改質PTTハニカム芯材とエアタクシー機体音共振低減

改質PTTハニカム芯材とは何か

改質PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)ハニカム芯材は、航空宇宙分野を中心に近年注目されている新素材です。
PTT自体はポリエステルの一種で、ペットボトルなどに使用されるPET(ポリエチレンテレフタレート)と化学的に似ていますが、より優れた弾性や耐久性があります。
このPTTに改良(改質)を加え、六角形の蜂の巣(ハニカム)状に成形したものが「改質PTTハニカム芯材」です。

ハニカム構造は軽量かつ高剛性で、力が加わった場合に外部からの衝撃や振動を効率的に分散します。
従来のハニカム材にはアルミやノーメックス(アラミド紙)が多く使われてきましたが、PTTハニカムはそれらに比べ軽量で高い耐熱性・難燃性・吸音性を持ち、加えて環境負荷も低減できる点で優れています。

エアタクシー機体と共振音の課題

都市型モビリティや次世代交通システムとして、エアタクシー(空飛ぶクルマ)への関心が高まっています。
エアタクシー機体は小型・軽量を追求するために複合材料やハニカムパネルが多用されますが、その一方で、「機体共振音」への対策が重要な課題となります。

機体共振音とは、エンジンやローターの回転、風圧や突発的な揺れによって機体構造全体が共鳴し、不快な騒音や微振動を発する現象です。
このような音や振動は、乗員の快適性や安全性、さらには都市部での騒音規制にも大きく影響します。

従来の素材では、軽量化と遮音性・吸音性の両立が難しく、設計者は常にトレードオフに悩まされてきました。

改質PTTハニカム芯材がエアタクシー機体音共振を低減する理由

改質PTTハニカム芯材は、軽量化と強度はもちろん、優れた音響対策性能を持つことでエアタクシー開発のブレイクスルーとなっています。

高い内部損失による振動エネルギー吸収

PTT樹脂はもともと柔らかさと弾性率を両立させた素材であり、内部分子の動きにより機械的な振動エネルギーを熱エネルギーに変換できます。
そのため、ハニカム構造にした場合、パネル全体に伝播する振動や共振現象を効率よく抑制できます。
従来の樹脂や金属ハニカムと比較して、広いレンジで高い内部損失(ダンピング能力)を示します。

空隙構造による優れた吸音性

ハニカム構造内の多数の空洞は、音波が通過する際に乱反射し、音エネルギーも吸収します。
PTT樹脂は微細なセル構造を安定的に保ち、表面の損失係数を高める独自の改質がなされています。
これにより、機体内外の騒音・共振音を減衰させ、静粛性が向上します。

パネル構成と機体強度のバランス

エアタクシーの機体には、外皮と内張りの間にハニカム芯材をサンドイッチ構造で挟み込む設計が多用されています。
この中心材に改質PTTハニカムを使うことで、金属や他の樹脂では重くなってしまう部分を大幅に軽量化しつつ、同時に振動抑制や吸音性能を高めることが可能です。

改質PTTハニカム芯材の具体的な性能データ

改質PTTハニカム芯材の性能を具体的に示すと、以下のような特徴があります。

音響損失係数

共振点(100~1,000Hz)における音響損失係数(damping loss coefficient)は0.1以上を示すことが多く、アルミや従来の樹脂ハニカムの約2~4倍のダンピング性能が確認されています。

吸音率(NRC)

セル径や厚み調整により、騒音に多い中低音(500~2,000Hz)でNRC(Noise Reduction Coefficient)0.5以上も実現でき、航空機材として極めて優れた吸音性を持ちます。

比重と強度

比重はおよそ0.035~0.06と、金属ハニカムの10分の1程度に抑えつつ、曲げや圧縮強度も航空認証基準を満たしています。
難燃性もUL94 V-0相当の改質が可能です。

開発事例:エアタクシー機体への実装と成果

実際のエアタクシー開発現場で、改質PTTハニカム芯材が導入された事例が増えています。
ある国産eVTOL(電動垂直離着陸機)では、キャビンパネルの内装や床パネル、バルクヘッドにこの芯材が用いられています。

この機体では、改質PTTハニカム材を使用することで、従来比20%の重量削減、そして機内騒音レベルで5dB以上、特に共振帯(600~1,500Hz)で最大12dBの騒音低減効果が報告されました。
乗降時や巡航中の快適性の向上、パイロットの疲労低減にも寄与しています。

また、パネル自体が軽いため、バッテリー・ペイロード積載量の拡大や航続距離の延長にも直結し、経済的メリットも得られます。

将来展望と今後の課題

改質PTTハニカム芯材は、今後さらに改良が進むことで、より幅広いエアタクシー機体や航空モビリティへの採用が期待されています。
次のような展望が現実的です。

3Dプリントや複雑形状部材への応用

樹脂改質技術と3Dプリント技術を組み合わせれば、従来困難だった異形・複雑形状部材への適用が加速します。
これにより室内インテリアや、小型ドローン部品への拡大も期待されます。

リサイクル性・サステナビリティの強化

PTT自体は再資源化が比較的容易な樹脂です。
より環境負荷を抑えた生産・回収の仕組み構築も進んでおり、エコロジカルな次世代機体素材として注目されています。

コスト低減の取り組み

現在は高性能ゆえコストが課題ですが、大量生産体制の整備や原材料調達の最適化により、今後は従来ハニカム材並みの費用対効果も実現可能です。

まとめ

改質PTTハニカム芯材は、軽量性・高強度・耐熱性・難燃性・リサイクル性だけでなく、機体やキャビンの共振音・騒音を劇的に低減できる抜群の吸音・振動減衰性能を持っています。

エアタクシーの今後の普及や、安全・快適で静かな空飛ぶクルマ社会の実現には、このような新素材の積極的活用が不可欠です。
機体設計の最先端現場だけでなく、都市交通インフラや未来の自動車・電動モビリティなど、多様な分野でのイノベーションに寄与していくことは間違いありません。

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