粘度が突然上昇して充填が不可能になる油脂製品の悩み

粘度が突然上昇して充填が不可能になる油脂製品の悩みとは

油脂製品の製造現場や充填ラインで、粘度が突然上昇してしまい、充填作業そのものが停止してしまう現象に悩まされている企業は少なくありません。
この現象は製造工程に予期せぬトラブルを引き起こし、生産効率の大幅な低下や納期遅延、製品ロスなど経営的なダメージも大きくなります。
本記事では、油脂製品における粘度の急激な上昇がなぜ起こるのか、その主な要因や現場で実践できる対策まで詳しく解説します。

油脂製品の粘度上昇がもたらす課題

油脂製品は、食品業界や化粧品業界、さらには工業製品などさまざまな領域で使われています。
その特性や目的に応じて最適な粘度が求められており、製造段階では粘度の安定性が非常に重要となります。

粘度が想定外に上昇してしまうことで、以下のような深刻な課題が発生します。

  • 生産ラインの充填工程がストップする
  • 配管やポンプ、ノズルが詰まる・損傷が発生する
  • バッチごとの製品品質に大きなバラツキを生む
  • 必要以上の加温や撹拌コストがかかる
  • 最終製品の外観不良や物性不良につながる

粘度異常への素早い対応ができなければ、多くの製品ロスや従業員の再作業コスト増にもなりかねません。
経営全体の生産性を高めるためにも、「なぜ突然粘度が上がるのか」「その防止策は何か」を理解することがカギとなります。

油脂製品の粘度とは

粘度の定義

粘度とは、液体や半固体が流れるときに現れる「抵抗力」を数値化したものです。
油脂製品の場合はとろみや流れやすさを示す基本的な物性であり、充填や加工段階で極めて重要な管理指標となります。

粘度の単位・測定方法

粘度の単位は、SI単位ではパスカル・秒(Pa・s)、実務の現場では「ミリパスカル秒(mPa・s)」や「センチポイズ(cP)」が使われています。
粘度計やレオメーターを使い、温度管理された状態で測定することが一般的です。
油脂製品は温度に敏感なため、測定時の温度管理も非常に大切です。

粘度が突然上昇する主な原因

油脂製品の粘度上昇には、「緩やかに進行する変化」と「突発的な変化」があります。
今回はとくに製造現場を混乱させる“突然”の粘度上昇について、その主な原因を解説します。

1. 油脂成分の結晶化・固化

油脂は主にトリアシルグリセロールからなり、温度の変動や衝撃、長時間の静置などで内部の分子配列が変化しやすい性質を持っています。
一部の脂肪酸成分が結晶化を起こすと、全体の粘度が急激に上昇します。

加温して液体としていた油脂が、充填現場で少し冷えて液体から半固体状態に変わったり、攪拌が不足して部分的な結晶化が進む場合がこれに該当します。

2. ポリマーや添加剤の相互作用

エマルジョンタイプの製品や乳化剤、増粘剤など複数成分からなる油脂製品では、原料同士の相互作用により粘度が大きく変動する場合があります。
とくに界面活性剤やゲル化剤の添加量が多かったり、均一に混合されていないと、突然“ダマ”や“ゲル”が発生し粘度異常の要因となります。

3. 製造ライン内の残留物・外部異物混入

配管内や充填ノズル、ポンプラインなどに残留油脂や清掃不良による固形物、微粒子が存在すると、流路が局所的に狭くなり、急激な混合物の粘度上昇を引き起こします。
異物が流動の妨げとなることで、予想しなかった詰まりや粘度上昇が発生します。

4. 温度管理の不備

油脂類や油脂を含む複合製品は、5~10℃温度が下がるだけで粘度が数倍に上昇することも珍しくありません。
搬送中や充填直前の温度管理が徹底されていないと、ライン到達時に急激に凝固点近くまで冷え、結果として粘度が上昇し充填不良となります。

5. 配合ミスやバッチ間違い

原材料投入時の順番間違い、増粘剤や乳化剤の添加量の配合ミス、異なるロット品の誤投入なども数分で粘度が変化するトラブルの元です。
人為的ミスによる粘度異常も、現場ではよく見られる原因です。

