調理用紙シートの食品接触安全試験と業界規格動向

調理用紙シートとは何か

調理用紙シートは、オーブンやフライパン、電子レンジなどの加熱調理工程において使用される耐熱性のある紙素材のシートを指します。
グラシン紙やパーチメント紙、シリコンコートペーパーなど、種類は多岐にわたります。
料理がこびりつきにくくなり、お手入れも簡単となることから、業務用厨房から家庭用まで幅広く普及しています。
最近ではヘルシー調理が注目され、油の使用量を抑える目的や、ラッピング・保存用途としての利用も拡大しています。

調理用紙シートが担う「食品接触安全」とは

調理用紙シートは食品に直接触れることから、「食品接触材料」として法令・規格上の安全基準をクリアする必要があります。
この条件は消費者の健康を守ると同時に、食品本来の品質や味わいに影響を与えないことも求められます。

具体的には、化学物質の溶出(溶出試験)、耐熱性、臭気・風味の移行、成分の安定性といった観点から検査や評価が行われます。
また、国内外の法令や業界規格も年々アップデートされていくため、製造メーカーや輸入事業者は情報収集と対応が必須です。

日本国内における主な規格と法令

食品衛生法と食品用器具・容器包装規格

日本国内では、調理用紙シートを含む食品に接触する包装や器具は『食品衛生法』および厚生労働省が定める「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」の適用を受けます。
とくに第3章「器具及び容器包装」に詳細な規定があります。

用紙シートの場合は、紙そのものに加え、コーティングに用いる樹脂(ポリエチレン、シリコーンなど)や添加剤も審査対象です。
溶出試験をパスし、物質ごとの規制値や用途ごとの適合性確認(調理用、非加熱用など)が不可欠です。

自主基準と業界ガイドライン

業界団体(例:日本製紙連合会、紙加工技術協会)やメーカー各社も、法令に加えて自主基準やガイドライン(自主規格)を設定しています。
これには、用途ごとの機能試験、耐熱・耐油性能試験などが含まれ、消費者やユーザーから問合せがあった際の説明責任にも活かされています。

欧米の食品接触安全規制のトレンド

EU(欧州連合)の規制動向

EUでは食品接触材料(FCM)規則(EC No.1935/2004)およびプラスチック材料規則(EU No.10/2011)が主たる基準です。
目的は「通常の利用下で、人の健康や食の性質を損なう成分の食品への移行を最小限に抑えること」に置かれています。

紙・ボードについては、いわゆる「ポジティブリスト」型の規格を設ける方向で改正が進んでおり、今後は使用可能な成分や添加剤により細かな規制や、統一的な試験方法が強化される予定です。

アメリカのFDA基準

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、調理用紙シートに用いられるすべての材料について、「21 CFR パート176」や「パート177」などで規定しています。
たとえば、シリコーンコーティングの場合は「177.2600」など該当区分でのコンプライアンスが必要です。
FDAコンプライアンス証明書(COC)の有無がビジネス上の信頼担保となります。

調理用紙シートの安全性を確かめる試験とは

溶出試験(Migration Test)

加熱や高油脂状況など、家庭・業務厨房で想定される「試験液」や「試験温度」「時間」に合わせて調理用紙シートを試験条件下にさらします。
出てきた成分の溶出量が、規格(ml/kgなど)内であるかを確認します。
代表的な試験液は、エタノール(油脂代替)、酢酸(酸性食品代替)、油脂などです。

耐熱性・機能検査

通常使用温度(160℃~220℃)とそれを超える条件で物性や形状劣化が見られないか、主要成分の分解や有害ガス発生がないかも検証されます。
また、油を含む食材に接触した際の耐油性・耐湿性・べたつき防止性能もチェック項目です。

官能検査(におい・味の移行)

調理工程や保管中に、用紙シートのにおいが食材に移らないか、味覚上の違和感が生じないかも重要な指標です。
消費者からの声だけでなく、特定の官能パネルでの評価も行われています。

その他の有害物質試験

パーフルオロアルキル物質(PFAS)、ダイオキシン、重金属(ヒ素・鉛・カドミウム)など、有害物質の含有・残留確認も近年厳格となっています。
グローバル展開時はRoHS・REACH規則や各国独自の有害物質規制も視野にいれる必要があります。

業界規格動向と今後の展望

国際的なハーモナイゼーションの流れ

調理用紙シートに限らず「食品接触材料」の業界は、各国で異なる規制がグローバル流通・サプライチェーンのボトルネックとなってきました。
近年、ISO(国際標準化機構)や国際食品規格委員会(Codex Alimentarius)による国際化・共通化の動きが加速しています。
これにより試験方法や評価基準の統一が進み、製品の輸出入や監査対応がしやすくなる一方で、より厳格な基準への適合が求められます。

エコロジー・サステナビリティ対応

プラスチックごみ規制や「脱PFAS」など、環境負荷低減に向けた動きも調理用紙分野で活発化しています。
再生紙やバイオマス、植物由来のコート剤、無溶剤タイプの開発も進み、こうした新素材にも同等の安全性検証が求められます。
また、堆肥化やリサイクル適合試験も新たな評価指標となるでしょう。

トレーサビリティと情報開示の強化

消費者・取引先からの「どんな成分・原料が使われているのか」「安全性データの根拠は?」などの問い合わせは増加傾向です。
食品工場のHACCP体制に続き、調理用紙シートでも製品ロットごとのトレーサビリティ確立、成分や試験データの書面化・第三者認証取得などが今後の重要テーマとなっています。

製品選定・利用時のチェックポイント

調理用紙シートの安全性はメーカーや商品ごとに確認基準が異なる場合があります。
購入・導入の際は以下のポイントをチェックしましょう。

  • 「食品衛生法適合」「FDA基準適合」「EU規則適合」など明記があるか
  • 用途(オーブン、フライパン、電子レンジ対応等)と最大温度表示
  • 製品パッケージやウェブサイトでの安全性試験データの有無
  • 原材料やコーティング材の種類・産地表示
  • アレルゲンや有害物質不使用の明記

業務利用で大量調達・海外取引を行う場合、必要に応じてメーカーに「安全データシート」や「溶出試験成績書」「第三者機関の認証証明」を請求することも可能です。

まとめ

調理用紙シートは食品に直接触れるため、法令・業界規格に則った食品接触安全試験を必ずクリアすることが不可欠です。
また、国内外の規制・認証は年々アップデートされており、メーカー・利用者ともに最新の基準や試験動向に常にアンテナを張る必要があります。

さらにエコロジー志向・情報開示ニーズの高まりもあり、今後ますます厳格かつ多面的な視点での安全性検証が進むと予想されます。
安心して使える調理用紙シートを選ぶためにも、規格や認証表示・メーカーの情報発信内容をよく確認し、安全で快適な食生活を支えていきたいものです。

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