金属発泡材の軽量耐衝撃性とEVクラッシャブルゾーンでの利用

金属発泡材とは何か

金属発泡材は、その名の通り金属を発泡させて、スポンジ状にした新しい構造材料です。
この発泡の工程で無数の細かい気泡が生まれるため、従来の金属材料と比較して大幅な軽量化が実現可能となります。
主に使用される材料としては、アルミニウムやチタン、ニッケルなどがあります。
その中でも特にアルミニウム発泡材は、加工性とコスト面から実用化が進められています。
発泡方法には溶融金属中に発泡剤を混ぜる方法や、粉末冶金法などが用いられており、発泡度合いや気泡の大きさを制御できる点が強みです。

金属発泡材の最大の特徴は、強度と剛性を一定以上保ちつつ、従来金属と比較して大幅に軽くできる点にあります。
これにより、構造体の軽量化と耐衝撃性向上を同時に目指すことが可能です。

金属発泡材の軽量性がもたらすメリット

金属発泡材は、密度を大幅に下げることができます。
金属本来の特性を活かしたまま、中空構造や多孔質であることから、重量を削減できます。
例えば、従来のアルミ板と比較した場合、発泡材を用いることで重量はおよそ1/10程度に抑えることができます。

軽量化は自動車や航空機をはじめ、あらゆる運搬機器にとって極めて重要な要素です。
特に近年ではカーボンニュートラルの観点から、エネルギー効率の向上が求められており、軽量化による省エネ効果は大きなアドバンテージとなっています。
EV(電気自動車)においても、バッテリー重量が増加する中で車体の軽量化は航続距離の延長に直結します。
この課題に対して、金属発泡材の採用は大きな効果を発揮しています。

金属発泡材の優れた耐衝撃性について

金属発泡材は、発泡構造による緩衝・吸収効果が非常に高いという特性があります。
この構造は、外部からの衝撃を多数の気泡が分散することで受け止め、エネルギーを吸収します。
従来の金属板で得られなかったような、高いエネルギー吸収性能を発現できるのです。

例えば、自動車のクラッシャブルゾーンに採用した場合、衝突時の衝撃エネルギーを効率的に吸収し、車両本体や乗員へのダメージを抑えることができます。
この吸収能力は、従来素材と比較して数倍から十数倍にも及ぶ場合があり、安全機能を強化する上で大きく貢献します。

また、発泡材は変形しやすい特徴を活かし、衝突エネルギーを段階的かつ効率的に吸収できます。
これにより、初期衝撃の緩和と二次衝撃の減衰という両方のメリットを実現しています。

金属発泡材の種類と特徴

金属発泡材には大きく分けて「開孔型」と「閉孔型」の2種類があります。
それぞれ構造上の違いにより、用途や性能に差が生まれます。

開孔型金属発泡材

開孔型は泡が互いに連通している構造を持ちます。
これにより、通気性・排水性・吸音性に優れており、断熱材や吸音材としても利用されています。
また、油や水を通すフィルター材にも適用されています。

閉孔型金属発泡材

一方、閉孔型は気泡が完全に独立しているのが特徴です。
構造材として使われる場合、主にこの閉孔型が用いられます。
高い圧縮強度と耐衝撃性を発揮しやすく、クラッシャブルゾーンなど強度とエネルギー吸収の両立が求められる用途に最適です。

電気自動車(EV)クラッシャブルゾーンへの応用

近年、EVの普及とともに安全装置としてのクラッシャブルゾーンの重要性が増しています。
クラッシャブルゾーンは、自動車の衝突時に力を吸収し、乗員空間を守る構造部分です。
電気自動車の場合、バッテリーなど高価値コンポーネントの保護も重要な要素となるため、更なる耐衝撃性能の向上が求められています。

金属発泡材の役割

金属発泡材は、クラッシャブルゾーン内に組み込むことで、衝突時のエネルギー吸収能力を飛躍的に向上させます。
発泡材の高いエネルギー吸収力により、衝突の際に乗員やバッテリー部分へ伝わる衝撃を最小限にとどめることが可能です。
また、一定の体積内で高い吸収効率を発揮するため、車体構造の設計自由度も拡大します。

軽量化によるEV航続距離の延長

EV最大の課題のひとつが航続距離の短さです。
金属発泡材を使うことで、クラッシャブルゾーンそのものの重量が軽減され、車体全体の軽量化に貢献します。
車両が軽くなれば、同じバッテリー容量でより長い距離を走ることができ、EVの使い勝手と商品価値が飛躍的に向上します。

衝突安全基準の厳格化にも対応

世界的に自動車の安全基準が年々厳しくなる中で、金属発泡材のように高いエネルギー吸収性と設計自由度を持つ材料は、各国の規格適合性を高める重要な素材となっています。
自動車メーカー各社が積極的に採用を検討しており、今後のEVには欠かせない材料になると考えられます。

他分野における用途と事例

金属発泡材の応用範囲は自動車だけにとどまりません。
航空宇宙産業では、機体部材の軽量化および緩衝材として利用されています。
また、鉄道車両や船舶では、振動吸収や騒音対策、さらに火災時の断熱材などとしての事例も増加しています。

建築分野では軽量鉄骨の間仕切り材や、地震エネルギー吸収装置にも利用が広がっています。
医療分野では人工骨材料やX線の散乱防止材として利用されるケースもあります。
このように、特性を活かし多様な分野で需要が拡大しています。

今後の課題と展望

金属発泡材は、量産化技術の進展やコスト削減、新たな発泡プロセスの確立を通じて急速に普及が進んでいます。
しかし、さらなる機能向上やコスト競争力の強化、信頼性向上が今後の課題となります。
現状では各社で発泡制御技術や材料開発が活発に進められており、用途に応じた最適設計も深化しています。

人工知能やCAE技術との連携が進むことで、材料設計の最適化やシミュレーションもより高度になってきています。
金属発泡材は、未来のモビリティ社会・カーボンニュートラル社会に不可欠な材料として、その可能性をさらに広げていくでしょう。

まとめ

金属発泡材は、従来金属に比べて軽量かつ高い耐衝撃性を持つ、新しい高機能構造材料です。
特にEVのクラッシャブルゾーンでの利用は、衝突時の安全性と車体の軽量化を両立させ、EVの航続距離増加にも貢献します。
今後の技術革新とコスト削減が進めば、金属発泡材は自動車産業のみならず、様々な分野で社会を支える基幹材料となるでしょう。

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