撥水コーティング素材の透湿性評価とアウトドア製品への応用
撥水コーティング素材の透湿性評価とアウトドア製品への応用
撥水コーティング素材は、その優れた防水性によって多くのアウトドア製品に活用されています。
しかし、防水性だけでなく、使用時の快適さを左右する「透湿性」も重要な評価ポイントです。
本記事では、撥水コーティング素材の透湿性の評価方法から、アウトドア製品への応用実例まで徹底解説します。
撥水コーティング素材の基礎知識
撥水コーティングとは、素材表面に水を弾く特性を付与する加工です。
主な方法として、フッ素系・シリコン系・パラフィン系などのコーティング剤を繊維表面に施します。
これにより、雨や水しぶきが繊維内部に浸透しにくくなります。
一方、雨の進入を防ぐだけでなく、体から出る湿気(汗)を外へ逃がす「透湿性」も、快適な着心地に欠かせません。
撥水性と防水性の違い
撥水性は、素材表面で水滴を弾く性能を指します。
これに対して防水性は、水圧がかかっても水が素材を通り抜けない性能です。
撥水性のみでは大量の水や長時間の雨には耐えられない場合があるため、防水性と透湿性のバランスが求められます。
透湿性の評価方法
透湿性とは、衣服やギア内部から外側へ湿気(水蒸気)がどれほど通過できるかを示す性能です。
アウトドア製品においては、透湿性が高いほどムレにくく、過酷な環境下でも快適さを維持できます。
透湿度(MVTR)とは
透湿性を定量的に評価する指標として「透湿度(Moisture Vapor Transmission Rate: MVTR)」があります。
単位はg/m²・24hで、24時間あたり1平方メートルあたりどれだけの水蒸気が通過したかを示します。
値が大きいほど、通気性と快適性が高いと評価されます。
主な評価試験
透湿性の評価試験にはいくつかの方法があります。
- 水分蒸発法(カップ法)
- インシュレーター法(スウェットガード法)
- ASTM E96法
- JIS L 1099法
それぞれ特長や測定条件が異なりますが、いずれも実験室環境下で湿度の差を利用して素材の透湿性を評価します。
カップ法
カップ法は、カップの中に水や塩化カルシウムなどの吸水剤を入れ、素材をフタとしてセットします。
一定温度・湿度で24時間放置し、蒸発した水分量から透湿度を算出します。
シンプルかつ再現性が高く、世界的にも基準方法として採用されています。
発汗ガード法
発汗ガード法は、人体から発せられる水分量に基づいて測定する手法です。
実際の着用感に近い条件で測定できるのが特徴です。
スポーツウェアや高機能レインウエアではこの試験結果が重視されます。
撥水コーティングと透湿性のトレードオフ
撥水コーティングを強化することで表面の防水性は向上しますが、厚手のフィルムや重ね塗りといった手法を用いると透湿性が損なわれる場合があります。
最新のアウトドア素材では、極薄膜コーティングやナノテクノロジーによって、水を弾きながらも水蒸気は通すという相反する性能を両立することに成功しています。
多層構造メンブレンの活用
例えば、GORE-TEX(ゴアテックス)やeVent(イーベント)などは、多層構造のメンブレン(膜)を利用しています。
表地、透湿防水メンブレン、裏地という3層構造により、水滴は通さず空気や水蒸気のみを通す工夫がなされています。
撥水剤の進化
以前はフッ素系の撥水剤が主流でしたが、環境負荷が問題視されるようになり、近年ではPFCフリー撥水剤への移行が進んでいます。
これにより、環境配慮と高機能の両立も重視されていますが、同時に透湿性や耐久性の維持が問われています。
アウトドア製品での応用事例
撥水コーティング素材は衣類を中心に、テント、ザック、シューズなど多岐にわたるアウトドア製品に使用されています。
レインウェア
レインウェアは撥水・防水・透湿性という三つの性能が特に重要視されます。
登山やトレッキング時に内部のムレを防ぎ、長時間快適に活動できることが求められます。
透湿度が5,000g/m²・24h以上あれば日常使用に十分、20,000g/m²・24h以上であればアルパインクライミングやハードな山行にも適用できます。
各メーカーはベンチレーション(換気)機能や立体裁断など、さらに快適性や動きやすさをプラスする工夫も加えています。
テント・シェルター
テントのフライシートやグラウンドシートにも撥水コーティング素材が使われています。
ただし、居住空間全体が湿気で充満しないよう、テントは素材だけでなくベンチレーション設計や通気窓の設置など物理的な工夫も求められます。
バックパック
バックパックは、雨天時の荷物防水を狙った撥水素材の採用が進んでいます。
ただし完全防水仕様ではなく、内側の湿気がこもりすぎないよう透湿性も大切です。
また、止水ジッパーや裏面シーム処理によって内部まで水が浸入しにくいよう工夫されています。
シューズ・ブーツ
登山靴やトレッキングシューズにも防水透湿素材が広く使われ、濡れとムレから足を保護します。
特にeVentやGORE-TEX搭載製品は、激しいアクティビティ中でも足ムレを抑えられるため利用者から高い信頼を得ています。
これからの撥水コーティング素材開発の動向
これまでフッ素化合物に依存してきた撥水技術ですが、サステナブル志向の高まりから生分解性やPFCフリーの新素材研究が活発化しています。
透湿性と耐久性を両立させた新素材の開発は、アウトドア業界全体の大きなトレンドです。
機能性と環境負荷軽減の両立
各メーカーは環境負荷を抑えつつ、高機能撥水・防水コーティングを実現するために、独自技術や新成分の開発に力を入れています。
また、リサイクル素材やバイオマス素材と撥水コーティングの組み合わせなど、持続可能なものづくりにつながる挑戦も広がっています。
ユーザーのメンテナンスも重要
撥水コーティングは、長期間使ううちに摩耗や洗濯によりその効果が低下します。
適切な撥水剤による定期的なメンテナンスやリプローフ処理を勧めるメーカーも増えています。
これにより、製品寿命全体で透湿性と撥水性を維持しやすくなっています。
まとめ
撥水コーティング素材の透湿性評価は、アウトドア製品の快適性に直結しています。
単に水を弾くだけではなく、ムレを防ぐ透湿性、そして環境への配慮や耐久性といったトータルな品質が時代とともに求められるようになりました。
今後も新素材の開発や技術進化によって、より快適でサステナブルなアウトドア製品が生まれていくことでしょう。
撥水コーティング素材の最新動向を知ることは、製品選びの重要なポイントになります。
アウトドアシーンで快適かつ安心して使えるアイテムを選ぶためにも、透湿性評価とその応用事例をしっかり押さえておきましょう。