家具用難燃繊維のLOI測定と燃焼試験比較

家具用難燃繊維のLOI測定と燃焼試験比較

家具用難燃繊維の役割と必要性

家具は私たちの生活空間における安全性に大きく関わるアイテムです。
特に、コンセントや暖房器具など火の元がある場所では家具の燃えやすさが事故や火災につながる可能性があります。
そんなリスクを低減するために登場したのが難燃繊維です。
難燃繊維を用いた家具生地は火の広がりを抑制し、被害や人的損傷を最小限に抑えることが期待されています。
難燃性能の評価方法にはさまざまな手法がありますが、代表的なものとしてLOI(限界酸素指数)測定と燃焼試験があります。

限界酸素指数(LOI)とは何か

LOI(Limited Oxygen Index: 限界酸素指数)は、繊維やプラスチックなどの材料が燃焼し続けるのに必要な最低限の酸素濃度を示します。
この値は体積比で表され、ISO 4589やASTM D2863といった国際規格にも規定されています。
LOI値が高いほど、その材料は燃えにくい、すなわち難燃性が高いと判断できます。

LOI測定の基本原理

LOI測定は、特別なガラス管内で試料を立てて設置し、そこに窒素と酸素を混合したガスを流します。
点火後、試料が自発的に燃焼し続けることができる最低の酸素濃度を探り、その酸素比率をLOI値とします。
例えばLOIが21であれば、通常の空気中(酸素濃度約21%)で燃焼が続くことを意味します。
一般にLOIが26以上あれば「難燃」とされます。

家具用繊維に求められるLOI値

家具用繊維、生地の場合、火災に対する安全性が必須ですので、LOI値がかなり高いものが要求されます。
多くの場合、LOIが26~28以上であれば、厳しい安全基準をクリアできます。
自治体や国ごとに違いはありますが、公共施設やホテル、鉄道・航空関連のインテリアにはさらに高いLOI値が求められるケースもあります。

燃焼試験による性能評価

LOI測定に加えて実際の環境下により近い「燃焼試験」も重視されています。
これは、規定の条件で繊維を点火し、その燃え方、火の広がり、自己消火性、発煙性などを総合的に評価するものです。
主な燃焼試験には以下のようなものがあります。

垂直燃焼試験

繊維試料を垂直に吊るし、下部または上部から炎をあてます。
火が上方にどの程度広がるか、消火されるまでにかかる時間、炭化長(焼け残りの長さ)などを観察します。
家具用繊維ではこの垂直燃焼試験が特によく利用され、一定以上の炭化長や燃焼時間の場合は合格と見なされません。

水平燃焼試験

試料を水平に設置し、片方の端から点火します。
炎の伝播速度や自己消火性を評価します。
軽微な火花、タバコの火などへの耐性確認に適しています。

マッチフレームテスト、シガレットテスト

これは実際の家具使用環境を想定し、小さな火源(マッチやタバコ)を用いて繊維表面に接触させ、燃え広がりや自己消火を観察する試験です。
特に欧米では家具の着火源としてタバコ火種を想定した規格テストが主流です。

LOI測定と燃焼試験の比較

LOI測定と燃焼試験は、いずれも繊維の難燃性評価には必須ですが、両者には明確な違いがあります。

定量性と現場適合性

LOI測定は「何%の酸素下で燃焼し続けるか」という明確な数値が得られるため、客観的な難燃性の指標となります。
一方、燃焼試験は種々の現実的な着火状況を模した試験のため、実際の事故リスクに近い評価結果が得られます。

材料設計・品質管理への活用

LOI値は主に素材レベル、つまり糸や布の段階での難燃性評価や配合設計の指標に役立ちます。
大量生産される家具用生地では、ロット毎のバラつき管理にもLOIは有効です。
一方で、完成品状態では燃焼試験の方が、実装時の性能確認に役立ちます。
例えば、縫製部や発泡ウレタンとの組み合わせなど、実使用状態での難燃性を厳格に判断できます。

規格・認証制度との関係

各国の家具関連法規や消防法・省令では、LOIまたは燃焼試験のいずれか、もしくは両方を規格適合の要件としています。
日本のJIS規格、欧米のBSやEN(英国規格・欧州規格)、米国のNFPAなど、いずれも厳密な評価方法を設定しています。
これに適合しない場合、流通・販売ができないケースもあります。

繊維の難燃化手法と難燃性の維持

家具用繊維には多様な難燃化技術が使われています。
主な方法としては、難燃成分を原料段階で練り込む「難燃ポリマー法」、後加工として繊維表面に難燃剤を塗布・含浸する「後加工法(後処理法)」があげられます。

ポリマー段階での難燃化

ポリエステルやアクリルなどの合成繊維に難燃モノマーやリン・ハロゲン化合物を化学結合させることで、繊維の根本構造から難燃性を高めます。
この方法は耐久性や洗濯堅牢度の面で優れており、LOIも比較的高値になります。
一方、コストが高く、一部の添加物は環境規制が厳しくなる傾向もあります。

後加工(後処理)による難燃化

既存の繊維に難燃剤を含浸したり、樹脂バインダーで表面コーティングしたりする方法です。
比較的低コストで短期間に大量生産が可能で、家具用途にも幅広く使われています。
ただし、使用や洗濯により性能が低下しやすく、LOIや燃焼試験での性能が一様でない場合があります。

難燃性能の維持と経年変化

特に後加工品では、摩擦・湿気・洗濯など、家具使用環境下で難燃性能が低下しやすいという問題があります。
定期的な性能評価や、仕様書レベルでのLOI・燃焼試験による定期チェックが重要です。

家具用難燃繊維の今後と展望

火災事故による人命・財産被害の減少のため、家具用難燃繊維は今後も発展が期待されます。
環境負荷が少なく、安全性が高い難燃剤やバイオ系ポリマーの開発も進行中です。
また、国際的な規格統一が進めば、よりグローバルな安全基準に基づいた安心・安全な家具が流通するでしょう。

消費者やメーカーが知っておくべきポイント

家具を選ぶ際は、単に「難燃」表記だけでなく、LOIや燃焼試験の基準値や、どの規格に適合しているかも確認することが重要です。
メーカー側も透明性の高い情報開示や、定期的な第三者機関による評価を推進することが、今後の信頼性向上につながります。
難燃性能は、繊維自体だけでなく、芯材やクッション材、設計全体でのバランスもポイントとなるため、全体最適化が求められます。

まとめ

家具用難燃繊維の難燃性評価には、LOI測定と燃焼試験という二つの主要なアプローチがあります。
それぞれが科学的かつ実用的観点から安全性を担保するものです。
今後も、技術革新や法規制の変化を踏まえつつ、LOIおよび燃焼試験による徹底した品質管理が、持続可能な「安全な住環境」につながるといえるでしょう。

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