生地の伸縮率が毎回違うことで起きるパターン修正地獄

生地の伸縮率が毎回違うことで起きるパターン修正地獄

縫製現場で頻発する「伸縮率問題」とは

服や雑貨の製作に欠かせないのが生地という素材です。
洋裁やハンドメイド、アパレル産業などで生地を扱うすべての現場で「伸縮率」によるトラブルが発生します。
伸縮率とは生地がどれだけ伸びたり縮んだりするかの割合で、製品の仕上がりに直結します。
ところが、ロットや生産地、染色方法の違いなどで、生地ごとにこの伸縮率が微妙に異なり、パターン(型紙)への影響が避けられません。
これが「パターン修正地獄」と呼ばれる現象を引き起こす原因です。

同じパターンでも仕上がりサイズが異なる理由

パターン通りに布を裁断し、丁寧に縫製しても、仕上がった製品が「予想より小さい」「大きくなった」「思ったシルエットと違う」という経験はありませんか。
生地が水分を吸うと縮む「縮率」、体温や湿度、アイロンなどの熱で伸びる「伸縮」が、型紙の意図を裏切ってしまうのです。

例えば、Tシャツ1枚を作る場合、基準となるパターンサイズで製作しても、A社のニット生地は数%しか縮まないのに、B社の生地では水通しで横方向に7%、縦方向で4%縮むといったことが起きます。
その結果、同じ型紙でも仕上がりサイズに大きなズレが生じ、製品クレームや再製作など大きなコスト増加になってしまうのです。

生地の種類ごとに違う伸縮特性

生地には様々な種類があり、それぞれ伸縮特性が異なります。
コットン、リネンなどの天然繊維は水分で縮みやすく、特に綿100%の布帛生地は大きな縮みが発生しやすいです。
逆にポリエステル・ナイロンなどの化学繊維は安定している場合もありますが、それでも染色や織り方、仕上げ加工によって伸縮率は変動します。

さらに、ニットやジャージー、スパン混生地といった編み物の場合、横方向(よこ地)の伸縮が大きく、パターンよりかなり大きく伸びることもあります。
ストレッチ素材はスパン糸やポリウレタンを使っていることで「回復力」が加わる反面、熱や湿度の影響をより受けやすくなります。

伸縮率の違いによるパターン修正の現実

伸縮率が変わるごとに、正確な製品を作るために行わなくてはならないのが「パターン修正作業」です。
仮に、同じデザインのシャツを作る場合でも、今回仕入れた生地ロットの縮率に応じて、裁断前に型紙を数mm〜数cm引き直す必要があります。
また、縫製仕様によって縫い縮みが出る部分も調整する必要があり、袖付けや襟、カフス、前立てなどパーツごとに微調整を求められます。

もし修正せずに進めた場合、大量生産で全商品が規格外という最悪のリスクもはらみます。
特にOEM・ODMなど他社ブランドの委託生産工場では、クレームや納期遅延、大幅な損失につながりかねません。

この修正作業が度重なると、設計者やパタンナー、現場スタッフは「またか…」というパターン修正地獄に追い込まれていきます。

なぜ伸縮率が毎回違うのか?

生地の伸縮率が毎回一定であればパターンは一度修正するだけで済みます。
しかし現実的には、

– 使用する繊維の産地や品質のばらつき
– 集荷・紡績・織布・編み・染色工程の違い
– 湿度・温度・輸送条件による影響
– 水通し、縮絨、整理加工など後加工の違い

など、様々な要因が絡み、同品番同カラーでもロットごとに変化します。
さらに在庫管理や追加発注のタイミングでも異なるロットの生地が配送されるため、毎回極めて繊細な管理が必要となります。

水通し・地直しの重要性と限界

裁断前に生地を水通ししたり、地直し(アイロンなどで伸縮を安定させる工程)を徹底することで、ある程度は防げるものの、「最初からロットごとに数%・数cm違う」という現象そのものを完全には防げません。
大量生産工場では生地反ごとにサンプルを取り、「縮率テスト」「伸縮テスト」を毎回実施してパターン修正に対応していますが、特に小ロットやオーダーメイド、少人数のハンドメイド作家の場合、現実的にはここまでの労力をかけるのは難しい場合も多いです。

パターン修正地獄に陥らないための対策・工夫

パターン修正という終わりなき作業に振り回されず生産性を維持するために、いくつかの対策や工夫があります。

1. 生地ごとに縮率・伸縮率テストを欠かさない

使用前の生地を30cm四方や指定したサイズでカットし、水通し後のサイズ変化を測定する。
数値を記録し、型紙をその分だけ前もって修正することで基本的なサイズ問題の回避ができます。

2. できれば同じロットを一括発注・保管する

追加生産やオーダー違いで生地ロットが変わると、再度修正が必要になる可能性が高まります。
リスク回避のために企画時点で見通し量をまとめてオーダーし、同じタイミングで加工・裁断することがおすすめです。

3. パターン設計時に「許容範囲」を計画に入れる

パターン作成時に、伸縮率のバラつきを考慮して「マージン」や「許容増減幅」を持たせておきます。
特に伸縮の大きい生地は、仕上がりが安定しやすいパーツごとに微調整パターンを用意しておきましょう。

4. 生地メーカー・商社との情報共有&相談

信頼できる商社・メーカーであれば過去の実績や経験値から「この品番はこの程度縮む」「このロットは〇〇%縮むかもしれない」と相談できます。
安さや見た目だけで生地を仕入れるのではなく、信頼性やアフターフォローまで重視するのが安心です。

5. 小ロット・個人作家は「在庫管理」を徹底する

小規模に同じ生地を繰り返し使用する場合、手元に1点ごとに縮率データと買い付け履歴を残しておくとパターン修正の履歴管理が楽になります。

6. 試作・サンプル段階で徹底的に検証

最初から大量生産せず、必ずサンプル段階で実寸テストし、そのサンプルの結果を受けて型紙を本製造用に最終修正します。

パターン修正地獄を乗り越えて快適なものづくりへ

生地の伸縮率差によるパターン修正は、「基礎作業」として避けて通れません。
しかし、伸縮性のバラつきにしっかり向き合い、「試験・記録・パターンマージン・サンプル検証」という工程を確実に行えば、最終製品の精度・顧客満足度は格段に上がります。
結果的に修正の手間やストレス、コストと手戻りを減らし、よりクリエイティブな工程に注力できるようになります。

まとめ:伸縮率の正確な把握が生産現場の要

生地の伸縮率は、服飾やハンドメイドにおける「精度」「品質」「生産効率」という全ての根幹に関わる要素です。
毎回違う伸縮にパターンを振り回されるのではなく、きちんと計測・管理・修正工程をシステム化することで、「パターン修正地獄」から抜け出せます。
伸縮率の確かな把握が、ものづくりをもっと楽しく、失敗の少ない快適なものへと導いてくれるはずです。

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