高密度PVDC共押チューブと宇宙食酸素透過0.1cc評価
高密度PVDC共押チューブとは何か
高密度PVDC共押チューブは、ポリビニリデン塩化物(PVDC)を使用した多層構造のプラスチックチューブです。
PVDC自体は非常に優れたガスバリア性を持つ素材として知られており、食品包装や医療分野など幅広い用途で使用されています。
特に近年では宇宙食など、保存期間が重要視され、極限まで酸素透過を抑制しなければならない分野で、高密度PVDC共押チューブの採用が増えています。
酸素や水分の通過を極限まで低減することで、内容物の劣化や腐敗を防ぎ、長期保存を可能にするのが最大の特徴となります。
また「共押」とは、複数種の樹脂を同時に押し出して一体型の多層構造を作る技術であり、PVDCと他の樹脂層を組み合わせることで、機能性と成形性、コストパフォーマンスのバランスも図られています。
高密度PVDC共押チューブの特徴とメリット
高密度PVDC共押チューブには、以下のような顕著な特徴と利点があります。
酸素バリア性能の高さ
高密度PVDCは、一般的なポリエチレンやポリプロピレン、ナイロン系素材より桁違いに優れた酸素遮断性を持ちます。
特に共押技術により厚みムラのない均一なバリア層を形成することで、酸素透過量を最小限に抑えることができます。
水分バリア性にも強い
PVDCは酸素だけでなく、水蒸気や香り成分に対しても非常に高いバリア性を持っています。
これにより、内包する食品や薬剤等の水分蒸発や外部水分の侵入を防ぎ、鮮度や品質を長期間維持できます。
耐薬品性と加工性のバランス
PVDCは多数の有機溶剤に耐性を持つため、化学薬品を含む内容物でも安定な保存が可能です。
また共押プロセスによって、柔軟性・成型性の高い外層材料とも組み合わせられるため、様々な形状や仕様で設計することも容易です。
用途に合わせた多層設計
共押チューブでは、高密度PVDCを中心に、外層に耐衝撃性や印刷適性を高める樹脂、内層に内容物の滑脱を良くする樹脂など、複合的な多層構成が可能です。
これにより、「バリア機能+α」の付加価値を持つパッケージが実現できます。
宇宙食分野における高密度PVDC共押チューブの役割
宇宙空間において食品を長期保存し、地球上と同じような安全性と風味・品質を確保することは非常に困難です。
ここで、高密度PVDC共押チューブは宇宙食パッケージングの「最適解」として注目されています。
宇宙食保存の課題
宇宙食を長期保存する上で最大の問題は、酸素による酸化劣化・腐敗と水分変化です。
従来のパッケージでは、酸素透過が避けられず、徐々に内容物の劣化が進行してしまいます。
また、宇宙空間は地球と比べて過酷な温度変化や放射線環境もあり、さらに高いバリア性能が要求されています。
酸素透過0.1cc評価の重要性
宇宙食パッケージでは「年間当たり酸素透過量0.1cc以下」という非常に厳格な評価基準が設定される場合があります。
これは、年間を通じてほぼ完全に酸素の侵入をブロックし、酸化による品質劣化や保存期間の短縮を防ぐための指標です。
高密度PVDC共押チューブは、この「酸素透過0.1cc」という業界最高レベルの評価基準に応えられる素材として極めて注目されています。
多層化・均質化されたバリア層により、同寸法・同重量帯の素材の中ではダントツに優れたバリア性能を発揮するからです。
酸素透過試験(OTR)とは
高密度PVDC共押チューブのバリア能力を証明するためには、客観的な透過試験が欠かせません。
OTR(Oxygen Transmission Rate)とは
OTR試験は「酸素透過率試験」のことで、その単位は「cc/㎡/day」として表します。
指定した温度・湿度下で、試験片1平方メートル当たり1日間にどれだけの酸素ガスが透過したかを計測します。
食品、医薬、工業など各分野でバリア材料選定の大きな判断基準になります。
宇宙食PVDC共押チューブのOTR評価方法
宇宙食向け高密度PVDC共押チューブでは、以下のような厳格な条件下でOTR評価が行われます。
– 測定温度例:23℃および40℃
– 測定湿度例:0%、65%、90%RH
– 測定期間:規定日数以上
– 実際のパッケージ状態で測定する場合もある
従来型の樹脂製パッケージでは、年間透過量が1cc以上になることも多いですが、高密度PVDC共押チューブでは「0.1cc/年以下」という驚異的なバリア結果が得られます。
高密度PVDC共押チューブが宇宙食用途で選ばれる理由
これらの特徴と性能評価から、高密度PVDC共押チューブは宇宙食分野で次のようなメリットをもたらしています。
超長期保存が可能に
ごく微量であっても、酸素が浸入すると油脂分の酸化や、ビタミン類の分解が起こります。
高密度PVDC共押チューブは0.1cc/年という酸素遮断力で、3年~5年以上もの長期保存条件にも耐えうる内容物の鮮度保持を実現します。
パッケージ軽量化による輸送コスト削減
アルミ箔や金属缶など、従来バリア素材に比べて大幅に軽量です。
ロケット打ち上げや国際宇宙ステーションへの物資輸送では「1gの軽量化」も極めて重要になるため、軽くて丈夫なPVDC共押チューブは大きなコストダウンを導きます。
廃棄・リサイクル性
近年は宇宙開発でも廃棄ロスや再資源化が課題となっています。
PVDC共押チューブは構造がシンプルで分別も容易であり、環境配慮型設計(リサイクル性を高めた設計やバイオマス樹脂との組み合わせ)も進んでいます。
加工の自由度が高い
フィルム包装や真空パウチに比べて、自在な断面形状・サイズで製造できるため、チューブ式、スティック型、小袋型など、宇宙空間での使いやすさに応じた柔軟な設計が可能です。
高密度PVDC共押チューブ開発の最新動向
さらに性能を高めるべく、国内外の素材メーカーや宇宙関連企業による共同開発も加速しています。
高性能PVDCの分子設計
より緻密な分子構造・高分子量化によるバリア性能向上や、特殊添加剤を加えて熱安定性・耐光性を強化する研究が進んでいます。
また、環境調和型の非塩ビ系樹脂との高機能組み合わせ開発も注目を集めています。
IOT/品質追跡の対応
宇宙食包装にもスマートラベルやQRコードを導入し、包装時の内部ガス濃度、残留酸素濃度などをリアルタイムにトレーシング可能なライン設計も広がっています。
これにより、保存条件ごとの徹底したロット管理も実現できるようになりました。
多様な応用展開
宇宙食のみならず、「災害用保存食」「海外長距離輸送用途」「医療用点眼薬・クリーム等の超長期保存パッケージ」など、地上でも要求される高バリア性能パッケージとして応用範囲が拡大しています。
まとめ
高密度PVDC共押チューブは、その卓越した酸素・水分バリア性能により、従来では成しえなかった極限の長期保存を実現します。
とりわけ宇宙食分野では「酸素透過0.1cc/年」という世界最高水準の評価基準をクリアし、長期間にわたって鮮度と安全性を守る理想的なパッケージ素材といえるでしょう。
今後も高密度PVDC共押チューブ技術は、食品・医薬・災害用など多様な分野において、そのバリア機能と信頼性がさらに求められていきます。
安定した品質と機能性、加工性のバランスを兼ね備えた包装材料として、ますます重要な存在になることは間違いありません。