革の乾燥工程で割れが発生し歩留まりが急落する課題

革の乾燥工程で割れが発生し歩留まりが急落する課題とは

革製品の品質を大きく左右するのが、革そのものの状態です。
その中でも「乾燥工程」は、仕上がりに直接影響を与える重要なプロセスとして広く知られています。
しかし、この乾燥工程で「割れ」が発生することで、歩留まりが急落する現象が多くの現場で問題視されています。
この課題について詳細に解説し、発生要因や対策についても掘り下げていきます。

革の乾燥工程とは何か

革は、動物の皮をなめしという工程を経て製造されます。
なめしによって腐敗を防ぎ、柔軟性や耐久性を高めた後、仕上げに入る前に皮の中に含まれる余分な水分を抜く必要があります。
この水分除去のプロセスが「乾燥工程」です。

乾燥工程は、おもに以下のような方法で行われます。

自然乾燥

風通しのよい場所で時間をかけて水分を抜いていく伝統的な方法です。
革本来の風合いを損なわず、割れが起きにくい一方で、乾燥時間が長くなりやすいという特徴があります。

機械乾燥

専用の乾燥機を用いて、温度や湿度を管理しつつ短時間で乾燥を進める現代的な方法です。
生産効率が高いという利点がある反面、温度や湿度の管理が不適切だと乾燥不良や割れが発生しやすくなります。

乾燥工程で割れが発生する原因

割れは、乾燥工程における最大の品質障害の一つです。
なぜ乾燥の過程で割れが発生するのでしょうか。
主な原因をまとめます。

急激な乾燥による内外の水分バランスの崩れ

内部の水分が抜けきらないうちに表面だけが急速に乾燥すると、縮み方に差が生じます。
これが表面に応力として働き、割れの起点になります。

温度と湿度の管理不足

高温・低湿度の環境下では、革の水分が一気に蒸発しがちです。
そのため、革のコラーゲン繊維が硬化し、弾力性を失い割れやすくなります。

革の厚みや部位ごとの差異

革は一枚ごとに厚みや繊維の構造が異なります。
厚みがある部分、密度が高い部分は乾燥に時間がかかり、薄い部分は先に水分が抜けて収縮します。
その差が割れを引き起こすことがあります。

なめし剤の残留やムラ

なめし剤が十分に浸透していない、あるいは残留している場合、乾燥時に化学的な偏りが生じて割れやすくなることもあります。

歩留まりが急落するメカニズム

乾燥工程で割れが発生すると、歩留まりが大きく低下します。
ここでいう歩留まりとは、加工した革のうち製品として出荷できる割合を指します。

割れが生じた箇所は、製品に使うことができません。
そのため、割れ部分を避けて裁断する必要があり、結果的に使える面積が極端に減少します。
これが歩留まりの急落という深刻な経済ロスにつながるのです。

また、歩留まりが低下することは、

・材料コストの増加
・作業効率の悪化
・製品納期の遅延
といった二次的な弊害も引き起こします。

乾燥工程での割れ防止対策

品質および歩留まり維持のために、乾燥工程で割れを防ぐ対策が求められます。
実践的な対策例は次の通りです。

乾燥条件の最適化

乾燥室の温度・湿度・風速を適切にコントロールすることが重要です。
特に最初の段階では、極端に高い温度や乾燥した空気を避け、徐々に水分を抜く設定にしましょう。

多段階乾燥の導入

一度に全ての水分を抜こうとせず、段階的に乾燥条件を変えて水分を抜いていくと、表層と内部のバランスを保ちやすくなります。

革の厚みに応じた管理

乾燥時間や条件は、同じロットでも厚み・構造に応じて変えるべきです。
自社の工程に合った手順書や基準を作成することが大切です。

なめし工程の最適化

なめし剤の浸透を均一にすることで、繊維構造が安定し、乾燥時の割れリスクを低減できます。

品質管理の厳格化

乾燥中の状態を定期的にサンプリングし、割れや異常収縮の兆候が見られたら即座に条件を修正できる体制を整えましょう。

AI・IoT技術の導入による新たな解決策

近年では工場の工程にAIやIoTを組み込むことで、乾燥工程の最適化が進んでいます。
センサーでリアルタイムに革の水分量を監視したり、AIによるデータ解析によって最適な乾燥プログラムを自動調整することが可能です。

こうした最新技術を活用することで、人為的なミスやバラツキを排除し、安定した歩留まりの維持が現実的となっています。

歩留まりの可視化とPDCAサイクル

歩留まりを継続的に向上させるには、工程ごとのデータを蓄積・分析し、問題点を迅速にフィードバックする体制(PDCAサイクル)が必要不可欠です。

どこの工程で割れが多発しているのか、歩留まり低下のパターンはあるかを「見える化」し、具体的な改善策を組み立てることで、無駄のない生産管理が実現します。
また改善を続けることで、将来的なトラブルの予防にもつながります。

実際の現場での改善事例

国内のある革工場では、乾燥機の温度設定を3段階に細分化し、さらに湿度も自動制御システムで常時適正管理するよう徹底した結果、割れの発生率がおよそ半分になったとの報告もあります。

また、厚みごとにロットを分け、乾燥前に必ず水分測定を行うなど細やかなハンドリングを加えたことで、歩留まりの向上と納期短縮に成功したケースもあります。

まとめ:歩留まり向上には工程全体の見直しが鍵

革の乾燥工程で割れが発生し、歩留まりが急落する問題は、単なる工程設定ミスだけではなく、原材料の質・早期検知・管理体制など多面的な要因が絡み合っています。
抜本的な改善のためには、現場スタッフの教育や工程ごとの数値管理、AI・IoT技術の活用が強く求められます。

割れの防止は、コスト削減・品質向上はもちろん、持続的な生産体制の確立にも直結します。
今後も新たな技術やノウハウの導入が進むことで、革業界の課題解決と発展が期待されています。

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