家具用難燃布地のLOI値測定と難燃薬剤処理比較
家具用難燃布地のLOI値測定とは何か
家具に用いられる布地は、美観や快適さだけでなく、安全面でも高い性能が求められます。
特に、火災時のリスク軽減のために難燃性布地の使用が推奨されています。
難燃性評価の指標として、LOI値(Limiting Oxygen Index:限界酸素指数)が世界的に使われています。
LOI値とは、材料が燃焼を維持するのに必要な最小酸素濃度をパーセントで示した値です。
この値が高いほど、その材料が空気中(約21%の酸素)で燃えにくいことを意味します。
家具用布地の場合、特に室内で使用されることから、標準大気での安全性の基準としてLOI値が重要視されています。
難燃布地のLOI値の測定方法
難燃布地のLOI値は、ASTM D2863やJIS K7201など、国際規格に基づいた方法で測定します。
一般的なLOI値測定の手順は以下の通りです。
試料準備
測定する布地を標準寸法(一般的には幅50mm、長さ150mm)に裁断します。
試験片にほこりや油分などが付着していないことを確認します。
測定装置の準備
専用のLOI測定器を使用します。
測定器には酸素と窒素の混合ガスを供給し、その混合比を調整できる仕様です。
テストの実施
試験片を垂直にセットし、下端に点火します。
一定時間、自立燃焼が続く酸素濃度と、燃焼が維持できなくなる限界の酸素濃度を測ります。
これを数回繰り返して平均値をLOI値とします。
LOI値基準の適用
一般的に、LOI値が21%以下の場合、その布地は空気中で容易に燃焼するため、標準的な用途では燃焼リスクがあります。
LOI値が26%以上であれば、難燃性能が高いと評価されます。
家具用難燃布地としては、少なくとも24%以上(できれば26%以上)が求められます。
難燃薬剤による処理方法の比較
家具用布地を難燃化する主な方法は、難燃薬剤処理です。
難燃薬剤にはさまざまなタイプがあり、それぞれに特徴と適用方法があります。
代表的な難燃薬剤処理について、特性やLOI値への影響を比較解説します。
ハロゲン系難燃剤
ハロゲン系難燃剤は、燃焼時にハロゲン化水素を発生させ、燃焼連鎖反応を抑制します。
このタイプの難燃剤は、低濃度でも高い難燃性を発揮しやすいです。
利点は高い難燃性とコストパフォーマンスですが、燃焼時に有害なガスが発生しやすいため、現在では推奨されない場合が増えています。
LOI値は27〜30%程度まで上昇することが多いです。
リン系難燃剤
リン系難燃剤は、燃焼時に炭化層を形成することで、酸素供給と熱伝達を遮断します。
加工布地の物性や風合いを損なわずに、難燃性付与が可能なため、近年主流となっています。
燃焼ガスも比較的無害で、EU-RoHS指令などの規制にも適合しやすいです。
適切に処理すればLOI値を28〜32%程度まで高めることができます。
ホウ素系難燃剤
ホウ素系は燃焼抑制・発泡抑制効果があり、綿や天然繊維に特に適しています。
毒性が低いのが特徴で、再生繊維や天然布地に用いるとLOI値を26〜29%程度に高められます。
無機系難燃剤
水ガラス(ケイ酸ナトリウム)やアルミナ、ハイドレートなどを用いた無機系難燃剤処理は、耐熱性・耐煙性に優れています。
ただし、加工後の布地が硬くなりやすい、風合いへの影響が課題です。
LOI値は25〜28%前後が目安です。
繊維自体の難燃化
最近では原料のポリエステルやアクリルに難燃化剤を共重合し、繊維自体に難燃性をもたせる方法も普及しています。
この場合、洗濯や摩耗による難燃剤流出がなく、長期的に安定したLOI値(28〜32%程度)が得られます。
LOI値測定結果と難燃薬剤処理の実例比較
難燃布地開発の現場では、処理方法ごとにLOI値を測定し、目的やコスト、環境性能と照らし合わせて最適な難燃化手法を選択します。
ある国内メーカーの実施例を示します。
A社:綿100%布地の難燃化比較
処理方法1:ハロゲン系難燃剤処理
LOI値29%(JIS K7201)、布地の光沢減少・やや風合い硬化
処理方法2:リン系難燃剤(ホスファート型)処理
LOI値31%、風合い保持、微臭発生なし
処理方法3:ホウ素系難燃剤処理
LOI値28%、吸湿性上昇、風合い変化少
処理方法4:無処理(参考)
LOI値18%、空気中で容易に燃焼
このように、リン系やホウ素系剤は高いLOI値と同時に布地の質感も維持しやすいことが分かります。
B社:ポリエステル繊維自体の難燃化例
共重合難燃ポリエステル糸100%布地
LOI値32%、300回洗濯後も値が維持
難燃剤の溶出や飛散がなく、永続的に難燃性を持続
この方法はコストや原糸調達に課題があるものの、医療・公共施設向け高難燃グレード布地には最適です。
難燃布地選定のポイントと今後のトレンド
難燃布地を選定する際、LOI値だけでなく環境規制、価格、布地の用途、風合いや耐久性も重要な評価項目です。
欧州や日本では、ハロゲン系難燃剤の排除や安全規制が強化され、リン系・ホウ素系にシフトしています。
またリサイクル原料を積極活用した新しい難燃繊維も登場しています。
家具用では、洗濯や日常使用による劣化が少ない難燃化方法(繊維自体の難燃化、あるいは仕上げ加工の高度化)が注目されています。
また測定面でも、LOI値に加え煙の発生量や毒性評価、経年劣化後のLOI値も検討する動きが強まっています。
まとめ:家具用難燃布地のLOI値と難燃薬剤処理の最適化
家具用難燃布地の安全性を客観的に比較する際、LOI値測定は不可欠な指標です。
難燃薬剤の選択や処理方法により、LOI値や布地の仕上がりは大きく異なります。
使用する場所や用途、求められる安全性能、環境規制への適合、風合い・耐久性を考慮し、最適な難燃化手法を選定することが重要です。
今後も持続可能で高性能な難燃布地技術が進化することが期待されています。