プリント色が光源で全く違う見え方をする品質リスク
プリント色が光源で全く違う見え方をする品質リスクとは
近年、商品パッケージやカタログ、POPなどの印刷物において「色の見え方」は消費者の購買意欲やブランドイメージに直結する重要な要素です。
しかしプリント色は、私たちが想像する以上に「光源」によって大きく見え方が変わるというリスクを抱えています。
この品質リスクを軽視すると、企業イメージの毀損やクレーム発生など多大な営業損失につながるため、正確な知識と管理が不可欠です。
なぜプリント色は光源によって異なる見え方をするのか
人間の色の知覚は「光」で決まる
私たちがものを見るとき、光源から発した光が表面で反射され、その反射光が目に入ることで「色」を感じ取ります。
つまり、同じ印刷物であっても、照らされる光源の種類・スペクトルによって反射光の成分が変化し、見た目の「色味」が異なって認識されてしまうのです。
光源の種類とそれぞれのスペクトル分布
世の中には様々な光源が存在し、それぞれのスペクトル(波長成分)は異なります。
– 自然光(太陽光)…最もバランスが良く、目に自然な色再現性がある
– 白色蛍光灯…青みがかったクールな色調
– 電球色LED…暖色系で黄色や赤が強調される
– ハロゲンランプ…オレンジがかった温かみのある雰囲気
– ディスプレイ(モニター)…RGB三原色の発光
このように光源によって含まれる波長(色の材料)が違うため、同じプリントでも全く違う“見え方”になることがあります。
メタメリズムによる見え方の違い
色彩管理の分野では「メタメリズム」という現象が知られています。
これは「同じに見えた2つの色が、光源が変わると異なって見える」ことを指します。
逆に、違って見える2色が、特定の光源下では同じに見える場合もあります。
メタメリズムは特に色合わせ・カラーマッチング作業で問題が顕在化します。
これが印刷色の品質リスクにつながる主な理由です。
印刷現場における光源問題の具体的なリスク
品質検査時のチェック漏れ
立会検査や納品前の社内検査では、通常、標準光(D50やD65など)下で確認作業を行います。
しかし、実際のカタログやパッケージが使用されるのはコンビニ、スーパー、家庭内の様々な照明下です。
標準光でOKでも、市中の蛍光灯やLED照明下で全く異なる色トーンになる事があるため、現場での色チェックに油断が生まれやすいのです。
店舗や売場でのブランドカラーの崩れ
たとえばブランドロゴの赤が、ある光源下では「茶色」に寄ってしまう、青が「緑がかった」印象になる――こうした現象は当たり前に発生します。
その結果、店舗や売り場の照明環境によってブランドイメージが崩れるリスクがあります。
特に多店舗展開する小売業では、意図しない「ブランドカラーのばらつき」でクレームや混乱が生じやすくなります。
色合わせ作業の手戻り・コスト増加
クライアントがオフィスで色をOKしたにも関わらず、納品先現場で「色が違う」という指摘が出る場合があります。
これは、双方の確認光源が異なっている場合がほとんどです。
再刷りや色修正の手戻り、追加コスト、といった大きな損失が生まれかねません。
プリントの色が光源で変わってしまう原因と、その技術的背景
インキと紙・印刷方式による色の生じ方
印刷物の色は「減法混色」による現象です。
CMYKインキが白色の用紙上で重なり合い、不要な波長(色)を吸収し、残った光だけが反射されて私たちの目に届きます。
この「残った光」の成分は、照射される光源のスペクトルに強く依存しています。
たとえば、青インキは赤・緑の波長を吸収し、青だけを反射する性質ですが、「青を強く含む照明」なら鮮やかに見え、「赤成分の多い照明」なら青っぽさが感じにくくなります。
さらに、特殊なパール・メタリックインキなどは、光の当たり方や観察角度で色が大きく変わります。
測色計による管理と、目視とのギャップ
印刷現場では分光測色計を使い、標準光(例えばD50=5000Kの昼白色)での色座標(Lab値)で品質を管理するのが一般的です。
しかし、消費者が商品を見るのはそれぞれ異なる光源。
測色計通りの品質基準を満たしても「現場で違って見える」ことは十分起こり得ます。
このギャップを現場で理解しているかどうかが、リスクコントロールの分かれ目となります。
色の見え方リスクを回避するための対策とポイント
標準光での色評価は必須
検査や色校正の場では「標準光」下で色評価を徹底することが基本です。
ISOではD50光源が規定されており、特にフォトグラファーやデザイナー向けには「デスクトップライト」や「ビューイングブース」などの導入が推奨されます。
実際の使用光源を想定してシミュレーション確認
最も効果的なのは「現場の照明環境」を再現し、その下で色の見え方をシミュレーションすることです。
用途別に確認することで、想定外のリスクを早期発見できます。
色校正紙やテストプリントを実際の売場照明でチェックする運用をルーチン化しましょう。
メタメリズムインデックスの活用
紙やインキを選定する際、「メタメリズムインデックス(MI)」の低いものを選ぶことで、異なる光源下でも色の安定感を高められます。
近年の高機能インキメーカーや用紙メーカーでは、メタメリズムを抑制する商品も開発されていますので、品質要件に応じて活用が有効です。
クライアント・関係者との光源情報の共有
「どの光源下で色を合わせているか」をクライアントや現場担当者と事前に共有しましょう。
認識ギャップをなくし、再チェックやクレームを未然に防ぐことが可能になります。
最終製品の目的地(売場や使用環境)をヒアリングし、確認光源を正しく設定する習慣が重要です。
今後求められる印刷現場の色管理スキル
デジタル印刷やグローバル展開に伴い、色管理のオペレーションはさらに複雑になっています。
色合わせの基準を「スペクトル」視点で複層的にコントロールし、標準光下+実光源下の両方で適正な品質を確保できるか否かは、印刷会社の競争力に直結します。
色彩分野で活用できる最新技術
・多光源下での自動シミュレーション機能を持つ分光測色計
・各種照明=LED、蛍光灯、ハロゲンetc.パターンを再現するビューイングボックス
・デジタル色校正(ソフトプルーフ)ツールと、実物を組み合わせた確認プロセス
各種ツールを活用しながら、人的な色評価スキルも引き続き重要となります。
まとめ:色の見え方リスクを正しく理解し、高品質な印刷を目指しましょう
プリント色は、光源の違いによって全く異なる見え方を示します。
この品質リスクは、印刷現場やデザイン現場、さらには最終顧客にまで影響が及ぶものです。
印刷会社、デザイナー、発注サイドが正しく「光源と色の関係」を理解し、標準光+実使用光源環境下で色評価と管理を進めることで、高品質な印刷とクレーム低減が両立できます。
今後は、多様化する照明環境・デジタルデバイスの利用も視野に入れ、より立体的な色管理体制を確立することが印刷業界の大きな課題であり、競争優位性となるでしょう。