油剤が固化しやすく冬の製造が難しくなる季節性リスク
油剤の固化とは何か
油剤は、工業分野や製造業など幅広い場面で用いられている潤滑剤や冷却剤、加工用油の総称です。
これらは常温では液体の状態で使用されますが、気温が低下する冬場になると、流動性が著しく低下し、固化や凝固を起こしやすくなります。
油剤が固化するとは、温度の低下によって液体だった油分子が結晶化し、固体や半固体の状態になる現象を指します。
この現象は油剤の種類や配合成分によっても異なり、鉱物油・合成油・植物油いずれにおいても発生し得ます。
固化によって、本来の油剤としての機能(潤滑、冷却、洗浄、加工性維持など)が著しく損なわれ、製造工程全体に大きな支障を与えます。
油剤が冬場に固化しやすくなる理由
融点・流動点の低さがカギ
油剤が液体として使用できるかどうかは、融点や流動点という性質で大きく左右されます。
これらは油剤に含まれる成分の特徴によって変化し、例えば動植物由来の油では、飽和脂肪酸の割合が高いと融点が上がるため、寒い環境下で固化しやすくなります。
また、鉱物油でも高級パラフィン成分の比率が高い場合などは低温で結晶が析出しやすく、思わぬトラブルにつながります。
外気温・室内温度管理の難しさ
冬季には製造現場の室温が10℃を下回ることも珍しくありません。
この温度低下は貯蔵中の油剤だけでなく、現場で使用中の配管やタンク、また機械の摺動部に至るまで影響を及ぼします。
とくに未暖房の倉庫や半屋外に置かれた油剤タンクは、夜間や早朝に氷点近くまで温度が下がり、油剤が一部固化することで安定供給が難しくなります。
水分や不純物の共存リスク
油剤中に含まれる微量水分や粉塵、金属粉などの不純物は、これ自体が結晶化の誘因となったり、油の凍結点を押し上げたりする場合があり、固化傾向が強まります。
とりわけ水分は、製造ライン内での冷却時に氷結しやすく、油剤の流れを妨げる主因となることもあります。
油剤固化による製造現場のリスク
設備停止、機械故障の原因に
油剤が固化すると、配管やノズルの詰まり、潤滑不良、冷却不良などが発生します。
これにより機械が異常加熱したり、摺動部が焼き付いたりするリスクが急増します。
最悪の場合は設備が緊急停止するだけでなく、重大な修理や部品交換が必要になることもあります。
製品品質の低下を招く
固化した油剤は本来の液体としての機能を十分に発揮できません。
例えば加工油が固まると切削抵抗が増え、ワーク表面の品質悪化やバリ・傷が発生しやすくなります。
また、使用油剤の性状変化が原因で、加工精度や歩留まりにも悪影響が生じます。
工程の遅延・コスト増加
油剤が固化していると、復旧にも時間と手間がかかります。
タンクの加温や配管の洗浄作業、油剤交換といった工程外作業が発生するほか、不良品や管理外コストが増え、全体の生産効率低下を招きます。
油剤固化の対策方法
低温安定性の高い油剤の選定
冬季の固化リスクを抑えるためには、低温流動性に優れた油剤・添加剤を選ぶことが重要です。
メーカーによっては、流動点降下剤や低温用スペックとして設計された加工油・潤滑油を各種用意しています。
新たに油剤を導入する場合は「流動点(pour point)」や「低温粘度」などの物性数値を必ず確認し、現場の冬期最低気温を下回らない範囲のものを選択しましょう。
保管・使用設備の適切な温度管理
油剤の保管場所は、できる限り断熱性が高く直射日光や風雪の影響を受けにくい場所を選びましょう。
室温管理が難しい場合は、加温装置やヒーター、保温シートなどを利用して油剤タンクや配管内を一定温度以上に保つ工夫が求められます。
使用頻度の低い設備では、冬場のみタンク内撹拌を行い、油剤の一部が沈殿・固化しないよう循環運転を導入する方法も有効です。
油剤の劣化・汚染防止
油剤が空気中の水分や異物、粉じんなどを取り込むと、固化リスクが高まります。
密閉容器での保存や、使用時にろ過装置を設けること、また定期的な油剤の入れ替えチェック・サンプリングを行うことで、変質や劣化を抑えることができます。
さらに、タンク底部や配管内のスラッジ(沈殿物)はこまめに除去しておくことも重要です。
加温・解凍用設備の導入
油剤固化が避けられない場合は、加温シートやヒーター巻きつけ、湯煎式加温装置といった方法で液体状態に戻すことが推奨されます。
油自体を温めすぎると品質劣化を招く場合もあるため、メーカー推奨温度範囲を必ず守って実施しましょう。
解凍後には粘度や成分変化の有無を必ずチェックし、問題があれば油剤の全交換も検討します。
季節性リスクとその見える化
油剤の固化は「たまたま今年は凍った」「例年になく寒いだけ」と軽視されがちですが、実際は現場が気付きにくい「季節変動リスク」の代表例です。
いざトラブルが発生した時、備えがなければ大事故や損失に直結します。
このリスクを低減するためには、「最低気温の記録」「油剤の物性表管理」「発生履歴のログ化」など、現場で状況を見える化し、毎年ルーチンで点検項目に加える習慣が求められます。
また、夏場と冬場で油剤の仕様・管理方法を「使い分ける」運用ルールを明確にすることで、未然にリスクを回避できます。
油剤の選定・運用における最新技術動向
近年ではIoTやセンシング技術の発達により、各種油剤の粘度・温度管理をリアルタイムで遠隔監視できるシステムが普及しつつあります。
これにより、現場担当者が気が付かない油剤の異常粘度上昇や固化兆候を、アラート通知で迅速に知ることが可能になりました。
また、環境対応型の低温流動性油剤や、特定の成分だけが結晶化しにくい配合技術も進化しています。
これら最新の情報や新製品を積極的に取り入れることで、従来の「油が固まったら残念」という受け身の管理体制から脱却できます。
まとめ:冬季油剤固化対策の重要性
油剤が固化しやすい冬場は、製造現場にとって見逃せない季節リスクです。
本来、冬期トラブルは必ずしも運や偶然の産物ではなく、適切な油剤選定・温度管理・保管運用・点検を積み重ねることで、その多くは未然に防げます。
製造ラインの安定稼働や品質維持、コスト削減を目指すためにも、油剤の冬季管理について定期的に自社の取り組みを点検しましょう。
また、新たな低温対応技術や製品情報も積極的に活用し、工場の安全・効率性向上を図ることが今後いっそう重要になります。