フリッカー評価のPstLMとSVM指標導入と照明品質相関

フリッカー評価におけるPstLMとSVM指標の役割

照明機器、特にLED照明の普及に伴い、フリッカー(ちらつき)による健康や快適性への影響が注目されています。

フリッカーは人間の目には見えにくい、周期的な明るさや色の変動ですが、不快感、視覚疲労、頭痛などを引き起こす可能性が指摘されています。

そのため、照明品質を評価するための客観的な指標が必要となり、多くの国際規格や業界基準でフリッカーの測定と評価が義務付けられています。

本記事ではフリッカー評価の主要指標であるPstLMとSVM、それぞれの導入背景、算出方法、そして照明品質との相関性について詳しく説明します。

PstLMとは何か

PstLM(Short Term Light Modulation Index)は、主に視認可能なフリッカーを評価するための指標です。

IEC 61000-4-15などの国際規格で規定され、電力線の変動が照明機器の光出力にもたらすちらつきの程度を数値で示します。

短期的な(通常10分間)照明の明るさ変動がヒトにどれだけ不快感を与えるか、その平均値を1.0を基準として評価します。

1.0未満であれば大多数の人が不快と感じない範囲、1.0を超えると約半数の人が不快と感じる閾値とされています。

PstLMの算出方法

PstLMの算出はフリッカーメーターを用いて、実際の照明機器の出力変動を測定し、その波形データをもとに複雑なアルゴリズムにより客観的に評価されます。

この評価方法は、入力された光信号を人間の視覚反応に基づいて計算し、短時間(短期)の感覚的不快感を数値化します。

周波数帯域は1Hz~80Hz程度で、これが人間の目に敏感に感じられる領域と一致します。

PstLMの活用事例

家電製品、公共施設、道路照明、一部のオフィス環境など、幅広い分野でPstLMによる照明製品認証が行われています。

特に欧州では電力会社や照明メーカーがPstLM値を品質指標として取り入れており、低フリッカー設計が求められています。

SVMとは何か

SVM(Stroboscopic Visibility Measure)は、人間の視覚でストロボスコピック効果(ストロボ効果)がどれだけ感じられるかを定量化する新しい指標です。

IEC TR 61547-1やIECEE CBスキーム、北米などで注目されており、特に高周波成分のちらつきによる見え方の違和感の客観評価に適しています。

SVMは運動する物体や手、回転体などの見え方に強く影響するため、工場、体育館、オフィスなど運動視認が重要な空間で注目されています。

SVMの算出方法

SVMは、照明波形データを周波数分析し、ストロボスコピック効果と人間の視覚反応モデルを組み合わせて算出します。

一般的には1.0未満であれば違和感がほとんどなく、1.0を超えると違和感を覚える人の割合が増加するとされています。

動的なシーン(例:手を素早く振る、車輪が回転する)で特に効果的な指標です。

SVMの活用事例

工場や物流センターの作業効率、安全性、スポーツ施設の快適性評価、スマートフォンやカメラといった動きのある被写体の撮影時などにも導入されています。

また、製品開発段階でSVMを組み込んだ品質設計を実施する企業も増加しています。

照明品質指標としてのPstLMとSVMの意義

照明品質の主要評価指標には、演色性、照度、色温度、エネルギー効率などがありますが、近年はフリッカーによる不快感や生体影響にも焦点が当てられています。

PstLMとSVMは、いずれも従来の「目に見える不快なちらつき」を定量化するだけでなく、人間の快適性や健康リスクに配慮した照明設計・評価に不可欠です。

人間中心設計とフリッカー対策

PstLMやSVMは「人間がどのように照明を感じるか」を科学的に評価し、照明機器メーカーや設計者が“人に優しい光環境”を提供する羅針盤となります。

特に、長時間過ごすオフィスや教育施設、医療現場などでは、低フリッカー環境を整備することが集中力維持や健康対策の観点で重要視されています。

国際動向と法規制

欧州や北米ではPstLMやSVMに関する規格化、義務化の動きが進んでおり、日本国内でも大手メーカーを中心にこれらの指標を製品評価、設計に積極的に導入するケースが増えています。

