打錠時の静電気で粉が付着し品質トラブルが起きる現場の悩み
打錠時の静電気で粉が付着し品質トラブルが起きる現場の悩みとは
打錠は、医薬品や健康食品、化学製品の分野で広く使用されている工程です。
しかし打錠工程において、「静電気で粉が付着する」といった現場の悩みが多く報告されています。
この静電気による粉の付着は、最終製品の品質トラブルやラインの効率低下を招く大きな要因の一つです。
この記事では、こうした静電気問題の原因から代表的なトラブル事例、対策方法までを解説します。
打錠時に発生する静電気のメカニズム
なぜ静電気が発生するのか
粉体が機械と接触・摩擦することで、プラスやマイナスの電荷が分かれて静電気が発生します。
特に打錠時には、粉体同士、金属部品や樹脂部品との摩擦が集中して生じやすく、静電気が蓄積されやすい環境です。
粉末の粒径や湿度、気温、素材の組み合わせによっても静電気の発生量は大きく変わってきます。
打錠工程での静電気の悪影響
静電気が原因で起きる主な問題は以下の通りです。
– 打錠機や周辺機器への粉の付着
– 包装資材への粉の付着
– 製品表面の品質不良(異物混入・斑点・割れやすさ)
– 分包時や計量時の粉飛散
– 作業者の不快感や安全衛生上のリスク
特に医薬品など高い品質管理が要求される現場では、静電気による僅かな粉の付着や飛散が大きな問題につながります。
静電気による粉付着が招く代表的な品質トラブル
1. 異物混入や見た目の不良
静電気で付着した粉が錠剤の表面に残ってしまうことで、「白い粉」「黒い点」「斑点」が発生します。
このような不良は見た目の品質を損なうだけでなく、消費者からのクレームやリコールのリスクも高まります。
2. 錠剤の割れや欠け
錠剤の成形時に静電気の影響で粉が均一に分布しないと、内部に空隙が生まれやすくなります。
これにより製品がもろくなり、包装・輸送で割れや欠けが生じる原因となります。
3. 粉の飛散によるクロスコンタミネーション
製剤現場では異なる製品を同じ設備で作業することも多く、粉飛散によるクロスコンタミネーション(異品種混入)のリスクが高まります。
衛生管理や品質保証の面からも、静電気のコントロールは極めて重要です。
静電気対策の基本アプローチ
湿度の管理
工場内の湿度を適正に保つことが最も基本的な静電気対策です。
目安としては相対湿度が50~60%を下回ると急速に静電気が発生しやすくなります。
加湿器の設置、計画的な湿度管理の徹底が有効です。
導電性素材の利用
機械の接粉部にステンレスやカーボンを使用すると静電気が蓄積されにくくなります。
また、樹脂では帯電しにくい素材や帯電防止加工を施す方法もあります。
アースの設置と点検
設備・機械に適切なアースを取ることで、蓄積した静電気を地面に逃がせます。
特に新規ライン導入やメンテナンス時には、アース接続の確認が大切です。
イオナイザー(除電器)の活用
銃型タイプ、ブロアータイプ、バータイプなどさまざまなイオナイザー製品を導入し、打錠工程部分や粉が滞留しやすいポイントに配置しておくと効果的です。
現場で実践されている静電気トラブルの具体的対策
粉体特性の見直し
粉体そのものの流動性や帯電性を改良するアプローチも有効です。
コーティング剤や流動化剤を添加することで打錠時の帯電を抑制できる場合があります。
また粒度分布や含水率の見直しも検討ポイントです。
設備・機器の定期メンテナンス
ローラー、シュート、金型など、金属同士や粉体との接触摩擦部の摩耗や汚れは静電気発生の温床です。
定期的なクリーニングやパーツ交換、表面仕上げの再施工など、現場に応じたメンテナンスを行いましょう。
作業環境や作業着の工夫
作業員の衣類が帯電しにくい素材(綿100%や帯電防止糸混)を選ぶことで飛散や付着トラブルの軽減につながります。
また靴や床材も導電仕様を取り入れるとより効果的です。
打錠時の静電気トラブル事例とその改善例
事例1:錠剤の表面に白い粉がつく
サプリメント工場で白い斑点状の不良が多発した事例があります。
原因は、打錠機パンチやフィーダー部に静電気が発生し粉が付着していたためでした。
打錠機周辺にイオナイザーバーを追加設置し、湿度を55%維持することで不良発生率が大幅に低減しました。
事例2:製剤の内部割れが多発
ラインに古いシュートを使っており、表面が摩耗して粉と強く摩擦を起こしていました。
アース接続の強化とシュートをステンレス新品へ変更、打錠工程の連続監視を追加したところ、割れの発生が大幅に減少しました。
事例3:クロスコンタミ防止のため新たな帯電防止対策を導入
複数製品の切り替えが多いラインでは、清掃時に粉が舞い上がることで混入が頻発していました。
導電仕様の床や作業着に切り替え、さらに除電用ノズルを複数箇所に追加することで管理基準内に収めることができました。
静電気対策の選定ポイントと新技術の動向
現場の粉特性・設備特性で選ぶ
一律の対策では十分な効果が出ない場合も多く、粉体の特性や生産規模、設備ラインの材質・設計によって適切な対策をカスタマイズすることが重要です。
現場での簡易測定や、専門技術者によるコンサルティングも有効活用しましょう。
新素材・最新除電機器の導入例
近年では帯電防止添加剤、ナノコート技術、静電気測定センサー連動のIoTデバイスなど新たな選択肢も増えています。
これらは初期投資はかかりますが、品質安定化・クレーム減少・運用コスト削減の効果が期待できるため、長期的な視点で検討する価値があります。
教育と現場意識の向上も重要
静電気トラブルは現場の「気付き」「管理」の積み重ねが解決の鍵となります。
定期的な教育・指導、品質会議での情報共有、現場報告の記録・見直しなど運用側の姿勢も品質確保に大きく寄与します。
まとめ:静電気対策で現場の品質と生産性を守る
打錠時の静電気による粉付着トラブルは、現場で頻発する厄介な問題です。
ですが、粉体や設備の特性、作業環境に合わせて湿度管理・帯電防止素材・除電機器・作業教育を組み合わせ、継続的なメンテナンスに努めることで多くのトラブルは未然に防ぐことができます。
現場ごとに最適な対策を講じ、品質問題・安全リスク・コスト増加を防ぎながら、安定生産と高品質製品の実現を目指しましょう。