リグニンベース難燃剤処理OSBと中層木造耐火認定取得プロセス
リグニンベース難燃剤処理OSBと中層木造耐火認定取得プロセス
リグニンベース難燃剤とは何か
リグニンは木材の主成分の一つであり、セルロースやヘミセルロースとともに木の構造を支えています。
このリグニンは、自然界で最も豊富に存在する芳香族高分子で、従来は紙パルプ産業の副産物として処理されてきました。
しかし近年、リグニンの持つ構造的安定性と難燃性に注目が集まり、合成難燃剤の代替としての活用が進んでいます。
リグニンベース難燃剤は、木質材料に加工する過程で表面または内部に塗布・含浸させることで、炎の拡散や熱分解速度を抑える効果を持ちます。
特にOSB(Oriented Strand Board)は、木材チップを接着して形成された建材で、従来の合板や集成材に比べコストパフォーマンスが高いとされます。
リグニンベース難燃剤を使用したOSBは、従来の化学系難燃剤よりも環境負荷が低く、持続可能性の側面から評価されています。
リグニンベース難燃剤処理OSBの特徴とメリット
環境配慮とサステナビリティ
リグニンベース難燃剤は、石油系化合物を原料とする従来の難燃剤と異なり、自然由来成分で作られるため環境負荷が大きく抑えられます。
また、製造時のCO2排出量も低減でき、グリーン建築や脱炭素社会の流れに大きく貢献しています。
難燃性能の向上
リグニンベース難燃剤処理を施したOSBは、火炎暴露時に表面を炭化させ、内部まで燃え広がるのを抑制します。
これにより、建築物全体の耐火性能を向上させることが可能です。
この性能は、各種燃焼試験や自然火災シミュレーションによっても実証されています。
シックハウス対策
従来の化学系難燃剤ではホルムアルデヒドなど有害化学物質の放散が懸念されてきました。
一方、リグニンベース難燃剤は木材から抽出される自然成分のため、シックハウス症候群などの健康被害リスクが低くなります。
中層木造建築と耐火認定の重要性
近年、日本の都市部を中心に中層(3階~5階)木造建築の需要が伸びています。
これは木材の炭素固定効果や断熱性、意匠性に加え、建設コストや工期を抑えられる点が評価されているためです。
しかし、防火・耐火基準を満たすためには、建築基準法や関連認定の取得が不可欠です。
耐火認定とは何か
耐火認定とは、建築材料や工法が「一定時間、火災時にも建築物の構造体の保持や周囲への延焼を防ぐことができる」と国や認証機関により公式に認められることです。
中層木造では、特に柱・梁・床・壁など構造部材の耐火性能が問われ、非木質系に劣らぬ性能が求められます。
耐火性能の評価基準
耐火認定の評価基準には「遮炎性」「断熱性」「構造耐力保持性」などがあり、通常は30分・60分・90分といった耐火時間ごとに区分されます。
OSBを使用した壁・床システムの場合、実大加熱試験による燃焼試験をクリアする必要があります。
リグニンベース難燃剤処理OSBの耐火認定取得プロセス
材料選定と前処理
耐火認定を目指す場合、使用するOSBそのものの品質も重要です。
樹種や成型方法、接着剤の種類によって耐火挙動が変化するため、JISやASTMの規格値を満たした材料選定が前提となります。
その上で、リグニンベース難燃剤をどのように塗布・含浸するか、含浸率や乾燥工程の最適条件を事前検討します。
加熱・燃焼試験の実施
認定試験の主軸は、国土交通大臣認定などを取得するための加熱・燃焼試験です。
この試験では、OSBを複数枚サンドイッチした耐火壁、または床部材として組み立て、火炎暴露を受けても一定期間構造体が損傷しないか、熱や炎が裏側に伝播しないかを評価します。
加熱カーブは、ISO834やJIS A 1304に基づき、20分~60分の間、壁面裏面の温度上昇や変形量を測定します。
性能評価書の取得と書類作成
試験で基準をクリアした場合、性能評価書の発行・技術資料の整理を行います。
これには、難燃剤の化学組成分析結果、構造設計図、試験体の寸法や施工手順の記載が求められます。
建築基準法に準拠した書類を国土交通省や評価機関に提出し、最終的な耐火認定を得る流れとなります。
適用範囲の申請と確認
認定取得後、適用範囲(用途・規模・設計条件など)の明記を行い、実際の建設プロジェクトで使用可能か確認します。
中層木造の場合、柱・梁・壁・床の全ての部材で耐火認定を受けられるか、施工方法ごとの性能差異の有無などもチェックが必要です。
リグニンベース難燃剤処理OSBの今後の課題と展望
さらなる耐火性能向上
現状でもリグニンベース難燃剤処理OSBは十分な耐火性能を実証していますが、火災規模の増大や長時間暴露に対しては、さらなる改良が求められています。
多層施工や他の難燃成分との複合化により、さらなる耐火時間の延長や高温暴露下での強度保持が研究されています。
コストと施工性の両立
リグニンベース難燃剤は、化学合成難燃剤に比べてコスト削減や安全性の向上が期待できますが、量産化や現場適用のための技術向上が課題となっています。
現場施工時の塗布・含浸方法の簡素化、作業工程の短縮などが、さらなる普及の鍵を握ります。
法規制・基準の整備
持続可能型建材への移行を促すため、建築基準法を始めとする各種法規制や認定基準の更なる整備も重要です。
リグニンベース難燃剤の評価基準や認定プロセスの明確化、木造耐火部材としての標準化を通じて、より広い建築分野への応用が期待されます。
まとめ
リグニンベース難燃剤処理OSBは、環境負荷を低減しつつ、従来の化学系難燃剤と同等以上の耐火性能を持つ注目の建材です。
中層木造建築における耐火認定取得には、材料選定、加熱・燃焼試験、性能評価の取得といったプロセスを着実に踏むことが不可欠です。
今後も技術開発や法規制整備が進むことで、木造建築の耐火性能と持続可能性の両立が実現し、都市部を中心とした中層木造建築のさらなる普及が期待されます。
地球環境や居住者の安全に配慮した建築を目指す上で、リグニンベース難燃剤処理OSBは大きな役割を果たしていくでしょう。