EMIレシーバの帯域分解測定とLISN設置による再現性確保

EMIレシーバの帯域分解測定とは

EMIレシーバは、電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference)試験や製品のEMC(Electromagnetic Compatibility)評価に欠かせない計測器です。
EMIレシーバは、主に伝導ノイズや放射ノイズの測定で用いられます。
特に帯域分解測定(Band-by-Band Measurement)は、EMIレシーバの性能や測定の正確性を保証する重要なステップです。

帯域分解測定とは、測定したい特定の周波数帯域ごとにノイズレベルを詳細に解析する手法です。
これにより、どの周波数でどのくらいのノイズが発生しているのかを明確に特定できます。
例えば、住宅用電子機器、医療機器、車載機器などのノイズ対策では、規制値を細かい帯域ごとに満たしているかを確認する必要があります。

EMIレシーバにおける帯域分解測定の重要性

EMIレシーバは複数の測定帯域やフィルタを内蔵しており、CISPR規格やVCCI、FCCなどの国際規格に準拠したルールでノイズレベルを測定します。
その中で帯域分解測定により、以下のポイントが実現できます。

1. 問題箇所の早期特定

ノイズ対策において、発生源を正確に特定することは極めて重要です。
帯域分解測定であれば、特定の周波数帯で大きなノイズが検出された際に、原因機器や回路ブロックの特定が効率的に行えます。

2. 規格適合性の厳密な確認

電磁波ノイズに関しては、規格ごとに帯域別の上限値が定められています。
例えば、CISPR 22では0.15MHz~30MHzまでの伝導ノイズについて帯域ごとの規制があります。
帯域分解測定を行えば、各帯域ごとの適合性が明確になるため、規格に基づいた対策が確実にできます。

3. 対策効果の定量的評価

ノイズ抑制部品やシールドの効果を詳細な周波数帯ごとに評価できます。
帯域ごとに前後の比較ができるため、どの周波数帯域でどの程度ノイズ低減できたかを把握しやすいです。

LISN設置による再現性の確保

EMI測定で最も重要なのは、測定結果の「再現性」です。
再現性とは、「どこで測っても、誰が測っても、同じ条件なら同じ結果が出ること」を指します。
この再現性確保のために不可欠なのが、LISN(Line Impedance Stabilization Network)の設置です。

LISNの役割

LISNは、「ラインインピーダンス安定化回路網」のことで、主に伝導ノイズ測定で使われます。
LISNを電源ラインに挿入し、測定器と被測定機器の間に一定のインピーダンス(主に50Ω)を提供することで、どの測定場所・時間でも標準化された測定環境ができます。
また、LISNは外部からの不要なノイズが流れ込むのを防ぐ役割も担っています。

LISN設置の手順とベストプラクティス

1. EMC試験用の専用テーブル(非導電性素材)を準備
2. LISNを被測定機器の電源ラインに挿入
3. LISNのアース端子をグラウンドプレーンに確実に接続
4. EMIレシーバとLISNの出力端子を高周波用同軸ケーブルで接続
5. 被測定機器の配置・ケーブル処理も規格に沿って再現可能な方法で固定

これらの手順を遵守することで、異なるラボや異なるオペレーターでも同一条件で測定ができ、測定対象のEMI特性を正しく評価できるようになります。

帯域分解測定とLISN設置による再現性確保のための注意点

EMI測定の現場では、帯域分解測定やLISN設置においていくつか注意点が存在します。

アンテナやケーブルの配置

特に放射ノイズ測定では、アンテナやケーブルの配置・高さ・向きが結果に大きく影響します。
伝導ノイズ測定でも、被測定機器(EUT)とLISN間の配線取り回しを標準化しなければ、ノイズカップリングによる誤差が生じます。
規格通りの配置と最小限の変動要素で実施することが肝心です。

環境ノイズへの配慮

測定場所に周囲環境ノイズ(エアコン、照明などの電源ノイズや無線機器)があると、EMI測定の際に被測定ノイズと混じって判別が難しくなります。
シールドルームやアネコイックチェンバーなど、外来ノイズが遮断される環境での測定が理想的です。

定期的な校正・メンテナンス

EMIレシーバやLISNも定期的に校正・検査することで、測定値の信頼性が保たれます。
また、ケーブル類やコネクタの接触不良も測定誤差の原因となるため、正しいメンテナンスを怠らないことがポイントです。

EMI帯域分解測定、LISN設置のよくある質問

Q1. 帯域分解測定の際にフィルタ幅はどのように設定すれば良いですか?

A1. 測定対象のEMI規格(例:CISPR 16、CISPR 22など)では、周波数帯域ごとに測定フィルタ幅が規定されています。
例えばCISPR 16.1では、0.15~30MHzの伝導ノイズ測定時に9kHz、30~1000MHzの放射ノイズ測定時に120kHzの帯域幅が指示されています。
必ず規格や試験目的に網羅する設定としましょう。

Q2. LISN設置時にアースの接続が甘いとどうなりますか?

A2. アースが不完全だと、LISN本来の規定インピーダンスが保てず、帯域によっては誤った高いノイズ値を示すことがあります。
EMI試験全体の再現性が損なわれ、合否判定にも致命的な誤差が発生しますので、アース端子の確実な接続を徹底してください。

Q3. EMIレシーバを使わずスペアナでも良いですか?

A3. スペクトラムアナライザ(スペアナ)は周波数分析が得意ですが、EMIレシーバはCISPR準拠のフィルタ、検波特性(QPK、AVG、CAV、PK)などEMI規格に合わせた機能が備わっています。
スペアナでも測定可能ですが、規格適合試験ではEMIレシーバによる測定が必須です。

帯域分解測定とLISNの設置の最新動向

近年の電子機器の高機能化や高周波化の流れにより、EMC(電磁両立性)規格も細分化されています。
EMIレシーバの帯域分解測定も1GHz超、さらには30GHz超まで対応する必要が生じています。
またLISNも自動車の高電圧化(EV・HV車対応)や通信機器の複数電源対応型など、用途ごとに高性能化が進められています。

加えて、試験自動化や測定データの一元的な管理、帯域分解データのAI解析なども進行中です。
これにより、EMC評価からのフィードバックによる開発効率向上、設計初期段階でのノイズ対策の重要性が高まっています。

まとめ:正確な帯域分解測定とLISN設置で品質向上を

EMIレシーバの帯域分解測定、LISN設置は、単なる測定作業という範囲を超え、設計から製品品質保証に至るまでの信頼性を担保する基礎です。
国際規格をクリアするため、再現性と信頼性を持つ測定環境構築にこだわることで、製品開発の効率化と品質向上が実現できます。

今後もEMC・EMI試験の現場では、正確かつ迅速な帯域分解測定とLISN設置による再現性の確保が、さまざまな業界・企業で求められ続けます。
EMIレシーバとLISNの正しい使い方を身につけ、測定再現性の高い評価環境で安心・安全なモノづくりを実現してください。

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