レーザー溶接でのポロシティ検出と品質保証手法

レーザー溶接におけるポロシティの問題とは

レーザー溶接は高精度な接合が可能な溶接技術として、電子機器や自動車、航空宇宙などの分野で広く利用されています。
しかし、その一方で「ポロシティ」と呼ばれる溶接内部の空孔・気泡の発生が品質の大きな課題となっています。

ポロシティは、溶接対象金属の内部に形成される微小な穴や気泡を指します。
これは溶融金属中のガスが抜けきらないことで残留し、固化時に空洞となってしまう現象です。
ポロシティが発生すると、溶接部の強度低下、防水性・気密性の損失、美観の低下などが引き起こされるため、製品の品質保証の観点からその検出と対策が非常に重要となります。

ポロシティ発生の原因

溶接材内部のガス成分

母材や溶接棒などに含まれる水分や不純物が加熱によって分解し、水素や窒素などのガスが発生します。
これらのガスが溶融池から排出されず、金属が凝固する過程で内部に閉じ込められることでポロシティが生じます。

レーザーエネルギーの過不足

溶接時のレーザー出力が過不足すると、適切な溶融状態が得られません。
溶けすぎて蒸発が発生したり、逆に溶融不十分でガスが抜けにくくなることもポロシティ発生の一因です。

シールドガスの流量・品質

レーザー溶接ではシールドガス(アルゴン、ヘリウム等)を使用して溶接部の酸化防止を行います。
ガス流量が不足したり、ガスが汚染されていると、溶融金属が酸化しやすくなり、発生したガスが抜けにくくなります。

溶接環境要因

溶接部の温度や周囲温度、溶接速度などの作業環境が適切でない場合も、ポロシティ発生率が高まります。

ポロシティ検出の主な手法

レーザー溶接分野において、非破壊で迅速にポロシティを検出する技術が日々進化しています。
主な検出手法について解説します。

X線透過検査

X線透過検査は工業用CTスキャンとも呼ばれ、溶接部をX線で透過撮影することで内部の気泡や空洞を高い精度で検出できます。
特に微細なポロシティも視覚的に確認できるため、信頼性が高いです。
ただし設備が高額で、検査時間も比較的長くなる傾向があります。

超音波探傷検査

超音波探傷は、溶接部に超音波パルスを当て、内部で反射されたエコー信号を検出・解析することで空洞や割れを検知する手法です。
携帯性が高く、比較的低コストでリアルタイム検査が可能です。
一方、非常に小さなポロシティや複雑な部位では検出限界があります。

赤外線サーモグラフィ

溶接部の表面温度分布を赤外線カメラで測定し、内部欠陥がある場合の熱伝導特性の異常を検出します。
連続的な監視が可能なため、リアルタイムでのプロセス管理に有効です。

アコースティック・エミッション法

溶接時やその後に発生する微小な音波を高感度センサーで捉え、欠陥が原因となる信号を分析する技術です。
プロセス中のリアルタイム監視も可能で、生産ラインへの組み込みが進んでいます。

ビジョンシステムによる表面検査

近年はAI画像認識技術と高解像度カメラを用いた、欠陥検出の自動システム化も進んでいます。
ただしポロシティの多くは内部欠陥であるため、単体では限界があり、他の非破壊検査と組み合わせるケースが主流です。

レーザー溶接における品質保証の最新トレンド

レーザー溶接工程において、ポロシティの検出と同時に品質保証体制を強化する必要があります。
以下に主な品質保証手法と最新動向を紹介します。

インライン検査の重要性

従来のアフターチェック型から、溶接直後の製造ライン上で連続的にポロシティを監視・検出する「インライン検査」の導入が進んでいます。
これにより、不良品の流出防止とトレーサビリティ確保が可能となります。

AI・機械学習による欠陥予知

溶接過程で取得した各種センサーデータや、画像・音響信号をビッグデータとして蓄積し、AI・機械学習アルゴリズムで学習させる取り組みが拡大中です。
これにより、溶接条件からポロシティ発生の兆候を早期に検知し、リアルタイムでプロセス調整することも実現しつつあります。

プロセスモニタリング技術

レーザー出力、溶接速度、溶融池の温度分布、プルーム(昇華ガス)の挙動などを多点監視することで、ポロシティが発生しやすいプロセス条件を自動で検出し、フィードバック制御するシステムも登場しています。

標準化とデータ活用

生産現場では、ポロシティ検出プロセスを標準化し、検査データの蓄積と管理が求められています。
これにより過去の品質データとの比較や、改善活動へのフィードバックがしやすくなります。

ポロシティを最小化するための予防策

高品質なレーザー溶接を実現するためには、ポロシティが発生しにくい工程設計と日常管理が不可欠です。

適切な溶接条件の設定

レーザー出力、パルス幅、波長、走査速度、集光径、焦点位置などのパラメータを最適化し、安定した溶融池を維持します。
最適条件の探索にはDOE(実験計画法)やシミュレーション活用も有効です。

シールドガス管理

適切なガス種・流量選定とノズル設計により、溶接部への適正なガス供給とガス流の安定化を図ります。
ガスの純度や供給ラインのメンテナンスも重要です。

溶接部の前処理

母材の洗浄や脱脂、乾燥などを徹底し、表面や内部に水分・油分・塵埃が残らない状態で溶接を行います。

設備保守と定期校正

レーザー装置や光学系のクリーニング、センサーや測定機器の定期校正を実施することも品質安定には欠かせません。

今後のレーザー溶接における課題と展望

今後のレーザー溶接分野では、さらなる製品軽量化や高強度化、複雑形状化に対応するために、ポロシティ検出・管理技術の高度化が求められます。

ひとつはAI応用の深化です。
プロセスビッグデータの収集と活用によって、欠陥の事前予知精度がさらに向上するでしょう。

二つ目はロボットと連携した自動溶接・自動検査の普及です。
ライン全体で自律的に品質管理が可能となる体制構築が進むと考えられます。

また、異種金属へのレーザー溶接拡大やアディティブマニュファクチャリング(積層造形)との融合など、先進分野への応用も加速すると見込まれます。

まとめ

レーザー溶接におけるポロシティの発生は、溶接品質・信頼性を大きく左右する重要課題です。
ポロシティ検出のための非破壊検査技術やAIによる工程管理手法が進化し、品質保証レベルは年々向上しています。

高品質な溶接を実現するためには、適切な溶接条件・材料管理・設備保守、および検査体制の強化が重要です。
今後も技術革新と現場改革を進めることで、より安心・安全な製品作りの実現が期待されます。

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