糸の油剤残りが縫製時トラブルを招く地味に重い問題
糸の油剤残りが縫製時トラブルを招く地味に重い問題
縫製工場やアパレル業界では、目立たないものの深刻な問題として「糸の油剤残り」が挙げられます。
一見、糸の表面を保護しミシンの滑りを良くする目的で使われる油剤ですが、これが残留することで思わぬ縫製トラブルの原因となります。
この記事では、糸の油剤残りがどのような問題を生み出すのか、その影響や対策について詳しく解説します。
糸の油剤とは?役割と必要性
油剤の基本的な役割
糸の油剤は、繊維が糸になる過程や、その後の縫製工程で主に使用されます。
糸の摩擦抵抗を下げて切れにくくし、ミシンの高速運転時にも滑らかに糸が送り出されるようにするのが主な目的です。
また、静電気の発生を抑えたり、毛羽立ちを抑制して糸切れや縫い目の美しさを保つ役割を果たします。
なぜ油剤残りが問題になるのか
もともと油剤は、最終的には洗浄や熱処理などの工程で除去されることを前提に使われています。
ところが、この油剤が十分に除去されず糸に残ったままだと、後工程でさまざまなトラブルを引き起こします。
この「地味だけれど重い」問題点に、多くの現場担当者が悩まされているのです。
油剤残りによる具体的な縫製時トラブル
ミシントラブルの多発
ミシンでの縫製時、油剤残りが多いとミシンの針や送り部分に油分が移ってしまいます。
これにより、送り歯や針周辺に糸くずやホコリが付着しやすくなり、頻繁な糸切れや目飛び、糸滑りの悪化を誘発します。
結果として生産性が低下し、余計なメンテナンスが増えてしまいます。
縫製不良による品質問題
油剤が残った糸は、その油成分が生地に染み込む場合があります。
特に淡色や薄手の生地を縫製する場合、油ジミとして表面に現れることがあり、製品クレームに直結します。
また、熱処理やプレス工程で油分が拡散し、全体的に汚れた印象になってしまうこともあります。
染色・仕上げ工程への悪影響
後染めや仕上げ加工が施される場合、糸の油残りがあると染料が弾かれてムラになったり、特殊仕上げ加工が均一にならないケースも起こります。
これも最終的な製品価値を大きく下げてしまう原因です。
油剤残りのメカニズムと原因
製造工程での油剤残留
糸メーカーは糸を製造する過程で、紡績、撚糸、ワインディングなど各工程ごとに油剤を添加します。
本来、最終工程で油分を取り除く洗浄が行われますが、コスト削減や洗浄不足、油剤の過剰塗布が原因で油剤が取りきれず残留する場合があります。
保管・輸送時の問題
糸が保管、輸送される際にも外気温や湿度の影響で油が変質し、べたつきやダマになって糸表面に固着してしまうことがあります。
長期間在庫された糸には特にこの傾向が強くなります。
環境規制や成分変更も影響
環境配慮の観点から油剤成分を変えた場合、従来の洗浄方法では十分除去できず新たな油剤残り問題を生むことがあります。
SDGsや環境ラベル対応が進む今、思わぬところで不都合が表面化しやすくなっています。
油剤残り問題を放置するとどうなるか
検品やクレーム対応のコスト増加
製品完成後に油ジミやミシントラブルが見つかった場合、再縫製や染み抜き、納期遅延への対応で多大な手間とコストが発生します。
これが繰り返されると企業の信頼低下につながるおそれもあります。
現場作業者のストレス増加
原因が見えにくいトラブルが頻発すると、ミシンオペレーターや管理者のモチベーションや作業効率が落ちてしまします。
「いつもと同じ手順なのにトラブルが出る」「なぜか糸が切れやすい」と感じると、現場が不満を抱える要因となります。
ブランド価値の毀損
消費者は見た目に敏感です。
油ジミや縫製不良が最終製品に残れば、ブランドの品質イメージは大きく損なわれます。
SNSやネット通販が一般的になった現代では、こうした小さなミスでも一気に評判を落としかねません。
油剤残り問題への具体的な対策
仕入れ段階での品質確認
糸仕入れ時にはロットごとに油残りや汚れの有無をしっかり確認することが大切です。
油ジミやべたつきを感じたら、メーカーに問い合わせたり、サンプルテストを実施するのが有効です。
前処理の導入
必要に応じて糸を事前に精練・洗浄してから縫製工程に回すことで、油分を減らすことができます。
特に高級アパレルや厳しい品質管理が求められる現場では、前処理ラインの導入も視野に入れましょう。
縫製現場の油剤管理の徹底
ミシンのメンテナンスや針、送り歯などの定期的な清掃を徹底し、油分やホコリが溜まりにくい環境づくりを行います。
また、縫製前に糸をウエスで軽く拭き取る工程を加えるだけでも効果が出ます。
糸メーカーとの情報共有・改善
油剤残りがトラブルにつながった場合、糸メーカーと原因を共有し、使用油剤や洗浄工程の見直しを依頼することも重要です。
持続的な情報交換を通じて、より品質の高い糸供給体制を築きましょう。
作業者への教育・意識改革
ミシントラブルや油ジミが起きた時、「製品や材料の問題」の可能性も考える視点を持たせる教育が大切です。
作業者自身が小さな変化に気づきやすくなり、早期に問題を食い止めることが可能になります。
糸の油剤残り問題が再注目される背景
高品質・高付加価値製品へのシフト
アパレル産業では、機能性・高級感・デザイン性が求められる時代にシフトしています。
その分、糸の僅かな違いが製品価値を左右するため、油剤残り問題の影響が大きくなっているのです。
人手不足・省力化との兼ね合い
省力化・自動化が進む現場では、人が気づいていた些細な問題がスルーされがちです。
小さなトラブルが放置され、まとめて大きなロスを生む構造になってきています。
持続可能性への配慮
環境規制による化学薬品の見直し、バイオ由来油剤の普及など、これまでと違うアプローチによる新たなトラブルも生まれています。
今後この問題はさらに複雑化する可能性があります。
まとめ:糸の油剤残り問題を侮らない対応が鍵
糸の油剤残りによる縫製時トラブルは、地味で見過ごされがちなテーマですが、深刻な品質問題やコストロスに繋がる重大なリスクをはらんでいます。
縫製現場の最前線から、材料管理・機器メンテナンス・メーカー連携・現場教育まで、多角的な対策が求められます。
最終製品の美しさやブランド価値を守るために、糸の油剤残りという見えない敵への備えを怠らず、確実に品質管理を徹底していくことが肝要です。