印刷後のトムソン加工で罫線割れが頻発する根本課題
印刷後のトムソン加工における罫線割れとは
印刷物の仕上げ工程の一つに、トムソン加工と呼ばれる打ち抜きや折り罫を付ける作業があります。
この工程はパッケージやPOP、紙製什器などの製造でよく用いられています。
トムソン加工の際に発生する「罫線割れ」は、折り曲げ部分の印刷面や用紙表面にヒビ割れや白化が生じる現象です。
このトラブルは印刷現場にとって頭を悩ませる重大な課題と言えるでしょう。
罫線割れが発生すると、出来上がったパッケージの見栄えが悪化します。
表面のインクがはがれ、下地の紙がむき出しになってしまうためです。
最悪の場合、製品として納品できず改めて印刷や工程のやり直しとなり、納期やコストの大幅なロスにつながります。
罫線割れの主な発生要因
トムソン加工後に罫線割れが起こる背景には、複数の要素が複雑に絡み合っています。
以下に、頻繁にみられる代表的な要因を解説します。
用紙種類の選定ミス
用紙はメーカーや銘柄ごとに繊維方向や表面強度、含有水分、コーティングなどが異なります。
トムソン加工では、特に折り線となる部分の柔軟性や割けやすさが大きく影響します。
A紙はきれいに曲げられるが、B紙ではすぐ亀裂が入る、というケースは珍しくありません。
特にコートボールや強い塗工が施された紙、リサイクルパルプの配合率が高い紙は割れがちなため、設計段階で厳選が必要です。
印刷インキやニス設計の問題
印刷層が厚すぎたり、インキの硬化が不十分だったり、UVニスやPP貼りなどの表面加工を組み合わせた場合、表層が割れやすくなります。
また重ね刷りによってインキの層厚が増し、柔軟性を失うことがあります。
インキ自体の固着性や可塑性も影響し、硬いフィルム状に残った場合は折り曲げによる応力に耐え切れません。
トムソン加工時の罫線圧調整
トムソン機による罫線圧の設定が高すぎる場合、厚紙の芯まで折り目を入れすぎ“割れ”が出やすくなります。
逆に罫線が浅いと折り位置が定まらず、やはり不規則な割れやヒビが発生します。
圧の管理や罫線の金属厚み・幅(スコア幅)といったパラメータを適切に選ぶことが重要になります。
紙目方向の設計ミス
用紙の繊維方向(紙目)は、折り線と必ずしも直角に交わっているとは限りません。
紙目に沿って罫線が入れば割れにくく、逆に紙目を横断して折る場合は繊維の切断が起こりやすくなります。
最近の印刷加工で罫線割れが増加する理由
製造現場で「以前よりも罫線割れが頻発する」と感じる声が増えています。
それには、紙材・印刷・加工の各分野に起きているいくつかの変化が関わっています。
用紙原材料の変質
環境要因から再生パルプや非木材パルプ、FSC認証紙などの利用が進んでいます。
こうした紙は繊維が短かったり、全体の強度を持たせるため薬品添加が増えていたりします。
この影響で従来より“割れやすく折りにくい”傾向が強まっています。
コストダウンによる低グレード紙の増加
大量生産やコスト競争の激化により、やや安価だが罫線割れが発生しやすい用紙が使われがちです。
また、同じ銘柄でもロット差や仕入れ時期によって品質が変動することもあり、一律に対応しにくくなっています。
高発色・高塗工印刷・特殊加工の普及
パッケージなどの販促物の付加価値化に伴い、「ビビッドなカラー」「厚盛アートニス」「エンボス・ホットスタンプ」など表面加工も多様化しています。
表面層が物理的に厚く硬くなればなるほど、曲げや罫線加工時に「硬い皮」が割れてしまうリスクは上がります。
短納期化による乾燥・熟成不足
印刷直後にすぐにトムソン加工工程へ回す場合も増えています。
インキやニスが完全に硬化・乾燥する前に折り罫をつけると、インキ伸縮性が不十分で割れやすくなります。
