塗料の乾燥縮みが発生し膜厚が乱れる根深い問題

塗料の乾燥縮みが発生し膜厚が乱れる根深い問題とは

塗装工程において塗料の「乾燥縮み」は、多くの現場で発生している深刻な問題です。
乾燥縮みによって膜厚が乱れ、設計通りの性能が得られなくなったり、仕上がりが不均一になったりします。
この課題は単純な塗りムラではありません。
なぜ乾燥収縮が発生し、膜厚が乱れるのか、その根本原因や対策方法を取り上げて解説します。

塗料の乾燥縮みとは何か

乾燥過程での体積変化

塗料は溶剤や水などの揮発成分と、樹脂や顔料などの非揮発成分から構成されています。
塗装後、乾燥の過程で溶剤が蒸発し、塗膜中の体積が減少します。
これを乾燥収縮または乾燥縮みと呼びます。

本来、適正な設計と正しい施工が行われていれば、乾燥縮みはある程度想定範囲内で収束します。
しかし、乾燥収縮率が高すぎる、あるいはその程度が局所的に異なることで、塗膜の厚みが不均一になりやすくなります。

塗膜厚さの乱れとの関係

乾燥縮みが起こると、塗膜本来の設計膜厚よりも薄くなることがあります。
特に、塗り重ねや凹凸部で縮み量に差が出ると、局所的に膜厚が大きく乱れる原因となります。

膜厚の乱れは、単なる見た目の問題に留まりません。
保護性能や機能性(防さび、耐薬品性、絶縁性など)にも重大な影響を与えてしまいます。

乾燥縮みに起因する主な問題点

膜厚低下による性能低下

塗膜の厚さが不足すると、外部刺激から基材を守るバリア機能が十分に発揮できません。
例えば、防食塗料では、膜厚不足部分から腐食が発生しやすくなります。
耐候性塗料の場合も、紫外線や雨風による劣化が早まる原因になります。

塗膜の外観不良

乾燥縮みが激しい箇所は、膜面が波打ったり、へこみやピンホールができたりします。
これらの外観不良は、品質低下としてユーザーからのクレームにつながることが多いです。

部分的な密着不良や剥離

乾燥過程での急激な縮みや、局所的な収縮差が発生すると、塗膜の一部に応力が集中します。
その結果、下地との密着力が低下し、本来の強度を発揮できず、剥離やはがれの原因になるのです。

乾燥縮み・膜厚乱れが発生する主な要因

塗料組成と固形分含有率

塗料の溶剤(シンナー)や水分が多いと、乾燥時に蒸発する量が増えます。
同じ塗布量でも最終塗膜として残る「固形分」が少なければ、乾燥後の塗膜厚は大きく減少します。
これが繰り返されることで、膜厚不足が慢性化します。

希釈率や塗り方の問題

規定より多く希釈して塗る(薄めすぎ)と、乾燥後に目減りする量が多くなり、膜厚は大幅に低下します。
また、塗装方法や塗り回数が均一でないと、塗膜の一部分だけ乾燥縮みが強く現れることもあります。

乾燥環境のバラつき

乾燥温度や湿度の管理が不十分だと、乾燥速度にムラが生じます。
急激な乾燥や、半乾きでの再塗装も収縮差を生みやすく、膜厚の不揃いにつながります。

基材表面の状態

下地表面が汚れている、または凹凸・吸い込みの差が大きい素材では、部分的に塗膜が収縮しやすくなります。
その結果、密着不良や、特定箇所のみ膜厚が乱れることがあります。

塗膜の乾燥縮みを抑えるためのポイント

塗料選定の重要性

できるだけ固形分含有率が高く、乾燥収縮率が低い塗料を選ぶことが基本対策です。
最近では、低VOC高固形分タイプの塗料など、乾燥後の膜厚低下を抑制できる製品も増えています。

正確な希釈と塗布量の管理

規定の希釈率を厳守し、塗布量を管理することで、乾燥後の仕上がり膜厚を安定させます。
膜厚計などの計測ツールを併用し、塗装作業のたびに確認することが重要です。

適切な乾燥環境の確保

推奨される温度・湿度環境下での乾燥を心掛けましょう。
加熱乾燥時は、最初から高温にせず、徐々に温度を上げて均一な乾燥を促進します。
強制乾燥や送風は、局所的な乾燥ムラを生まないよう注意が必要です。

下地処理の徹底

油分・水分・塵埃などを除去し、均一な下地を整えることで、吸い込みや接着のバラつきを抑えます。
サーフェイサー(下塗り材)を活用し、表面を均一にするのも有効です。

膜厚乱れを抑制する現場の工夫

膜厚計測を徹底する

塗装前後・乾燥後に膜厚計を使用し、塗膜の厚さをこまめに測定します。
手間にはなりますが、異常を早期発見し、再塗装や補修を行うことで大きな不良を防げます。

試し塗りと乾燥収縮の把握

新しい塗料を使用する場合や、初めての素材と組み合わせる場合は、必ず試験塗りを行いましょう。
乾燥収縮率を把握しておけば、必要な塗布量や希釈率を事前に最適化できます。

塗装ロットごとの管理

同じ条件で複数回塗装する場合、それぞれのロットで膜厚バラつきが起こりやすいです。
都度条件を記録し、トラブル発生時に振り返ることが大切です。

エアレスや自動塗装機の活用

手塗りではどうしても塗りムラや膜厚の差が出やすいため、高精度の機械塗装や自動化ラインを導入するのも有効です。

乾燥収縮・膜厚乱れ解消のための新技術とトラブル事例

新素材・新技術による対策

近年では、乾燥時に水分や溶剤の揮発量をコントロールする特殊樹脂、自己修復機能を持つ塗膜、塗料厚みを自動モニタリングするセンサー技術なども開発が進んでいます。

レオロジー調整剤の導入で、垂れ防止や均一な厚み保持に効果を発揮する事例も増加しています。

現場で頻発するトラブル事例

たとえば、大型鋼構造物の防食塗装では、塗り重ね部で乾燥縮みが偏在し、局所的な塗膜薄とピンホールが同時に発生した事例があります。
自動車補修塗装でも、パテと上塗りの乾燥収縮差により、段差が出てしまうケースも後を絶ちません。

これらの現場事例は次工程での補修工数増加や、最悪の場合、やり直しコストが発生する原因となります。

まとめ:乾燥縮みと膜厚乱れに対処するには

乾燥縮みによる膜厚乱れは、塗料の選定、施工手順、管理体制、使用環境など多くの要素が複合的に関与する問題です。
一過性の対策では根本的な解決にはなりません。
塗料の構造理解、正しい使い方、適切な塗装管理、最新技術の活用により、安定した膜厚を保つことができます。

現場での小さな変化やトラブルにも常に注意し、再発防止のPDCAサイクルを回すことが重要です。
品質と安全性を両立させるために、乾燥縮みや膜厚乱れの原因を理解し確実な対策を実施しましょう。

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