柄のリピートピッチがロールごとにズレてクレームになる背景
柄のリピートピッチがロールごとにズレてクレームになる背景とは
壁紙やフィルム、繊維、包装紙など、ロール状で柄物を製造する際、避けて通れないトラブルのひとつが「リピートピッチのズレ」です。
リピートピッチとは、同じ柄が現れる間隔、つまり一定距離ごとに繰り返される柄の“サイクル”を指します。
このリピートピッチがロールごと、あるいは同じロール内でズレていると、施工時に柄が綺麗に揃わず大きなクレームへとつながります。
本記事では、なぜ柄のリピートピッチがズレてしまうのか、その原因や業界背景、クレームが発生するまでの流れ、そして対策方法について詳しく解説します。
リピートピッチとは何か
リピートピッチの基本定義
リピートピッチとは、模様や図柄が繰り返し現れる際、同じモチーフの先頭から次の同じモチーフの先頭までの“距離”を言います。
例えば、花柄の壁紙であれば、ひとつの花が現れたあと、次に同じ花が現れるまでの縦方向の距離や横方向の距離がリピートピッチです。
リピートピッチの重要性
リピートピッチが正確であれば、施工時に柄と柄が綺麗につながり、美しい仕上がりになります。
しかし、リピートピッチがロールごとに違う、あるいは途中で微妙にズレていると、壁紙の継ぎ目や包装紙の合わせ目で柄が合わず、不良品となるのです。
実際に起こる「ズレ」の現象とその影響
柄あわせ不良とは
リピートピッチがわずかに違うだけでも、少しずつそのズレが累積しロール末端では大きな違和感となります。
1mmでも柄がズレていると、貼り合わせ箇所でははっきりとズレが目視できます。
これがいわゆる「柄合わせ不良」と認識され、大きなクレームの対象です。
クレームとなる具体例
壁紙の場合、複数ロールで施工を進めていく際、AロールとBロールでリピートピッチに違いがあると、継ぎ目が目立ったり、柄が斜めになったりします。
パッケージ印刷でも、面ごとに柄が合わないため製品価値が下がり、不良として返品になったり、最悪の場合には取引停止や損害賠償といった大きな問題に発展します。
なぜリピートピッチのズレが起こるのか、その原因
1. 製版~印刷の精度不足
柄を印刷する場合、まず製版(版下作成)という工程があります。
この時点で柄送りの距離設定や、繰り返しパターンの微調整にミスがあると、版ごとに微小な誤差が生じることがあります。
また、印刷機によってはギアやシリンダーの摩耗、セッティング精度のばらつきなどで、印刷ごとに柄送りの距離がほんの少しずつズレてしまうことも珍しくありません。
これがロールごとのピッチズレの大きな要因になります。
2. 原材料の伸縮・収縮
紙・繊維・フィルムなど、素材そのものが湿度、温度によって微妙に伸び縮みするため、印刷後にロールとして巻き取る際や、保管時の環境差でもリピートピッチに誤差が生まれます。
特に紙や布の場合、湿度変化で10mにつき数mmの差が出ることがあります。
フィルムも製造時のテンションや温度条件で収縮率が変化するため、厳密なコントロールが必要とされます。
3. 巻き取り・カット工程の機械誤差
大判印刷からロール状へ巻き取る際のテンション、カット位置のズレ、仕上げ工程での圧力差などでも微小なピッチ誤差が生じることがあります。
こうした誤差は各工程で累積し、ロール末端ほど大きなズレとして顕在化します。
4. 品質管理の不十分さ
リピートピッチを全量・全ロットで管理していない場合、たまたま誤差の大きいロールが市場に流出しやすくなります。
工程内チェックポイントや検査基準がなければ、現場で気付けずそのまま出荷されるリスクが高まります。
クレームになるまでのフローと現場での混乱
ロール出荷から施工現場までの流れ
壁紙やフィルムの場合、各ロールは工場でランダムに出荷されることがあります。
現場では発注ロットが複数の生産日や印刷ラインにまたがる場合もあり、異なるリピートピッチのロールが同じ案件で使われるケースが生じます。
施工現場での状況
職人や工務店スタッフは、通常「同じ品番」であればリピートピッチも同一だと信頼して施工します。
しかし、実際にはピッチが違うロール同士が使われ、継ぎ目で気づいたときにはすでに大量の貼り進めが行われているため、やり直しコストが非常に膨らみます。
施主・ユーザーからのクレーム
納品・施工後に柄ずれを指摘された場合、使ったロール番号や生産履歴を細かく追跡する必要があり、流通・製造・現場すべてで多大な時間とコストを消耗します。
最終的に製造元へのクレーム、返品、賠償問題に発展し、BtoBの信頼関係まで大きく損なう可能性があります。
リピートピッチズレによるクレームの背景
厳しい業界の品質要求
現代では消費者や取引先の品質要求が非常に高まっています。
「壁紙は柄がピタッと揃うもの」「包装紙は仕上がりが美しくて当然」といった期待が絶対視されているため、少しのズレでもクレーム化しやすい状況です。
ブランド価値への影響
一度でも重大な柄ズレクレームが生じると、ブランドイメージが著しく損なわれます。
リピート顧客、工務店、設計事務所などの信用まで低下し、取引停止にまで至ることもあります。
業者間の責任問題
製造現場、流通業者、施工業者のどこに責任があるのか線引きがあいまいなため、トラブル発生時には複数業者を巻き込んだ責任のなすり合いも問題となります。
対策と防止策
製造段階での精度向上
版下作成段階での仕組み化や、印刷機のメンテナンス、シリンダー交換サイクルの短期化などによって、物理的なピッチズレのリスクを下げることができます。
またデジタル制御を強化し、全台帳データでリピートピッチ履歴を一元管理する企業も増えています。
出荷前検品の強化
全数検査は現実的でなくとも、ロットごとの抜き取り検査や初回品・新ライン切り替え時のピッチ計測を徹底することで、不良流出リスクを格段に下げることが可能です。
ロール番号ごとにピッチデータを記録し、異常があった場合は出荷停止とする運用が有効です。
ロール管理・現場共有の徹底
生産ロット、ロール番号管理を徹底し、大型案件では出荷ロールのピッチを揃えて指定する。
また現場では、ロール切替時に一度ピッチチェックを行い、ズレを発見した時アラートを発する共通運用も推奨されます。
まとめ
柄のリピートピッチズレは、ほんのわずかな差でも大きなクレーム原因となる、非常にシビアかつ根の深い品質問題です。
製造、流通、現場施工と多段階の工程管理が求められ、想像以上の損失や信頼喪失を引き起こします。
印刷製版の精度向上から出荷ロールの管理体制、現場と製造元の情報共有まで、業界全体が一体となって取り組んでいくことが重要です。
今後もさらなる管理手法や技術革新によるリスク低減と、信頼される製品づくりが求められる分野だと言えるでしょう。