FIB‐SEM三次元トモグラフィと微小欠陥ボリュームの定量評価
FIB‐SEM三次元トモグラフィと微小欠陥ボリュームの定量評価
FIB-SEM三次元トモグラフィとは
FIB-SEM三次元トモグラフィは、Focused Ion Beam(集束イオンビーム)とScanning Electron Microscopy(走査型電子顕微鏡)を組み合わせて行う先進的な観察・分析手法です。
材料やデバイス内部の微細構造を高い解像度で三次元的に可視化できることから、材料科学や半導体、バッテリー研究、ライフサイエンスの分野などで幅広く利用されています。
FIB-SEMでは、FIBを用いてサンプル表面を薄くスライスし、その都度SEMで表面を撮影します。
この一連の処理を繰り返し、得られた二次元画像から3Dボリュームデータを再構築します。
これにより、従来の断面観察だけでは難しかった、微小欠陥の分布や体積情報を高精度で取得できます。
FIB-SEM三次元トモグラフィの原理
FIB-SEM三次元トモグラフィの原理は、「削る」「撮る」「積み重ねる」という3つの作業の繰り返しに集約できます。
FIB(集束イオンビーム)によるミリング
FIB装置は、主にガリウムイオンを利用して、サンプル表面をナノからマイクロメートルオーダーで正確に削ります。
このプロセスを「ミリング」と呼び、薄い層を少しずつ除去していきます。
削り取る厚さや領域はソフトウェアで厳密に制御できるため、目的の構造にぴったりと合わせた三次元観察が可能です。
SEM(走査型電子顕微鏡)による撮像
FIBでサンプル表面を削るごとにSEMで表面の画像を取得します。
このとき得られる二次元画像は、繰り返し層毎に積み重なることで、最終的な三次元像のもとになります。
SEMはナノスケールまで分解能を得られるため、ミクロな欠陥や構造がはっきりと観察できます。
画像再構築による3Dボリューム生成
得られた連続断面画像から画像処理ソフトウェアを使って三次元のボリュームデータを生成します。
画像1枚ごとのピクセル情報が重ね合わせられることで、内部構造が詳細に可視化されます。
これがFIB-SEM三次元トモグラフィならではの強みであり、欠陥評価や材料設計に欠かせない技術となっています。
微小欠陥の観察が重要な理由
近年のハイテク産業では、微小な欠陥が材料特性やデバイス性能に与える影響が増しています。
たとえば、半導体デバイス内のナノメートルスケールのボイドやクラック。
バッテリー材料内部の微小な空孔や界面欠陥。
これらは製品の寿命、性能、信頼性に直結します。
従来の断面観察や二次元的な分析では、欠陥の分布や体積、連結性といった三次元情報を正確に評価することが困難でした。
FIB-SEM三次元トモグラフィは、こういった微小欠陥をボリュームで「定量評価」できる画期的な方法です。
微小欠陥の定量評価:手順とポイント
FIB-SEM三次元トモグラフィを用いた微小欠陥のボリューム定量評価は、以下のようなプロセスで進められます。
1. サンプル準備
観察対象となる材料やデバイスのサンプルを適切なサイズに加工し、FIB-SEM装置に固定します。
導電性が低いサンプルの場合は、カーボンなどでコーティングを施します。
2. 走査・ミリング:三次元データの取得
観察する領域をFIBで順次薄く削り、各層ごとにSEM像を撮影します。
層厚(スライスピッチ)はサンプルや観察目的に応じて5 nm程度から数百nmまで設定可能です。
3. 画像解析・再構築
取得した一連の二次元画像を画像解析ソフトで補正、ノイズ除去を行い、三次元として再構築します。
この段階で画像ごとの位置合わせ(アライメント)や、コントラスト調整が重要です。
4. 欠陥領域の抽出とセグメンテーション
三次元データの中から、空孔、クラック、析出物など「欠陥」とされる構造のみを自動もしくは手動で抽出します。
AIや機械学習を用いたセグメンテーション手法の導入も進んでいます。
5. 欠陥ボリュームの定量評価
抽出された欠陥の体積、個数、形状、連結度など多様なパラメータを数値化します。
例えば、全ボリュームに占める欠陥体積率、最大・最小欠陥サイズ、欠陥の分布密度などの評価が可能です。
6. データの可視化とレポート作成
最終的な評価結果は、3Dモデル、断面画像、統計グラフとして整理し、報告書や論文・製品開発へ活用されます。
定量評価データの活用例
FIB-SEM三次元トモグラフィで得られる微小欠陥の定量評価データは、以下のように活用されています。
半導体・電子材料開発
配線・絶縁膜内のボイドやヒビ割れの体積比を評価し、プロセス最適化や歩留まり向上へ役立てます。
二次電池・燃料電池
リチウムイオン電池などの電極内ポア構造、界面の空隙分布を三次元で解析し、充放電サイクル耐久性向上に寄与しています。
複合材料・金属材料
繊維強化プラスチックや多結晶金属中の介在物、粒界欠陥を三次元で可視化・定量化。
材料強度・信頼性向上の評価基準が精密になっています。
バイオサンプルの定量解析
細胞・組織のサブセルラー構造解析により、がん細胞の空孔分布やミトコンドリア異常の三次元定量評価が進んでいます。
FIB-SEM三次元トモグラフィのメリット
この手法のメリットは、次の通りです。
- ナノメートルスケールまでの高解像度な三次元観察が可能
- 非破壊では難しい複雑内部構造の可視化と定量評価ができる
- 多種多様な材料(半導体、セラミクス、ポリマー、金属、バイオ)に適用できる
- 取得したデータの再利用性・解析の多様性が高い
また、データは画像処理・AIによる自動解析と組み合わせることで、効率的な量産工程モニタリングや品質保証への展開も期待できます。
FIB-SEM三次元トモグラフィの課題と今後
一方で、FIB-SEM三次元トモグラフィにはいくつかの課題も指摘されています。
・データ取得には比較的長い時間と高額なコストが伴う
・観察範囲がミクロンオーダーに限られる
・サンプル損傷やビーム損傷のリスク(低加速電圧やクライオ技術の併用で対策中)
・セグメンテーション、定量解析の自動化にはさらなるAI技術の発展が必要
今後は、観察効率やデータ解析自動化の進展、低ダメージ観察技術の発展が期待され、さらに広範な応用が進むと予想されます。
まとめ
FIB-SEM三次元トモグラフィは、最先端のナノ・マイクロ構造観察と定量評価を可能にする革新的な技術です。
この手法で取得される微小欠陥の三次元ボリューム定量データは、材料開発や品質保証、学術研究など多岐にわたり役立っています。
今後、さらなる画像解析・AI技術の発展や低ダメージ観察法の普及により、FIB-SEM三次元トモグラフィによる微小欠陥の定量評価は、ますます重要なポジションを占めていくでしょう。
材料やデバイスの信頼性向上を目指す上で、この技術活用は欠かせません。