根本課題と対策の考え方
罫線割れは「罫線を入れる物理的衝撃」×「紙・印刷層など“割れやすい素材特性”」が相まった現象です。
現象自体は複雑ですが、「片方だけを調整すれば一発で解決」という処方箋はありません。
だからこそ印刷加工各工程の担当者連携が必須であり、「割れに強い設計・段取り」を事前に積み上げることが大切です。
用紙選定段階からの配慮
折り位置やトムソン加工面積が大きい製品であれば事前に割れテスト(ダミー制作)を推奨します。
特殊紙や低価格紙を使用する場合は、割れ強度や紙目方向、厚み・標準値などスペックを詳細に確認しましょう。
インキ・ニス設計の最適化
インキ設計時には可塑剤の添加、箔押しやラミネートなど他工程とのバランスも意識します。
高発色を求める場合は重ね刷りや高膜厚になりすぎない工夫、伸縮性や柔軟性に配慮することが大切です。
UV系や厚盛加工時は乾燥・熟成工程にゆとりを持たせましょう。
紙目方向の最適な設計
折り罫線が入る箇所は、極力紙目に沿うような設計が割れ低減に繋がります。
パッケージ設計段階や展開図配置時に紙目と罫線の交差具合を確認しましょう。
トムソン機による罫線圧・罫割設計の調整
罫線幅、箔押しや表面加工の有無、紙厚ごとに微調整が必要です。
新規パターンやトラブルが多い現場は「罫線割れ検証用ジョブ」を設け、安定した加工条件を事前にパターン出ししておくと良いでしょう。
現代の管理基準と工程連携
分業化が進む現代の印刷現場では、設計~印刷~加工~納品まで工程間の連携が不十分なことが少なくありません。
特に用紙やインキのロットが変わった場合、設計変更や工程条件をリアルタイムで共有する体制づくりが注目されています。
罫線割れ対策の最新トレンド
近年は罫線割れ対策に新技術や資材も登場し、多様な方向から改善が進みつつあります。
軟質インキや可塑化剤の利用
従来の油性やUVインキよりも伸縮性のある軟質成分を配合したインキが登場しています。
特定メーカーの罫割れ対策インキ・ニスを用いることで割れリスクを顕著に低減できることが増えました。
新素材用紙・機能紙の応用
耐割れ性の高い特殊コート紙や、再生パルプ配合でも割れにくい「折り曲げ専用紙」なども出回っています。
まとまった注文時には、こうした用紙のサンプルを検証しベストな素材選びを行いましょう。
「逆罫」「二重罫」などトムソン加工技法の進化
1つの折線に対し、両側から罫線を入れる「逆罫」や、やや広めに2本の罫線を並列して打設する「二重罫」を導入するケースも増えました。
これは折り曲げ時の応力を分散させ、割れ発生を抑えるトリックです。
工程統合・デジタル検証シミュレーションの普及
罫線圧の数値管理や用紙スペック連携、割れ発生のシミュレーションをデジタルで行う仕組みも進みつつあります。
現場の経験値を可視化し、次の案件へ反映できるこうした管理手法も分業時代の強い味方です。
まとめ:罫線割れの根本課題は「工程全体の見直し」
罫線割れは単一の“誰かのミス”で説明しきれる現象ではありません。
印刷物の付加価値化やコストダウンへの要求、用紙流通事情、時代背景、そして加工技術の細かな違い全てが関わっています。
そのため一つの簡易な対処だけに頼るのではなく、設計・材料・印刷・加工を横断的に見直すことが根本的な解決につながります。
現場のスタッフ間でトラブル情報や改善策を共有し、小さな失敗と成功例を積み重ねましょう。
印刷会社、資材メーカー、デザイナー、加工業者の連携で、より高品質なパッケージへの取り組みが可能となります。
罫線割れのない美しい印刷物を安定して生産するためには、「工程全体を俯瞰した危機管理」が最大のカギです。
仕様設計段階から現場の声を反映し、現代の印刷ビジネスにふさわしい品質コントロールを築いていきましょう。