防錆剤の効きが想定より短くクレームが増える実態

防錆剤の効きが想定より短くクレームが増える実態

近年、金属製品の長期保存や輸送の際に不可欠な「防錆剤」ですが、現場では「効きが想定より早く切れる」「期待より錆が発生しやすい」といった声が増えています。
市場の拡大とともに、防錆剤に対する品質要求が高まる一方、実際にはクレームの増加という深刻な課題が浮き彫りとなっています。
ここでは、防錆剤の効果が想定より短命になっている実態や、その主な要因、企業が取るべき対策について詳しく解説します。

防錆剤とは何か?その基本機能を整理

防錆剤とは、鉄やアルミニウムなどの金属が酸化などによって錆びるのを防ぐために使われる化学薬品です。
主に金属表面に被膜を作り、空気中の酸素や水分、塩分との反応を抑制する役割を果たします。
自動車部品、住宅建材、機械部品など、あらゆる産業分野で幅広く利用されています。

防錆剤の種類には、油性、ワックス、揮発性、無機系など複数ありますが、選定には保存期間、環境(高温多湿、沿岸部など)、作業性、塗布方法(スプレー、ディッピングなど)など多くの要素が絡みます。

防錆剤に期待される効果

製造現場やユーザーが防錆剤に対し最も期待するのは、「規定された期間、確実に錆を防ぐ」ことです。
たとえば3か月の耐食性保証なら、輸出入の長い船積みや長期倉庫保管でも、開梱時に錆が皆無であることが求められます。
この信頼性が、製品の評価やカスタマーサティスファクションに直結します。

防錆剤の効きが短くなる主な原因

商品カタログや仕様書では「〇か月防錆可能」と明記されていても、実際には「思いのほか早く錆びてしまった」「効力が持続しなかった」というクレームが急増しています。
背景にはさまざまな原因が潜んでいます。

1. 環境条件の違いによる想定外の劣化

実験条件や設計時の想定環境と、実際の現場の条件(温湿度、風雨、塩分濃度など)が大きく異なるケースが多発しています。
特に沿岸部や亜熱帯地域など塩害リスクが高い場所では、カタログ上のスペックより大幅に防錆寿命が短縮することがあります。

2. 塗布・施工不良

防錆剤の塗布量不足、不均一な塗布、塗布前の脱脂・洗浄不足など、作業ミスがあると本来の機能を発揮できません。
手作業によるバラつきや、自動化ラインの不具合による防錆剤噴射のムラも要因となります。

3. 防錆剤の選択ミス

耐候性が低い防錆剤を耐食性が厳しい環境で使用したり、本来水性に適さない場面で水性防錆剤を用いると、当然ながら防錆性能が不足します。
昨今のコスト重視方針で、価格だけで選定してしまうケースも一因です。

4. 金属素材や表面処理の問題

素材そのものの防錆性や、前処理の質(りん酸被膜処理、アルカリ洗浄など)によっても防錆剤の寿命は左右されます。
調達先変更などで素材ロットが変わると、予想外の錆び易さが顕在化することも報告されています。

5. 保管・輸送時の予期せぬストレス

保管場所の温湿度管理に不備があったり、密閉包装の破損、結露や水濡れなど、外部ストレスによって防錆層が早期に破壊される場合も多岐にわたります。

クレームが増加する具体的な実例

防錆剤のクレーム増加は、各産業分野で現場の主要な悩みとなっています。

自動車部品メーカーの声

車のエンジン部品を海外に輸出しているA社では、「防錆剤を塗布して3か月後に現地開梱したらすでに錆が発生していた」「相手国の湿度がカタログ条件より高かった」といったトラブルが頻発しています。
結果として「納入品の再洗浄・再防錆」など余分な対応コストがかかり、収益悪化につながっています。

工事現場での建材クレーム

マンション建設用の配管や鋼材を扱うB社でも、「搬入時にはきれいだった部材が、工期中の雨天や露結であっという間に赤錆になった」と苦情が上がっています。
このような事例では、塗布された防錆剤のグレードや施工手順の曖昧さに加え、外部要因への過小評価が見て取れます。

想定より短い防錆寿命によるリスクと影響

防錆剤による保護が機能しないと、企業と顧客の間に様々な問題が発生します。

経済的損失

錆びた部品や材料の再生・再加工、返品コスト、追加の洗浄や研磨、人件費といった直接的な損失に加え、納期遅延や機会損失も発生します。

信用失墜とブランド毀損

一度でも「錆びやすいメーカー」という評価が広がると、新規案件やリピート受注に大きなダメージを受けます。
下請け・委託先に失望した発注元が契約先を切り替える例も少なくありません。

生産性の低下・現場負荷増大

頻発する不良報告やリワーク指示、追加調査による現場の負担増が、結果的に全体の効率低下や士気低下につながります。
こうした波及的な悪影響が長期的な課題となり得ます。

クレームの未然防止と対策方法

増え続ける「効き切れ」クレームを減らすためには、現状の再点検と確かな preventive action が必要不可欠です。

1. 実環境にマッチした防錆剤の選定

スペックのチェックはもちろん、実際の輸送ルートやストッカー環境、エンドユーザーの開梱時までを想定した耐候性テストを行いましょう。
環境ストレスや予期せぬリスクを正しく織り込むことが大切です。

2. 塗布手順・標準作業書の見直し徹底

防錆剤の塗布量・方法・乾燥時間などを数値化し、だれが作業してもぶれないよう作業マニュアルを整備します。
特に新人や外注ラインでの教育も徹底する必要があります。

3. 定期点検・サンプリング検査の強化

保管中や出荷直前の段階での「定期的な錆び発生チェック」を習慣化します。
トラブルの前兆を早期にキャッチし、先手で対策できる仕組みが有効です。

4. 原材料や外部要因の見直し

仕入れ金属の品質、前処理の確実性、梱包材や輸送方法も再精査し、「錆び」を誘発する一切の要素を現場主導で洗い直すことが重要です。

5. クレーム情報の蓄積と共有

発生したクレームや錆び事例を社内でデータ化し、ノウハウや教訓として蓄積・水平展開する仕組みを作ることで、全社的な再発防止につながります。

防錆剤メーカーが求められる新たな開発・提案力

コストや法規制(VOC対応、RoHS指令・REACH規制)、環境性といった社会的背景もあり、防錆剤は日々進化が求められています。

耐食性の強化、塗布作業の簡便化、人体や環境への配慮など、多くの現場ニーズに応えながら「現実の使用環境で確実に期待効果を発揮できる製品開発」が鍵となります。

同時に、防錆剤単体ではなく、塗布方法や梱包・保管ソリューションをも含めた「現場トータル提案」も今後の競争力強化策として有効となるでしょう。

まとめ

防錆剤の効きが想定より短く、クレームが増大する実態は、業界全体の品質マネジメント上の重大な課題となりつつあります。
原因の多くは、環境の違いや作業手順・材料選びのミスマッチ、現場の運用不備に起因します。

「錆び対策」は一過性の工程ではなく、設計・現場・管理・物流など多層的な対応が不可欠です。
メーカー・使用者ともに、現実の使用環境を正しく把握し、科学的データや現場の声を基に最適な防錆対策を見直すことが、信頼性とブランド維持、ひいては事業拡大の必須条件であるといえます。

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