粘度異常を予防するための現場対策

突然の粘度上昇を未然に防ぐには、研究・開発段階から現場運用まで一貫した管理体制が必要です。
ここではオペレーション上でできる工夫と、管理面でのポイントを紹介します。

1. 油脂原料の温度・保管管理の徹底

原材料の油脂は推奨された温度帯で保管するのが基本です。
倉庫や仕込み現場、パイプラインごとに温度計・データロガーを設置し、常時20度、25度など安定した温度になるよう注意しましょう。
加温管理には遠赤外線ヒーターや温水ジャケット、断熱保温材の設置も有効です。

2. 製造条件の標準化・作業手順のマニュアル化

撹拌速度、加温・冷却速度、添加剤投入タイミングなどの製造条件を細かく標準化します。
作業手順書を明文化し、作業者への徹底した教育を行うことが重要です。
シフトごとの認識違いもトラブルの原因となるため、作業記録やチェックシートの活用もおすすめです。

3. 粘度・温度測定の自動化・リアルタイムモニタリング

近年はオンライン粘度計・温度計などで製造ラインからリアルタイムデータを取得し、異常検知や自動制御するシステムも普及しています。
突発的な数値変化があった場合、アラームで即時対応できる体制を構築すれば、未然に大きな事故を防げます。

4. 配管洗浄・定期メンテナンスの習慣化

配管やポンプ内には目に見えない油脂残渣が蓄積しやすいため、定期的な洗浄サイクルを設けましょう。
CIP洗浄(定置洗浄)や分解メンテナンスを定期的に行うことで、異物の発生や“ダマ”の生成を未然に防ぐことができます。

5. 原料供給元の安定化・原材料選定

油脂自体の純度や物性、配合成分によっても充填性は大きく変化します。
可能であればロットごとの差異が少ない供給元を選び、必要に応じて複数ロットでの適正テストなども実施すると良いでしょう。

粘度異常発生時の対応フロー・トラブルシューティング

万一、製造現場で急激な粘度上昇によりライン停止が起こった場合、以下の順に冷静に対策を進めましょう。

1. 現場の安全確保とライン停止

機械やヒーターの過負荷、ライン圧力上昇を伴う場合は速やかに停止操作を実施し、事故や火災リスクを避けます。
作業責任者へ状況を共有し、再稼働時の安全確認も徹底しましょう。

2. 問題箇所の特定と物理的な除去

配管詰まり、ノズル詰まりの場合は物理的に清掃や分解洗浄を行い、原因となっている“ダマ”“塊”“異物”の有無を確認します。

3. 粘度・温度・現場サンプルの再計測

異常発生時点のバッチサンプルを保存し、粘度計やレオメーターで正確な数値を再測定します。
同時に充填時・仕込み時の温度記録を見直し、原因となる変動がなかったかを確認します。

4. 原材料・配合履歴の確認

直近数バッチ分の原料ロットや配合記録を再点検し、突発的な配合ミス、異原料の混入や不足がなかったかを洗い出します。

5. スタッフ間のヒアリング

作業手順や使用機器、温度設定にヒューマンエラーがなかったかを担当者全員で再確認します。
意外な見落としや現場独自の“やり方”が原因のこともあります。

まとめ:粘度異常は「原因究明」と「予防」で克服できる

油脂製品での粘度の急上昇は、どの工場や現場でも起こりうる難しい問題です。
しかし、主な原因を深く理解し、現場ごとのリスクを洗い出したうえで、計画的な温度管理・粘度測定・配管洗浄・作業標準化などの対策を講じることで、多くのトラブルをを未然に防ぐことが可能となります。

突発的な粘度変化が起こった際も、慌てず「工程の記録」「サンプル保存」「現場スタッフへの聞き取り」を徹底すれば、再発防止のヒントが必ず見つかります。

製品品質と生産性を支える粘度管理を強化し、安定した油脂製品の供給を実現しましょう。
今後も、現場のリアルな声を元に工夫や改善事例を積極的に共有していくことが、課題解決の近道になります。

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