革の曲げ試験で割れが入り高級バッグ向けが通らない本音

革の曲げ試験で割れが入り高級バッグ向けが通らない本音

革の曲げ試験とは何か

革製品は、その高級感や耐久性から、バッグをはじめとするファッションアイテムに広く使用されています。
しかし、市場に投入される前の革は、さまざまな品質試験を受ける必要があります。
特に「曲げ試験」は、実際の使用環境において繰り返し曲げられることで生じるダメージや耐久性を確認するために行われる重要な試験です。

曲げ試験とは、一定の回数または一定の時間、革を繰り返し折り曲げて、表面や構造にどのような変化が起きるかを調べるものです。
この過程で革の表面に割れやヒビが発生しないか、高級ブランドでは特に厳しくチェックされます。
なぜなら、高級バッグは耐久性と見た目の美しさが共存しなければならないからです。

曲げ試験で求められる基準

革の曲げ試験で求められる基準は、ブランドや製品カテゴリーによって異なります。
特に世界的に有名な高級ブランドともなると、曲げ試験の条件は一段と厳しく設定されています。

例えば、曲げ回数が5,000回、10,000回など、長期間の使用を想定した数値が基準となります。
また、割れやヒビが生じないことはもちろん、表面の色落ちや変形なども厳しくチェックされます。
これらの試験をクリアすることで、はじめて高級バッグ向けの素材として認められるのです。

国内外の基準の違い

日本国内ではJIS規格(日本工業規格)、海外ではISOやブランド独自規格があります。
海外トップブランドでは、JIS規格以上の厳しい独自基準を持つケースも多く、技術者やタンナーは毎回素材の改良を求められます。

たとえば、日本のJIS K6545や、ISO 5402では、標準的な曲げ試験方法が定められていますが、有名ブランドでは色落ちや表面の微細な変化も重要な評価対象とされます。
これらに合格しなければ、どんなに高品質な原皮を使っていても採用されません。

なぜ曲げ試験で割れが起きるのか

革の曲げ試験で割れが生じる原因は、一つではありません。
原皮の質から鞣し工程、染色、仕上げまで、あらゆる工程が関係しています。

原皮の選定と影響

まず、原皮の段階で繊維密度などが均質でない場合、繰り返しの曲げにより弱い部分に割れが生じやすくなります。
上質な原皮を選んでも、自然素材ゆえに個体差は避けられません。

鞣しと仕上げのバランス

クロム鞣しやタンニン鞣しなど、鞣し方法によって曲げ耐性は大きく異なります。
クロム鞣しは柔軟で耐久性がありますが、ブランドによっては環境面や質感からタンニン鞣しを好みます。
タンニン鞣しは風合いが良くなりますが、曲げに対してやや弱い傾向があり、割れやすいという本音があります。

また、染色や仕上げで使用する塗料・ワックスの質や厚みが、革の柔軟性や割れやすさに直結します。
仕上げ層が厚すぎると、見た目は美しいものの、曲げた瞬間にパリッとヒビが入ることもあります。

高級バッグブランドの要求水準の現実

名だたる高級ブランドでは、革の見た目と触感の美しさ、さらには長期耐久性の両立を強く求めます。
しかし、天然素材としての革には、「完璧な均一」は存在しません。
一目で美しい表情を持つ革が、必ずしも高い曲げ耐性を持ち合わせているとは限らないのです。

時には、仕上がったばかりの新作原皮が、曲げ試験で思わぬ割れを発生させ、最終選考から除外されることも珍しくありません。
特に厳しすぎる品質基準により、現場の技術者や開発担当者が頭を抱えることも多いのが実情です。

美しさのためのリスク

高級バッグ向けの革には、ピュアでナチュラルな質感が求められます。
しかし、トリミングや補修を控えて「素」の美しさを前面に押し出す処理をすると、逆に耐久性が下がり、曲げ試験で割れやすくなる場合もあります。

例えばナチュラルカラーや素仕上げの革は、表皮をほぼそのまま生かしているため、耐性が弱いことも多いです。
ブランドやデザイナーの「この美しさを大切にしたい」という想いと、「耐久性が満たないと商品化できない」という物性要件のジレンマが現場を悩ませます。

合格しない革の行方

曲げ試験で割れが発生し、高級バッグ規格に達しなかった革は、どのように扱われるのでしょうか。

用途変更・再加工

合格しなかった革も、他の用途に再加工されることが一般的です。
バッグ表面には不向きでも、見えない内装材や小物、財布、ベルトなどに活用されるケースが多いです。
また、クラフト用素材などのマーケットに流通する場合もあります。

ただし、ブランドネームを冠せるのは、当然ながら厳しい検品をパスした素材だけです。

技術者の本音

技術者やタンナーは「ここまで美しく仕上がったのに、割れ一点だけでブランド基準を満たせないのはもったいない」と感じる場合が多いです。
特に、大判で傷の少ない原皮が、ひと押し足りず不採用になると、製造現場では大きなため息が漏れます。

一方で、高級ブランドのラグジュアリーイメージを守り抜くためには一切の妥協が許されないため、苦渋の決断として割れのあるものは除外されます。

曲げ試験とサステナブル革素材の課題

近年はサステナビリティやSDGsの観点から、環境配慮型の「エコレザー」「ベジタブルタンニンレザー」などが注目されています。
しかし、これらの素材は伝統的なクロム鞣しに比べると曲げ耐性や物性が落ちやすく、「曲げ試験で割れが生じ、商品化できない」という新たな壁があります。

サステナブル素材は理想的な選択肢に見えますが、現時点ではブランド要求の水準に到達しないケースも多いのが事実です。

今後の技術革新と展望

業界では、サステナブルでなおかつ曲げ耐性を向上させる技術への期待が高まっています。
バイオレザーや新しい鞣し剤、ナノテクノロジーなど、未来の高級バッグ素材を実現するための開発が進められています。

今後は「本音として曲げ試験で割れが入りやすい」という課題と、「高級ブランドの厳格な要求」の両方を満たす素材開発が、さらに加速していくでしょう。

まとめ

革の曲げ試験は、高級バッグ向け素材の品質保証に不可欠な工程です。
天然素材である革は、「美しさ」と「耐久性」が常にトレードオフの関係にあり、厳しい曲げ試験をクリアするのは決して容易ではありません。

割れが発生し基準に満たなかった革も、さまざまなかたちで再利用されていますが、「本音」として現場では一点の割れで価値判断されてしまうもどかしさも付きまといます。

今後は、美しさ・耐久性・サステナビリティのすべてを兼ね備えた革素材の開発がブランドの持続的成長に欠かせません。
曲げ試験とともに歩む“本音”の現場の努力により、より優れた素材が生み出され続けることを期待します。

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