再生セルロース繊維を用いたシャツ素材の吸放湿性能評価

再生セルロース繊維は、天然由来の素材でありながら、化学的なプロセスを経て繊維化されるため、持続可能性や環境負荷低減といった観点から注目されています。
中でもシャツ素材として利用する際には、吸放湿性能が着心地や快適性に大きく影響を及ぼします。
ここでは、再生セルロース繊維を用いたシャツ生地の吸放湿性能ついて、繊維の特徴や試験評価方法、他繊維との比較、素材設計のポイントなどを詳しく解説します。

再生セルロース繊維とは

再生セルロース繊維は、木材パルプや綿リンターなどの天然のセルロース資源をアルカリ処理と溶解、再形成を行うことで作られる化学繊維の一種です。

代表的な品種には、レーヨン、モダール、リヨセルなどがあります。
繊維断面の形状や微細構造は製造工程で調節できるため、実用面で多様な特性を付与することが可能です。

再生セルロース繊維は、人の皮膚へのなじみやすさや、天然由来のやわらかな風合いを持ち合わせ、着心地の良さや吸湿性で優れます。
そのためシャツや下着、寝具など直接肌に触れるアイテムに広く利用されています。

繊維構造と吸放湿性能の関係

セルロース分子は、多数の水酸基を有しており、この水酸基が周囲の水分子と水素結合しやすい性質を持っています。
この仕組みにより、再生セルロース繊維は空気中の水蒸気を吸着・保持しやすく、また周囲の湿度環境によって繊維に含まれる水分量を適切に調整することができます。

また、繊維内部には微細な空隙や親水性領域が多く存在しているため、吸湿・放湿サイクルが極めてスムーズに進行しやすいという特徴があります。

このため、再生セルロース繊維の衣服は、体から発生する水蒸気(汗など)を素早く吸着して不快なべたつきを抑え、肌側をドライに保ちやすいといえます。

シャツ素材に求められる吸放湿性能

シャツ素材における吸放湿性能は、着用快適性や肌触りに直結する重要なファクターです。

夏場は汗を多くかくため、吸湿性に優れた素材が必要となり、冬場は衣服内の湿気を適度に制御することでムレの防止や寒暖バランスの調整にもつながります。

再生セルロース繊維を用いたシャツは、
– 高い吸湿性と速乾性
– 肌面での適度なドライ感
– 衣服内温度や湿度の均一化
など、日常着として求められる快適性能をバランスよく満たすことが期待できます。

吸放湿性能の評価方法

再生セルロース繊維を用いたシャツ素材の吸放湿性能は、複数の評価指標や試験法があります。

吸湿率の測定

代表的な方法としてJIS規格やISO規格に準拠した「標準吸湿率」の測定があります。
一定湿度下で試料の重量増加量をもって吸湿率を算出し、素材自体の親水性や水蒸気吸着能を評価します。

放湿(乾燥)速度の測定

ウェット状態から所定の温湿度環境下での重量減少を追跡し、単位時間当たりの水分蒸散量や全乾燥までの時間を指標として放湿性を評価します。

衣服内湿度変化のシミュレーション

着用を模擬した条件下で、シャツ生地越しの湿度・温度変動を測定し、着用快適性に直結する生地性能を解析する方法も採用されています。
マネキン装着試験や人工汗を用いたダミー評価なども行われます。

吸放湿性能の他繊維との比較

再生セルロース繊維を主なシャツ用素材であるコットン(綿)やポリエステルと比較すると、その吸放湿特性の違いが明瞭に現れます。

コットンとの比較

コットンも天然由来のセルロース繊維であり、高い吸湿性を有しています。

しかし、コットンは繊維内部の空隙構造が比較的大きく、吸水した水分が繊維内部まで沁み込むため「保水性」がやや高くなります。
このため吸水後の乾燥速度は、再生セルロース繊維にやや劣る傾向にあると報告されています。

また、再生セルロース繊維では工業的に微細構造を調整できるため、吸放湿のバランスを最適化しやすいメリットがあります。

ポリエステルとの比較

ポリエステルは合成繊維の代表であり、親水性が低く素材自体の吸湿性は非常に小さいです。

そのためポリエステル100%のシャツは、汗をかいた際に水分が素材内に吸収されず、汗冷えやムレ感の原因となることもあります。

一方、再生セルロース繊維は吸放湿性が高いため、こうした衣服内の「湿度ムレ」を効果的に軽減し、夏でも冬でも快適な着用感をもたらします。

再生セルロース繊維シャツの吸放湿性能向上のためのポイント

再生セルロース繊維シャツの吸放湿性を高めるためには、次のような工夫・設計ポイントが考えられます。

繊維形状・微細構造の改良

断面の多孔質化や表面積増加、繊維径の細化などを通じて、より多くの親水部位や空隙構造を持つ繊維設計が有効です。

リヨセルやモダールなどでは、最新技術で均一な微細多孔構造やナノファイバー化が進められており、吸湿性や速乾性の向上に寄与しています。

交編・混紡による機能バランス

コットンや抗菌ポリエステルなど他繊維との交編・混紡による糸設計も、シャツ素材の吸水性・速乾性・耐久性を高次元で両立させる方法です。
再生セルロース繊維を芯に用い、その周囲を異なる機能繊維でカバーするなどの複合構造ヤーンも開発されています。

生地設計での工夫

薄手で通気性の高い平織やメッシュ構造、ピケやオックスフォードなど用途に応じた組織設計も吸放湿性の調節には重要です。

また、吸水拡散仕上げや抗菌防臭加工などの後加工も、着用時の快適性向上につながっています。

最新の研究動向とシャツ用素材への応用

繊維産業やアパレル分野では、サステナビリティへの意識がより高まる中、再生セルロース繊維の新たなシャツ素材開発が活発に進められています。
最近では、下記のような技術革新が注目されています。

– ナノテクノロジーを用いた高機能セルロースファイバーの開発
– 生分解性改良による環境配慮型素材化
– 染色性や抗菌性を付与したハイブリッド繊維の実用化
– フィラメント繊維化による耐久性・高級感向上

これらの技術を組み合わせることで、「肌に心地よく」「衣服内環境をいつも快適に保つ」シャツ素材の実用化が急速に広がっています。

消費者にとってのメリットと今後の展望

再生セルロース繊維を使ったシャツは、吸放湿性が高く、毎日の生活で“ムレ”や“べたつき”に悩まされることなく快適に過ごせるという大きなメリットがあります。
天然繊維に比べてシワになりにくく、耐久性やお手入れのしやすさでも優れています。

また、原料が森林資源である点や製造工程の環境負荷低減、廃棄時の生分解性などサステナブルな素材として選択されている点も消費者支持を高めています。

今後も、機能拡充やファッション性の向上、多様な生地バリエーションの開発が進み、再生セルロース繊維シャツの「吸放湿性」を活かした先進的なウェアが続々と登場すると予想されます。

まとめ

再生セルロース繊維は、吸放湿性や肌触りの良さ、環境調和性で大きな注目を浴びており、シャツ素材としてその高機能性は極めて実用的です。

吸放湿性能の正しい評価や他繊維との比較、素材や生地設計の工夫などを通じて、消費者の快適性向上とサステナブル社会の実現に寄与することが期待されています。

今後も技術改良や用途拡大が進み、さらなる進化を遂げていくことでしょう。

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