にスピーディに対応し続けるためには、現場知の見える化、標準化、デジタル活用、人材育成の強化が不可欠です。
ベテランだけに依存しない体制づくりを進めることで、品質・納期・コストの全領域で大きな競争力を得ることができるでしょう。