照明品質の認証制度でも、推奨値をクリアした製品が“高品質照明”として広く認知されつつあります。

フリッカーの品質管理と実務導入のポイント

照明メーカーや施設管理者がPstLMやSVM指標を現場で活用する場合、測定環境や評価機器の選定、基準値の設定といった実務面の配慮が重要です。

測定機器と精度管理

PstLMやSVMの測定には、専用のフリッカーメーターや分光測定機器が必要です。

光源直下や作業面、天井付近など、実使用環境に則した測定ポジションを選び、再現性のあるデータ取得を心掛ける必要があります。

また、光源ごとの時間変動や設置方法のばらつきを考慮した複数回の測定、季節や温度条件などもあわせて評価することで、信頼性の高いデータが得られます。

製品開発・選定のポイント

新製品設計時には、PstLMやSVMの目標値を定め、部品選定(特にLEDドライバーや調光回路)、回路設計、筐体構造まで総合的に検討しましょう。

また、設計段階から国際規格や各国の法規制を視野に入れ、将来的な法令改正リスクにも対応できる品質管理体制が望まれます。

施設管理者は、導入する照明機器が規定値をクリアしているかを確認することで、利用者の快適・健康を守ることにつながります。

フリッカー評価指標と照明品質の相関性

PstLM・SVMは照明の本来の「美しさ」や「分布」とは直接関係しませんが、従来の照明品質指標と組み合わせて評価することで、よりバランスの取れた照明設計が実現できます。

総合的な照明品質の向上

高演色性(Ra値が高い)、適切な色温度、十分な照度、そしてPstLMやSVM基準を満たした“低フリッカー”の組み合わせが、現代の照明品質のスタンダードになっています。

特に、近年の省エネ・高効率化照明(LEDや有機EL等)は、設計次第で高周波・低周波のちらつきを発生させやすいため、見た目の明るさ・色だけでなく、フリッカー評価も重視されるようになっています。

ユーザー満足度との関係

PstLMやSVM値が高い照明は、一般の利用者が体感的に違和感を覚えたり、不調の原因にもなりかねません。

低フリッカーでまぶしさの少ない照明は、学習効率や作業効率、空間のリラックス感向上にも直接寄与すると考えられ、照明選定やリニューアルの大きな判断基準となります。

照明メーカーや設計事務所、発注者ともに、PstLM・SVMの情報を明示した製品カタログや、現場測定データのエビデンス提出体制を整えることで、より透明度の高い品質保証が可能となります。

今後のフリッカー評価と照明業界の展望

LED照明の高機能化によるフリッカー現象の発生は今後もある程度避けられません。

しかし、PstLMやSVMといった科学的指標に基づく製品評価の定着、さらなる規格統一の進展、AIやIoTによるリアルタイムモニタリング技術の発展などにより、照明品質は一層向上していきます。

今後は複数の評価指標を総合化した照明“快適指数”の策定や、新たな医療・生体影響研究と連携した規格作りも期待されています。

省エネだけでなく、「人に優しい、安全で健康を守る照明」へと、技術革新はますます進んでいくでしょう。

まとめ

フリッカー評価指標PstLMとSVMの導入は、現代照明品質の根幹を支える重要な要素です。

両指標を正しく理解し、設計・製品選定・現場運用に的確に反映させることで、人間中心の快適かつ安全な光環境を実現できます。

照明機器メーカーや施設管理者は、今後ますますフリッカー規制と高品質化ニーズが高まる時代に備え、PstLM・SVMの活用を積極的に進めるべきです。

エンドユーザーも、照明選びの新たな価値判断基準としてこれらの指標を意識し、安全・快適な空間づくりに役立てましょう。

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