ゴムの溶剤洗浄が必要なのに環境規制が厳しくなるジレンマ

ゴムの溶剤洗浄が必要な理由

ゴム製品やその製造工程では、表面の汚れや油分、粉塵などを除去するために溶剤による洗浄が欠かせません。
この工程は、製品の品質を保つうえで非常に重要な役割を果たします。

例えば、接着や塗装前のゴム部品の表面処理には、油脂や離型剤、ゴミをきれいに取り除く必要があります。
これを十分におこなわないと、塗膜の剥離や接着不良など重大な不良につながることがあります。
また、金型のメンテナンスや製品のリサイクル工程などでも、溶剤を利用した洗浄は求められます。

古くから用いられてきたトルエン、アセトン、ヘキサンなどの有機溶剤は、ゴムの汚れや油脂を効率的に洗浄する性質があります。
そのため多くの現場で利用され続けてきました。
しかし、これらの溶剤は人体や環境への負荷が高いという問題も同時に孕んでいます。

厳しさを増す環境規制の現状

近年、世界的に環境保護意識が高まっている中で、有機溶剤に対する規制は年々厳しくなっています。
日本をはじめ、欧米やアジア各国でもVOC(揮発性有機化合物)削減のためさまざまな法規制が制定され、企業には使用量の削減や代替技術への転換が求められています。

日本では「労働安全衛生法」や「大気汚染防止法」「化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)」などが適用されており、作業現場での取り扱いに関する基準や排出量の規制が強化されています。
また、海外ではRoHS指令、REACH規則などがあり、危険有害な化学物質への規制は年々世界規模で強化されています。

このため、ゴムの溶剤洗浄をおこなう企業は、従来通りの工程を維持することが難しくなりつつあります。

規制による現場のジレンマとは

ゴムの品質を保つためには、洗浄工程の確実な実施が不可欠ですが、環境規制が強まることで使える溶剤や工程に制限が生じてしまいます。

品質と安全・環境規制のせめぎ合い

溶剤洗浄は、安定した品質を保証するために重要な手段ですが、溶剤の使用規制が強化されると「洗浄力が十分な溶剤が使えない」「作業効率やコストが上昇する」「人体や設備への安全対策コストがかかる」といった課題が浮上します。

そのため、以下のようなジレンマに直面することが多くなっています。

・十分な洗浄力を持つ溶剤が規制対象となり、代替品では品質保証が難しい
・環境負荷の低い新しい溶剤や洗浄方法の導入には、コストや設備投資が必要
・顧客からは高品質が求められる一方で、コンプライアンス順守が必須

このように、ゴムの製造や加工現場では、環境規制を守りながらいかにして従来通りの品質レベルを維持するのかが最大の課題となっています。

現場から寄せられるリアルな声

実際の現場からは「環境基準値をクリアするため稼働を抑えざるを得ず、生産性が落ちてしまった」「新しい溶剤を試したが、汚れの落ち具合が従来品に劣り、製品の歩留まりが悪化した」「設備更新のために多額の投資が必要になった」など、頭を悩ませる声も多く聞かれます。

とくに中小企業では、新しい洗浄設備の導入や代替溶剤への切り替えが経営を圧迫しかねません。
このジレンマを打開するには、「現場の実情に即した解決策」が不可欠です。

代替案と最新技術の動向

ジレンマを乗り越えるためには、環境負荷の低減と洗浄品質の両立を図る代替技術の導入が不可欠です。
現在、さまざまな代替案・最新技術が開発・導入され始めています。

水系洗浄剤の利用

有機溶剤に代わるものとして注目されるのが「水系洗浄剤」です。
水に界面活性剤や特殊成分を加えることで、油脂や汚れを浮かせて除去します。
環境負荷や健康リスクが大幅に小さく、溶剤法と同等の洗浄力を発揮する製品も登場しています。
一方、ゴムの種類や汚れの質によっては適応が難しいケースもあり、前処理や乾燥など工程全体の見直しも必要です。

超音波洗浄・プラズマ洗浄の導入

物理的エネルギーを利用する超音波洗浄やプラズマ洗浄、ドライアイス洗浄も増えています。
超音波で汚れを剥離させたり、プラズマやオゾンの反応で表面の有機物を分解したりすることで、溶剤を抑えつつ高い洗浄効果を得られるのが特徴です。
工業ラインへの導入実績も増えており、今後ますます普及が期待されています。

バイオベース溶剤・環境配慮型溶剤

近年は、トウモロコシなどのバイオマス由来原料による「バイオベース溶剤」や、分解性や毒性に配慮した「環境配慮型溶剤」もラインナップされています。
また、グリコールエーテル系やエステル系など、従来よりも安全性を高めた溶剤が選ばれています。
導入の際には「洗浄力」「材料適合性」「コスト」などを総合的に検討することが重要ですが、安全面・環境面でのアドバンテージが大きいです。

企業が取るべき対応策

これからゴム業界で生き残るためには、積極的に環境対応と品質確保の両立を目指す必要があります。
具体的な対応策をいくつか紹介します。

工程の見直しと最適化

現状の洗浄工程を再評価し、過剰な洗浄工程や溶剤使用量がないかを再点検します。
洗浄対象やタイミングを最適化することで、使用する薬剤・エネルギーの削減やコスト低減も期待できます。

溶剤代替の段階的導入

一度にすべてを新技術へと切り替えるのではなく、段階的に水系洗浄剤や代替溶剤、超音波・プラズマ洗浄などを検討・比較しながら、自社の製品やラインに最適なものを選んで導入します。
社内テストや小ロット生産から始めることで、リスクを抑えつつスムーズに移行することができます。

従業員教育と意識改革

溶剤取扱いのリスクや環境への影響について従業員教育を強化するとともに、現場の課題や意見を吸い上げる仕組みを構築します。
全社一丸となって環境と品質両立の実現に取り組むことが重要です。

外部パートナー・最新動向の活用

技術や規制のトレンドは日々変化しています。
洗浄装置メーカー、化学品メーカー、業界団体などの情報を積極的に活用し、外部パートナーと協業しながら最新の技術や情報を取り入れましょう。
また、行政や補助金制度などを活用することで設備導入や技術開発のコスト負担を軽減できる場合もあります。

まとめ:ジレンマ克服がゴム産業の成長を左右する

ゴムの溶剤洗浄は、高い品質を守るために不可欠な工程です。
一方で環境規制の強化により、従来の溶剤が使えなくなり、生産性やコスト、安全管理などの面から現場は大きなジレンマを抱えています。

このジレンマを乗り越えるには、従来のやり方に固執せず、環境に配慮しながら品質・コストも両立できる新技術や代替品の導入が不可欠です。
早めにトレンドを把握し、柔軟かつ段階的に工程の見直しを進めることで、ゴム業界の持続的な発展につなげることができます。

今後も最新情報にアンテナを張り、業界全体で知恵を出し合いながら、より安全でクリーンな生産体制へと転換していくことが、ゴム産業の未来を切り開くカギとなります。

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