材料変更による成形条件の再確立が想像以上に難しい苦労
材料変更による成形条件の再確立が想像以上に難しい苦労
材料を変更することは、製造現場において日常的によくある作業のひとつです。
しかし、いざ新しい材料で従来と同じ品質の製品を安定して生産しようとしたとき、多くの現場担当者や技術者が「こんなに大変だったのか」とその難しさに頭を抱えることがあります。
特に射出成形や押出成形、プレス加工など、複雑な物理現象が絡み合う加工プロセスでは、材料ごとの繊細な性質の違いが製品精度や生産性に大きく影響を及ぼします。
ここでは、実際に材料変更に伴う成形条件再確立の難しさ、つまずきやすいポイント、対策方法について詳しく解説します。
材料変更とは何か
材料変更の背景
製造現場で材料を変更する理由はさまざまです。
コストダウンのための材料見直し、廃番や入手困難を受けての代替、環境規制への対応、新製品開発や性能向上を目的とした新素材の採用などが主な理由となります。
いずれの理由であっても、単に材料を入れ替えるだけでなく、その材料の特性をしっかりと把握し、新たな成形条件を設定し直す必要があります。
成形条件の再確立の必要性
同じ金型や機械、同じ仕様でも、材料が異なれば流動性、冷却収縮、接着性、強度、劣化性など、多くの点で挙動が変わります。
旧材料と新材料で見た目や物性が似ていても、わずかな違いが成形不良、寸法不良、歩留まり低下につながることがよくあります。
そのため、材料ごとに「最適な成形条件の追求」が必須となります。
材料変更で直面する主な課題
成形の再現性不足
新しい材料に置き換えた際、これまでの条件が通用しないことは多いです。
同じ温度・圧力・サイクルタイムで成形したにも関わらず、ショートショットやバリ、反り・ヒケ、寸法不良や気泡、不透明化など多様な問題が噴出することがあります。
再現性確保こそ生産安定への第一歩ですが、材料変更時は何度も細かな調整=「試行錯誤」が発生します。
材料特性の理解不足
材料のカタログやデータシートに記載された物性値だけで充分な条件設定は困難です。
実際の成形では、分子構造や充填・冷却時の挙動、二次加工適性など、データシートでは見えない特性が大きく効いてきます。
特に樹脂の添加剤や充填剤の有無は流動性や収縮挙動に大きな影響を与えます。
材料サプライヤーとの密な情報交換や、トライ&エラーによる現場検証が不可欠です。
金型・設備の適合性問題
新しい材料によっては、金型の表面処理やピン・スライド機構への付着や摩耗が進行する場合があります。
また、熱伝導や粘度が違うため、冷却回路やランナー構造、ゲート設計の最適化が求められることもしばしばです。
材料物性だけでなく、設備全体の「適合性」無料も繰り返し評価しなければなりません。
成形条件の再確立が難しい理由
条件最適化の試行錯誤
材料変更時には「従来値をベースに±αで調整」という方法がパターン化されていますが、これだけでは上手くいかないケースが少なくありません。
一つのパラメータ(圧力や温度)を変えれば、別の課題(バリやヒケ、サイクル延長)が発生し、「原因と結果の連鎖」に翻弄されることも多々あります。
最適解を見いだすまで多くの時間・材料コスト・工数がかかります。
不確定要素の多さ
原材料ロットごとのバラツキ、周囲環境の温湿度変化、金型の経年劣化など、コントロールしきれない要素が多く存在します。
わずかな成形条件の変化が大きな品質の違いになるため、「いつどこでも安定生産」までハードルが高いのが現実です。
製品形状や金型ごとのシビアな対応
同じ材料、同じ型式の成形機でも、製品の肉厚分布やゲート位置、金型の冷却回路によって理想的な条件は異なります。
一つクリアしても別形状ではNG、という事態が頻発します。
「再現性の壁」をなんとかして乗り越える必要があります。
具体的な苦労事例とその対策
バリやヒケ・ショートなどの成形不良
材料の流動性や固化速度が微妙に異なることで、過去には出なかったバリが目立つようになったり、ヒケやショートショットが頻発したりすることがあります。
これに対しては、射出速度や充填圧力、保圧、金型温度の調整を繰り返す必要がありますが、変更点同士が複雑に絡み合い、最適解に至るまで何度も調整が必要です。
寸法公差の確保に苦労
材料変更後、これまで安定していた寸法精度が乱れることは珍しくありません。
とくに樹脂成形においては収縮率がわずかに異なるだけで大きな寸法誤差につながるため、保圧時間や冷却時間の見直し、また場合によっては金型の改修も検討するケースがあります。
樹脂ごとの収縮特性を十分に理解し、過去のトラブル事例も参考にして条件出しを進めると効果的です。
材料の熱安定性と劣化によるトラブル
新材料の熱安定性が低かった場合、想定より早くガスや分解物が発生し表面不良や機械詰まりの原因になります。
この際は滞留時間の短縮や樹脂温度ダウン、スクリューパージの頻度増加などの対応を迫られます。
不良原因を一つひとつ切り分けながら、現場での小さな変化も見落とさずチェックする習慣が重要です。
経験を活かした改善ポイント
テストトライとデータ蓄積の重要性
製造現場で材料変更に都度苦労している場合こそ、「過去トライの条件・結果の記録」が不可欠です。
入力変数と出力結果をセットで詳細に記録することで、次回の材料変更時も再現しやすくなります。
テスト条件を1つずつ、計画的に変化させて効果を比較検証し、現場での「ベストプラクティス」を積み重ねていきましょう。
サプライヤーとの密なコミュニケーション
材料メーカーやサプライヤーに相談し、成形時の注意点や過去事例、推奨パラメータを積極的に共有してもらいます。
また、問題発生時はロット分析、トレーサビリティの情報も提供してもらうことで迅速な対応が可能となります。
実機以外のシミュレーションの活用
CAE(コンピューターシミュレーション)を活用して事前に金型内の流動解析や冷却シミュレーションを行えば、試作前に予測精度が高まり、トライ&エラーの回数削減につながります。
実際のトライ結果とのギャップもしっかり記録することで、次回以降の成形技術向上にも活かせます。
まとめ|材料変更時の成形条件最適化の心得
材料変更に伴う成形条件の再確立は、現場担当者のみならず技術開発や品質管理部門まで、多くの人の頭を悩ませる重要課題です。
カタログ値や過去経験だけで安易に判断せず、
・材料特性ごとの現場データを細かく蓄積・分析する
・設備や金型全体の相性検証を徹底する
・サプライヤーや外部ソリューションを活用し幅広い情報を獲得する
という基本を徹底しましょう。
これらの取り組みを積み重ねることで、材料変更時の苦労を最小限にとどめ、安定した品質・高生産性の両立を実現できるはずです。
今後も新素材の登場や環境規制の進展により、材料変更はますます増えていきます。
現場力と技術力を高め、困難を乗り越えていきましょう。