高粘度樹脂の取り扱いが人手に依存する属人化問題
高粘度樹脂の取り扱い現場における属人化とは
高粘度樹脂は、主に電子部品や自動車、建設など幅広い産業分野で用いられる重要な材料です。
その物理特性ゆえ流動性が低く、取り扱いや工程において専門的な知識や経験が必要となります。
このため、多くの現場で“属人化”という問題が浮上しています。
属人化とは、特定の作業を特定の個人しかできない、またはできる人が極端に限られている状態です。
このような状況はミスの温床となり、作業効率の低下やトラブルの原因となるだけでなく、品質安定や人材育成の面でも大きな課題をはらんでいます。
高粘度樹脂の取り扱いが属人化する背景
扱いの難しさとノウハウの蓄積
高粘度樹脂は非常に流動性が低いため、粘度に合わせた加圧、加熱、撹拌、または気泡除去など、緻密な作業が必要となります。
そのため、現場では長年経験を積んだベテラン作業者がリーダー的役割を果たすことが多く、新人や若手社員には取り扱いが難しいと感じられることも少なくありません。
結果として、ノウハウが特定個人に蓄積しやすく、作業の標準化や共有が進まない現場も多数存在します。
マニュアル化の難しさ
樹脂の種類や特性、加工品の要求精度、温度や湿度など、多くの工程変数が絡み合うため、現場では実感と勘に頼ったオペレーションとなってしまう場合があります。
こうした“暗黙知”が多い業務は、マニュアル化や標準化の難易度が高いです。
その結果「この人でないとうまくいかない」といった属人化が進みやすくなります。
属人化によるリスクと弊害
品質や生産性への悪影響
高粘度樹脂の取り扱いでミスが発生すると、混入異物発生や配合ミス、気泡の混入、不十分な撹拌による品質低下などに直結します。
属人化により、作業のムラが発生しやすくなり、最終的な製品品質のばらつきにつながります。
また、生産性についても、担当者が限定されるためにシフト制の導入や急な休務の際に対応できないなど、現場運営に大きな支障をきたすリスクがあります。
人材育成と継承の停滞
属人化が進行すると、作業ノウハウが特定個人に集中し、「その人がいないと分からない」といった状態が固定化されます。
結果として若手育成が進まず、最悪の場合、担当者の異動や退職による技術の突然消失が起こります。
これは、中長期的な企業の競争力低下に直結する深刻な問題です。
事故や労働災害のリスク増大
高粘度樹脂は、取り扱い時に圧力をかけたり高温にしたりと、一定の危険が伴う作業です。
安全面においても熟練者頼みとなっている場合、イレギュラーなトラブル時に適切な対応が取れず、事故や怪我につながるリスクが高まります。
高粘度樹脂の属人化を解消するための方策
作業の標準化・マニュアル化
まず重要なのは、現場で行われている全ての作業工程を抜け漏れなく詳細に可視化し、マニュアルとしてまとめることです。
具体的には、材料の取り出し方、設備への投入手順、加熱・加圧設定、撹拌時間の目安、不良発生時の対処方法まで、写真や動画を交えてビジュアル化します。
これにより、未経験者でも理解・再現しやすい環境を整えます。
教育・トレーニングプログラムの導入
最低限の知識から現場での実践までを体系立てて学習するためのトレーニングプログラムを策定し、若手作業者へ教育を徹底します。
OJTだけでなく、座学や実技研修、eラーニング、定期的な技術コンテストなど、モチベーション維持と技術定着支援が重要です。
ベテラン社員からの講話や、失敗事例の共有も有効です。
設備自動化・デジタル化の推進
可能な範囲で、取り扱いプロセス自体を自動化・省人化することも属人化解消の強力な手段です。
たとえば、自動撹拌・自動分注機や真空脱泡装置の導入、IoTを活用した樹脂温度・粘度の管理システム導入などにより、人的依存度を下げます。
工程データを自動収集・蓄積することでトラブル時のフィードバックや工程改善も促進されます。
現場コミュニケーションの活性化
ノウハウの属人化を防ぐには、現場内の情報発信を定期化・仕組み化することが欠かせません。
例えば、「気づきシート」や「ヒヤリハット共有ミーティング」「工程レビュー報告会」などを設け、全員が自発的に経験知をオープンにできる風土を作ります。
こうした環境が、知識や経験の共有を促進し、組織としての“強い現場力”を育みます。
最新事例から見る属人化解消の取り組み
大手電子部品メーカーのデジタル活用
ある大手電子部品メーカーでは、樹脂取り扱い工程のタブレット管理・データベース化により、各フローの進捗や異常検知をリアルタイムで可視化しました。
トレーニング動画や手順書も現場で即座に確認できるため、経験の浅い作業員でも即戦力として稼働しやすくなりました。
結果、工程ミスや手戻り作業が大幅に減り、生産性が飛躍的に向上した事例があります。
中堅工場でのベテランOJT強化
中小規模の工場では、属人化がより顕著です。
ある部品メーカーでは、ベテラン作業者に“技師”のポジションを与え、若手担当者に対して定期的な体験型指導や失敗事例のロールプレイを実施。
さらに、この事例では失敗できる「シミュレーション材料」を用意し、若い人にも安心して失敗経験を積ませる工夫を導入しました。
これにより、若手のスキル習得スピードが格段に向上しました。
今後の課題と展望
高粘度樹脂は今後さらに用途が多様化し、高付加価値かつ難易度の高い材料としての重要性が増します。
それに伴い、現場ではより高度な取り扱い技術が求められる一方、労働人口減少や熟練者の高齢化も避けられません。
属人化解消のためには、さらなるデジタル技術の活用や教育体制の進化、ひいては業界全体でのノウハウプールの試みが必要となります。
また、AIや機械学習を組み合わせた最適工程管理、遠隔支援・技術ナレッジの自動収集など、属人化を根本から覆す新たな手段の研究・導入も検討されています。
まとめ:高粘度樹脂取り扱い現場の属人化は一刻も早く解消を
高粘度樹脂の取り扱いにともなう属人化問題は、生産現場の品質・生産性の持続的向上を阻む大きな壁です。
作業の標準化、教育体制の強化、デジタル化・自動化の推進、現場風土の醸成など、多角的な取り組みが不可欠です。
現場の責任者・経営層は今こそ属人化のリスクに真剣に向き合い、競争優位の根幹である“安定した現場力”を再構築しましょう。