イメージセンサMTFのISO12233チャート解析とPRNUダーク補正
イメージセンサMTFのISO12233チャート解析とPRNUダーク補正
イメージセンサMTFとは
イメージセンサの性能を評価する際に不可欠なのが、MTF(Modulation Transfer Function:変調伝達関数)です。
MTFは、撮像した画像の鮮鋭度や解像力など「どれだけ細かいパターンを忠実に再現できるか」を数値で示します。
イメージセンサが入力した光信号をどの程度のコントラストや解像度で出力できるかを評価する上で、MTF測定はカメラや画像システム開発の現場で重視されています。
MTF評価は、撮像装置の開発や製造だけでなく、レンズや光学系全体の性能評価、また画素レベルでの画像処理アルゴリズムの最適化などにも利用されています。
ISO12233チャートの概要と役割
イメージセンサMTFを測定・評価するには、専用のテストチャートが欠かせません。
その代表格が「ISO12233チャート」です。
ISO12233は、画像システムの解像度測定方法を規定した国際標準で、その規格に準拠したチャートは、規則的なパターンや鮮明なエッジを持っており、MTF評価の基本となるパターン解析に適しています。
ISO12233チャートには、以下のような特徴があります。
– 解像力評価用の斜めエッジ
– 解像度限界を測定できる細線パターン
– グレースケール/カラーサンプル
– パラメトリックなターゲットエリア
これにより、チャートを使った撮影画像から、機械的かつ定量的にセンサやレンズの画質評価が可能となります。
ISO12233チャートを用いたMTF解析の手順
解析の流れは、大きく分けて次の通りです。
1. チャート撮影の準備
均一な照明環境を整え、ISO12233チャートをカメラの撮影面に対してできる限り平行に配置します。
撮影時のブレやピントずれもMTF値に影響するため、三脚やフォーカス固定も重要です。
2. 撮影データの取得
カメラをISO12233チャートに向けて撮影し、撮影データを取得します。
カメラの設定(ISO感度、絞り値、シャッター速度など)はテストの目的に応じて規定します。
3. 画像からエッジ部抽出
ISO12233チャートの斜めエッジ(エッジSFR)部分を切り出し、画像データとしてPCに取り込みます。
このエリアがMTF解析のメイン領域です。
4. エッジ拡散関数(ESF)の抽出
チャートエッジ部の輝度値分布をサンプルして、エッジ拡散関数(Edge Spread Function : ESF)を得ます。
エッジの「ぼけ」の幅を数値として捉えることができます。
5. 線拡散関数(LSF)の算出
ESFの微分を取ることで、線拡散関数(LSF)を求めます。
LSFは理想的に細いエッジが、撮像系でどれだけ太くなったかを示しています。
6. MTF値の計算
LSFに対してフーリエ変換を適用し、各空間周波数(lp/mmやcycles/pixelごと)ごとのMTF値を算出します。
MTF50(コントラスト50%に落ちる周波数)が画質評価の指標として多用されます。
PRNU・ダーク補正の概要
ISO12233チャートによるMTF評価では、イメージセンサ自体のノイズ成分や画素ごとの特性バラツキが結果に影響を与える場合があります。
代表的なものとして、PRNU(Photo-Response Non-Uniformity:感度不均一性)と、ダークノイズ(暗電流バラツキ)が挙げられます。
PRNU(Photo-Response Non-Uniformity)とは
PRNUは、同一の光が全ての画素に当たっても、画素ごとに受光感度や出力値が微妙に異なることを表します。
このため、フラットフィールド撮影画像に「まだら模様」や「縞ノイズ」として現れることがあります。
MTF測定時にPRNUが大きいと、細線パターンやエッジ部のコントラストが誤差により正しく評価できなくなります。
ダーク補正(Dark Correction)とは
ダークノイズとは、光が当たっていない状態でも画素ごとに生じる出力(バイアス)です。
このバラツキが画像のシャドウ部や低照度部分に強調されると、MTF評価値が低下したりノイズ分として過大に測定されるリスクがあります。
ダーク補正は「シャッターを閉じてダークフレームを撮影し」「各画素のバイアス成分を本来の画像から減算する」ことで行います。
ISO12233チャート解析における補正の必要性と方法
PRNUやダークノイズの影響を低減するには、MTF評価画像からこれらのノイズ成分を事前に除去することが重要です。
1. フラットフィールド補正(PRNU補正)
均一な白色板(フラットパネル)を撮影し、得られた画像をベースに各画素間の感度バラツキを補正します。
これにより、PRNU由来の「まだらノイズ」が取り除かれ、ISO12233チャートパターンの解析精度が向上します。
2. ダークノイズ補正
ダークフレームを撮影し、画像全体または各画素ごとにバイアス値を記録しておきます。
これをテスト画像から減算することで、暗電流などによる測定誤差を補正します。
3. 測定画像への適用手順
(1) ダークフレーム画像を取得し、任意のISO12233チャート撮影画像から減算します。
(2) 次に、フラットフィールド画像を用いて各画素の出力値を正規化します。
(3) 最終的に補正済み画像からISO12233チャートのエッジ部を抽出し、MTF解析を実施します。
補正前と補正後でMTFの数値やカーブ形状が異なることが多いため、正確な評価には必須の手順となります。
実践的なISO12233チャート解析・PRNUダーク補正のポイント
近年の高解像度イメージセンサでは、画素サイズの微細化につれPRNUやダークノイズの影響が大きくなっています。
特に低照度環境下や高ISO感度時のMTF評価では、以下のような点に注意が必要です。
テスト環境の均一性
均一かつ十分に明るい照明、正確なチャート配置など、外的なブレ要因を可能な限り抑えましょう。
照度ムラやピント外れは、MTF値やノイズ補正の精度に直結します。
高精度な補正画像の取得
ダーク・フラット画像は、実際のMTF評価時の撮影条件(温度、露光時間、ISO値など)に揃えて取得する必要があります。
条件が異なると補正効果が発揮できません。
最適な画像処理アルゴリズムの選択
PRNUやダークノイズ補正のアルゴリズムは様々存在します。
対象センサやアプリケーションに応じて適切な手法を選択し、解析ソフトウェアやツールでパラメータを調整しましょう。
まとめ
イメージセンサMTFの正確な評価には、ISO12233チャートを用いた客観的解析が不可欠です。
その一方で、センサ固有のPRNUやダークノイズといったノイズ成分の補正を適切に行うことで、高精度なMTF測定結果を得ることが可能になります。
これらの補正および解析手法を組み合わせることで、最新イメージセンサやカメラシステム開発における画質検証を科学的かつ効率的に進めることができます。
今後、さらなる高解像度化や小型化が進む映像機器分野において、ISO12233チャート測定×PRNU/ダーク補正の重要性はより一層増していくことでしょう。