乾燥工程で紙がクセ付きを起こし平坦性が出ない問題
乾燥工程で紙がクセ付きを起こし平坦性が出ない問題
紙の平坦性とは何か
紙の平坦性とは、紙の表面がどれだけまっすぐで波打ちや歪みがないかを示す性質です。
この平坦性が損なわれると、印刷や加工に支障が生じるほか、最終製品の品質にも悪影響を及ぼします。
とりわけ、精密なパッケージや高品質印刷用途の紙では、平坦性は非常に重要な品質項目とされています。
乾燥工程と紙のクセ付き問題
紙を製造する過程において、乾燥工程は非常に重要な役割を果たします。
この工程で適切な処置がされない場合、紙が「クセ付き」と呼ばれる歪みや波打ちを発生し、意図した平坦性を得ることができません。
このクセ付きは主に、乾燥中に紙の繊維の伸縮や、含有水分の不均一な蒸発が原因となって引き起こされます。
乾燥工程の概要
紙の乾燥工程は、ワイヤーパートやプレスパートで水分を抜き取った後、ドライヤーパートで熱風やドライヤーによって残存水分をさらに蒸発させる工程です。
この時点での水分含有率は概ね60%から5〜7%程度まで低下します。
しかし、乾燥の速度や均一性が適切でない場合、紙の表裏や端部と中央で乾燥状態に差が生じます。
クセ付きが発生する主な要因
クセ付きは一般的に以下の要因によって発生します。
1. 水分の不均一な蒸発
乾燥工程では、紙の表面や内部、端部と中央など場所によって水分の抜け方が異なることがあります。
とくに、乾燥ドラムやドライヤーの温度分布、紙の張力制御が不均一な場合、紙の一部だけが早く乾く現象が生じます。
この結果、乾燥収縮が部分的に異なり、縮みや歪みが生まれます。
2. 繊維配向と収縮挙動
紙の繊維は製造工程で流れ方向(MD)と直交方向(CD)に配向しています。
乾燥時の収縮率はこの繊維の配向によって変わり、特に流れ方向と横方向で収縮度合いが異なる場合に歪みやねじれ(ワープ)が発生します。
3. 張力の不適切な管理
乾燥工程中に紙ウェブに過度な張力がかかったり、逆に緩みが生じることで紙の構造が変形しやすくなります。
とくに張力差が部分ごとで変化すると、紙が乾燥後に戻り癖や、ロール巻きでのシワ・凹凸を生みやすくなります。
4. ドライヤーパートの構造的問題
機械的な要因として、ドライヤーパートでロールやドラムの設計、温度制御、紙の走行経路やロールの当て方の不均一性もクセ付きの一因となります。
クセ付きによる影響
クセ付きによって紙が平坦性を失うと、様々な問題が生じます。
印刷不良
紙が波打っていたり反っている場合、印刷機での搬送性が悪化し、印字ズレやかすれが頻発します。
これはオフセット印刷やグラビア印刷において特に大きな問題となります。
加工適性の低下
クセ付きのある紙は、型抜きやラミネート、折り加工などの二次加工時にもトラブルを引き起こします。
シートが浮き上がったり、正確に位置合わせできないケースも珍しくありません。
最終製品の外観品質低下
雑誌やパッケージなど消費者向け製品の場合、平坦性の低下は見た目の悪さや機能性の低下に直結します。
クセ付き対策 — 工場で行うべき管理と改善策
クセ付き防止のためには、乾燥工程を中心とした品質管理が鍵となります。
以下は主な改善策です。
乾燥速度と温度の最適化
各ドライヤーや熱風の温度を適切に管理し、急激な乾燥を避けることが重要です。
適切な昇温カーブを設計し、水分が均一に抜けるようにします。
張力制御の徹底
ウェブハンドリング技術を用いて、紙全体に均一な張力がかかるようリアルタイム監視・調整することが推奨されます。
特に端部の張力低下や、局所的な過張力には注意が必要です。
ドライヤーパートの均一性確保
全てのドラムや接触面で均等な加熱・乾燥が行われるように日常点検を徹底します。
ローラー表面の汚れや摩耗、冷却水のムラなども影響するため、整備体制の強化が求められます。
水分センサー・フィードバック制御の活用
近年では、紙の水分含有率をリアルタイムで監視するセンサー技術も充実してきました。
これを生産ラインに設置し、水分ムラを早期に発見してフィードバック制御で機械動作を調整するのも有効な対策です。
原料・配合の最適設計
繊維質や充填材、湿潤剤などの原料レシピによって、乾燥時の収縮挙動を制御することが可能です。
クセ付きに強い配合設計をアプローチしていくことも重要です。
ユーザー・現場での平坦性回復策
万が一、クセ付きが発生してしまった場合でも、二次加工現場やユーザーができることもいくつかあります。
リコンディション(再調湿)
空調や加湿によって紙に適度な湿気を与え、ゆっくり元の平坦性に戻す方法があります。
特に包装を開けてから一定時間空気に馴染ませる「コンディショニング」は、クセ取りに効果があります。
プレス工程の利用
印刷・加工工程で専用の平滑化ロールや加圧プレスを設けてクセを矯正することも可能です。
ただし素材や加工内容によって限界があるため、できる限り乾燥工程での根本対策が優先されます。
再発防止のための品質保証体制
クセ付きや平坦性問題の再発を防ぐためには、工程管理だけでなく、品質保証体制の確立が重要です。
出荷検査体制の強化
ラインアウト(出荷前)の平坦性検査をルール化し、問題が見つかったら即座に工程へフィードバック出来るようにします。
トレーサビリティの確保
どの原料、どの機械設定、どの工程でクセ付きが起きたかを遡るための記録体制が欠かせません。
これにより原因究明と再発防止策の策定がスムーズになります。
まとめ:乾燥工程の最適化がカギ
紙のクセ付き、および平坦性の不足は乾燥工程に起因する場合が多く、ここを最適化することが製品品質向上への近道となります。
適切な乾燥速度と温度制御、張力管理、ラインセンサーの活用、原料設計、安全管理の徹底、さらに品質保証と記録管理体制の強化を組み合わせることで、「クセなし・平坦性のある高品質な紙」の安定生産が可能となります。
紙を扱う企業や現場の担当者は、乾燥工程の重要性を再認識し、日々の点検・管理を徹底していくことが大切です。