エコナイロン生地のリサイクル工程と環境認証の取得事例
エコナイロン生地とは何か
ナイロンは、軽量で耐久性に優れた合成繊維としてさまざまな分野で利用されてきました。
しかし、従来のナイロンは石油由来で環境負荷が高いことから、最近ではリサイクル原料を活用した「エコナイロン」生地が注目されています。
エコナイロン生地は、廃棄された漁網や不要となった衣料品、工場から出るナイロン廃材などを再利用して新たな糸へと再生することで作られます。
このサステナブルな素材はアパレル業界のみならず、自動車内装材やスポーツ用品、カーペットなど、幅広い分野に活用が広がっています。
その高い品質や快適な着心地は従来のバージンナイロンと遜色がなく、グリーン購買意識の高い消費者や企業に選ばれる理由となっています。
エコナイロン生地のリサイクル工程
エコナイロン生地がどのようにして誕生するのか、その具体的なリサイクル工程について詳しく見ていきましょう。
1. 原材料の回収
エコナイロンの原材料となるのは、使用済み漁網、カーペット、廃棄された衣類や工業用ナイロン廃棄物です。
これらは世界各地から集められます。
特に海に放置された漁網は「ゴーストネット」として海洋汚染や生態系への被害が問題視されています。
これを効率的に回収しリサイクルすることは、地球環境保全にも大きく貢献しています。
2. 洗浄・分別
回収したナイロン廃材は状態がさまざまです。
異物や他素材の混入が多いため、まずは徹底的な洗浄や分別が行われます。
これにより、ナイロン以外の不純物や汚れが取り除かれ、高品質なリサイクルに適した原料が選別されます。
3. 化学的な分解・抽出
ナイロンは化学的分解が可能なため、モノマー(分子の最小単位)にまで分解されます。
このプロセスは「デポリメライゼーション」と呼ばれ、廃棄物のナイロンをいったん元の原料分子に戻す方法です。
この段階で得られる素材は、純度の高いバージンナイロンとほぼ同等の品質になります。
4. 再重合・再生糸への加工
取得したモノマーを再度「重合反応」によってナイロンポリマー(新しいナイロン樹脂)へと合成します。
ここで得られる「リサイクルナイロン樹脂」を溶かし、紡糸(スピニング)工程へと送ります。
この工程で糸状になり、その後整形・延伸などの加工を経て織りや編み用の再生ナイロン糸が完成します。
5. 生地製造・仕上げ
再生ナイロン糸は、通常の生地と同様に織物や編物として生地に加工されます。
染色や特殊加工を施して製品用途に応じた仕上げを行い、エコナイロン生地としてさまざまな製品に採用されています。
環境認証制度と取得の重要性
エコナイロン生地が環境に優しい素材であることを証明するためには、第三者機関による環境認証取得が欠かせません。
世界規模で信頼されている各種認証には次のようなものがあります。
GRS(Global Recycled Standard)
GRSはリサイクル素材の含有率や製造過程のトレーサビリティ、有害物質の不使用などを第三者機関が認証する国際的な規格です。
エコナイロン生地メーカーは、リサイクル原料が十分に使用されていること、生産プロセスが環境に配慮されていること、労働者の安全や人権が守られていることなど、厳しい基準の下で審査されています。
OEKO-TEX Standard 100
この認証は繊維製品に有害な化学物質残留がないことを保証するものです。
エコナイロン生地を使った最終製品が、人体や環境に安心・安全なものであることを示します。
bluesign 認証
bluesignは、繊維産業の生産過程で使われる化学物質や水、エネルギー使用量を厳しくチェックし、持続可能な繊維生産を後押しする認証です。
環境だけでなく、作業する人や消費者の安全にも配慮したものづくりに取り組む企業の証となります。
エコナイロン生地の環境認証取得事例
海外・国内の企業では、積極的にリサイクル工程の透明性向上や認証取得の取り組みが進められています。
具体的なケースをいくつかご紹介します。
イタリア:ECONYL(エコニール)プロジェクト
ECONYLは、イタリアのアクアフィル社が手掛けた大規模なリサイクルナイロンブランドです。
廃棄漁網やカーペットを世界中で回収し、年約40,000トンもの廃棄物を新たなナイロン糸に再生しています。
GRSやOEKO-TEX Standard 100など、主要な環境認証をすべて取得済みです。
この原料は世界中の有名アパレルブランド、スポーツウェア、ラグジュアリーバッグ、カーペットへと幅広く展開されています。
国内アパレルの取り組み:帝人フロンティア
日本の帝人フロンティア株式会社は、使用済みナイロンを再生する独自技術「ECOPETナイロン」を展開しています。
同社はGRS認証を取得し、国内外でリサイクル素材アパレルやユニフォームの開発を推進しています。
官民連携で漁網の回収や分別、消費者啓発も積極的です。
グローバルブランドの認証取得
パタゴニア、プラダ、アディダスなど、国際的なファッション・スポーツブランドもECONYL糸を採用し、自社製品のリサイクル比率を高めています。
こうしたブランドは自社のサステナビリティレポートなどでGRS認証やbluesign認証取得済み素材の採用率向上を公表し、エビデンスに基づく環境配慮をアピールしています。
エコナイロン生地がもたらす持続可能な未来
エコナイロン生地の登場は、繊維業界における廃棄物削減とサーキュラーエコノミー(循環経済)の促進に大きく寄与しています。
廃棄され環境負荷の高いナイロンがリサイクルによって再生されることで、新たな石油資源の消費抑制やCO2排出量の削減が可能となります。
また、製造工程の透明性と合算された環境認証取得によって、消費者や企業が安心してエコナイロン製品を選ぶことができる点も重要です。
リサイクル・再生原料のトレーサビリティや情報公開が進むことで、多くの業界関係者や生活者に「サステナブルな選択肢」を提供しています。
今後の課題と展望
今後も、エコナイロン生地の技術革新や回収網の拡大、コスト低減の取り組みがますます期待されています。
一方で、シームレスなリサイクルサイクル構築のためには、消費者・企業・行政が一体となった仕組みづくりが不可欠です。
また、認証取得・管理へかかるコストや工数が中小企業には大きな負担となっているケースもあるため、公的な支援や新技術導入も重要です。
グリーン購入支援や規制強化といった政策面のアップデートも、今後の市場普及を後押しする要素となるでしょう。
まとめ
エコナイロン生地は、リサイクル原料の有効活用と国際基準の環境認証取得によって、地球と人に優しい新しい素材として需要が高まっています。
製造工程の透明性や持続可能性の証明となる環境認証の取得は、消費者や企業の信頼を得るためにも今や不可欠です。
サーキュラーエコノミーの実現には、こうした新素材の普及と、認証取得を含む一連のサステナブルな取り組みが今後ますます求められていくでしょう。
エコナイロン生地が社会全体に広がることで、よりグリーンな未来の実現に一歩近づくことができるのです。