OCD散乱計測の逆解析と半導体ラインエッジラフネス定量

OCD散乱計測の逆解析と半導体ラインエッジラフネス定量

OCD散乱計測とは何か

OCD(Optical Critical Dimension)散乱計測とは、半導体製造プロセスにおいて構造物の寸法や形状を非接触かつ高精度で測定する技術です。

従来の電子顕微鏡(SEM)による測定では試料のダメージや計測速度の問題が課題となっていましたが、OCD散乱計測はレーザーや白色光などの光を用い、ナノスケールのパターン寸法や形状、ライン幅、ラインエッジなどを高速で非破壊的に評価できるのが最大の特長です。

OCDでは、光がパターン化された表面に入射した際に生じる反射・散乱(回折)光のスペクトルや強度分布を高精度で検出します。

そして、得られたデータをもとに構造の情報を逆解析により定量化します。

この技術は、微細化が進む半導体プロセス制御に欠かせません。

逆解析(インバースモデリング)の重要性

OCD散乱計測の定量精度や応用範囲を拡張する上で、逆解析(インバースモデリング)は不可欠です。

逆解析とは、計測により得られた散乱信号から、計測対象であるパターン構造(寸法、形状、深さ、線幅など)を推定・再構築するプロセスのことです。

このプロセスでは、まず理論的モデル(フォワードモデル)を用いて、様々な構造パラメータと対応する散乱特性を計算します。

その後、実計測データと照合し、最も一致する構造パラメータを探索します。

主にリグレッションや最小二乗法、先端的にはAI・機械学習も活用し、膨大なパラメータ空間から最適解をスピーディに求める手法が注目されています。

近年では、逆解析のアルゴリズムと計算機ハードウェア、そして物理モデルの高度化により、サブナノ精度での構造定量が可能となっています。

半導体ラインエッジラフネス(LER/LWR)とは

半導体デバイスの性能や歩留まりを大きく左右する要素の1つに、ラインエッジラフネス(Line Edge Roughness:LER)やラインワイドラフネス(LWR)があります。

LERとは、リソグラフィーやエッチング工程において形成されたパターンのエッジ(端部)が、理想的な直線からどれだけ乱れているかを示す指標です。

LWRは、パターンのライン幅自体のゆらぎを表します。

これらのラフネスは、微細化に伴い無視できない構造欠陥やデバイスのばらつきの原因となるため、厳密な定量評価とプロセス制御が必須となります。

従来はSEMによる直接観察やAFM(原子間力顕微鏡)による表面形状計測が用いられてきましたが、いずれも測定速度や範囲、被測定物への影響といった点に限界がありました。

OCD散乱計測によるLER/LWRの高精度定量

近年、OCD散乱計測によって、半導体パターンのLERやLWRを非破壊・高速かつ広範囲に定量評価する研究が進んでいます。

OCDを用いたラフネス評価の基本原理は、パターン構造の微細なエッジ乱れが、反射・散乱光のスペクトルや強度分布に特有の変調を生じさせるというものです。

すなわち、理論モデルによりエッジや幅の乱れによる光学応答案をあらかじめ計算し、実計測データと逆解析でフィッティングすることにより、LERやLWRの統計量(平均値、標準偏差、自己相関長など)を高精度で抽出することが可能です。

最新のOCD装置では、データ取得から逆解析、パターンのラフネス定量化までを自動化し、半導体製造ラインでのリアルタイム応用も現実のものとなっています。

逆解析アルゴリズムによるLER/LWR抽出の高度化

ラーやLWRをOCDデータから正確に定量するためには、逆解析アルゴリズムが極めて重要です。

エッジ乱れのモデル化には、自己相関関数やパワースペクトル密度(PSD)解析などの統計手法を用います。

それぞれのモデルにおけるパラメータ(例えば、ラフネスの標準偏差や自己相関長など)が光散乱のスペクトルパターンに与える影響を詳細に計算します。

そのうえで、逆解析アルゴリズムによって実計測スペクトルと理論モデルとを高速・高精度にフィッティングします。

また、AI/機械学習を組み合わせることで、従来よりも大規模なパラメータ空間でも短時間で最適解を見つけることが可能となっています。

これにより、複雑なパターンや多層構造におけるLER/LWR抽出も、現場レベルで信頼性高く実行できるようになりました。

OCDによるLER/LWR計測の利点と課題

OCD散乱計測によるLER/LWR定量の主な利点は次の通りです。

・非破壊・非接触でサンプルダメージが皆無
・高速かつ広範囲な測定が可能
・ナノスケールでの高精度定量
・自動化、スマートファクトリーとの連携が容易
・工程内計測(インライン/リアルタイム計測)による即時フィードバック

一方で、課題も存在します。

例えば、モデル化が難しい複雑な多層パターン構造や、ラフネス以外のノイズ(基板ゆがみ、微小欠陥等)の影響、極端な微細化領域での信号強度低下などです。

また、逆解析精度は理論モデルの正確さや計算速度にも依存します。

そのため、半導体メーカーや装置メーカーは、より高精度なモデリングやデータ解析アルゴリズムの開発、校正方法の高度化を日々進めています。

実際の半導体生産へのOCDラフネス計測活用事例

OCD散乱計測をLER/LWR定量に活用している主な現場事例としては、以下が挙げられます。

1. ロジック・メモリの極限微細パターン計測

3nm、2nmといった次世代ロジックやDRAMプロセスでは、ラインピッチやライン幅が極限まで微細化され、LER/LWRがデバイス特性に直結するため、OCDによる正確かつ高速なラフネス評価が歩留まり向上や品質管理に大きく貢献しています。

2. EUVリソグラフィー工程におけるプロセス最適化

EUV(極端紫外線)リソグラフィーではパターニング時のラインエッジやライン幅の乱れが顕在化しやすく、OCD計測によるリアルタイムなラフネスモニタリングを通して、レジストや現像条件の最適化が行われています。

3. FOWLPや3D積層など先端パッケージング工程の品質管理

先端パッケージング技術においても、OCDを活用したLER/LWRモニタリングによる欠陥検出や層間整合性評価が進められています。

ラインエッジの乱れは、ウェーハレベルや複雑形状を持つ実装体でも早期に検知でき、工程事故の未然防止に寄与します。

今後の発展と展望

IoT、AI、5G/6Gといった次世代半導体へのニーズはますます高まり、デバイスの微細化・高集積化は今後も加速します。

これに伴い、パターンのLER/LWRなど僅かなラフネスや形状変動が、製品性能および歩留まりへのインパクトをさらに増すことは明らかです。

OCD散乱計測の逆解析は、AIやクラウド連携、スマートファクトリーとの融合で今後一層高度化し、工程内ラフネスのリアルタイムモニタリングからフィードバック制御まで自動化される時代が到来すると考えられます。

また、OCDによる多層・三次元構造や新素材デバイスへの応用もますます広がります。

半導体の新たな生産管理・品質保証手法としてOCD散乱計測と逆解析技術の発展に今後も目が離せません。

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