界面活性剤の規制が増え従来処方が使えなくなる悩み

界面活性剤規制増加の背景と化粧品業界への影響

日本をはじめとする世界各国で、界面活性剤に対する規制が年々厳格化しています。
この動きは、化粧品・パーソナルケア・洗剤分野など、私たちの生活に身近な多くの製品の製造現場に大きな影響を及ぼしています。

従来使われていた界面活性剤の多くが成分規制や安全基準の見直しの対象となり、これまでの処方がそのまま通用しなくなるという悩みを抱えるメーカーや開発現場が増えているのが現状です。

なぜ界面活性剤の規制が強化されているのか

界面活性剤の規制強化は、主に以下の三点から進められています。

まず1つ目は、「環境への配慮」です。
環境省令の改正やグローバルな持続可能性(サステナビリティ)志向の流れの中で、生分解性に乏しい界面活性剤や、水質に悪影響を与える成分が規制強化の対象となっています。

2つ目は、「消費者の健康意識の高まり」によるものです。
近年、経皮吸収やアレルギー反応、ホルモンかく乱作用が懸念される成分として、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)、パラベンなどが注視され、規制や自主基準の厳格化に繋がっています。

3つ目は、「海外法規との整合性」です。
ヨーロッパ(EU REACH)、アメリカ(EPA)のような先進地域で先行して規制が強化される中、日本やアジア各国でも同様の動きに追従する必要が出てきています。

従来の処方が使えなくなる具体的な悩み

界面活性剤の規制強化により、従来処方の多くが法規制や安全性審査に抵触し、使い続けることが困難になっています。

主な禁止・規制成分の増加

たとえば、旧表示指定成分のうち既に廃止されたものでも、健康被害が取り沙汰される成分や、国際的に危険物質リスト入りした成分は、実際の現場で使用を敬遠せざるを得ません。

界面活性剤においては、上述のSLSやSLES、アルキルフェノールエトキシレート類、カチオン系(特に特定の第四級アンモニウム化合物)、あるいは発がん性や生殖毒性が指摘される成分などが、新たな禁止例として挙げられています。

これらの成分が配合された従来のレシピは、改訂や廃止を余儀なくされ、多くのメーカー開発者はレシピや生産ラインの全面見直しを迫られます。

レシピ改良・再開発のコスト増加

規制準拠のために、原料や処方見直しが必須となるため、新しい界面活性剤への切り替えや技術調査、代替素材の試験評価まで、多大な時間とコストを要します。

代替素材は高コスト化しやすく、従来の性能を保ちつつ消費者ニーズも満たすためには、研究開発リソースの再配分も必要です。

製造や性能面の課題

新規採用する界面活性剤が従来品と同じ安定性や起泡性、乳化力をもたらすとは限りません。
その結果、製造現場で思わぬトラブルが生じるケースも少なくありません。

たとえば、「界面活性剤を変更したら仕上がりの粘度が大きく変わった」「起泡力や洗浄力が足りない」「他成分との相溶性が悪い」「長期安定性試験に落ちた」といった、新たな品質課題に直面することもしばしばです。

規制変更に対応するメーカーの取り組み

このような変化の多い時代において、業界各社はどのように界面活性剤規制の課題を乗り越えているのでしょうか。

リスク評価と成分管理体制の強化

まずメーカーは、世界各国の規制や自主基準情報をすばやくキャッチし、自社製品の全配合成分についてリスク見極めとデータアップデートを行う体制を構築しています。

専門部門や外部コンサルタントと連携し、各国法規の比較表や、今後規制強化が予期される成分リストを保有することで、早めの処方変更に備えています。

サステナブルな新規界面活性剤への転換

原料メーカー各社も、環境対応型や生分解性に優れた新規界面活性剤の開発を急ピッチで進めています。

石油由来に頼らずパーム油やヤシ油、糖由来など自然原料ベースの界面活性剤が多数台頭しています。
具体例として「ココイルグルタミン酸Na」「デシルグルコシド」「ラウロイルメチルアラニンNa」などが、シャンプー・洗顔料への置換候補です。

また、従来品の機能を維持しながら環境負荷を下げる新技術も、界面活性剤製造の現場で注目されています。

エコサートやCOSMOS認証獲得の動き

国際的な自然派コスメ認証であるエコサートやCOSMOSの基準を満たす処方への転換は、日本国内外ともに強まっています。

これらの認証では「生分解性」「原料由来の開示(トレーサビリティ)」「動物実験禁止」なども重視されるため、認証取得に合わせて処方変更を進める企業が増加しています。

消費者とのコミュニケーション強化

成分変更や規制強化に伴い、製品切り替え時には消費者への丁寧な説明が求められます。
特に天然由来成分への変更時には「旧製品と香りやテクスチャが少し変わる理由」「安全への取り組み」などを明確に訴求し、消費者の不安払拭に努める必要があります。

これからの界面活性剤規制動向と開発現場の対策

規制の波は今後数年、さらに高まることが予想されます。

海外展開を見据えたグローバル適合性

海外輸出を視野に入れるメーカーは、単一国基準だけでなくREACHやUS EPA、ECHA(欧州化学機関)など各国規制への準拠がマスト課題となります。

新規開発では「世界で販売できる処方設計」を意識し、最初から多基準の安全性審査や危険物質除外、成分申請書類の整備までを視野に入れた製品開発体制へと移行する動きが加速しています。

オープンイノベーションと産学連携の推進

界面活性剤の新素材開発や処方改良には、自社だけでは限界がある場合も多いため、大学や公的研究機関、他企業と連携したオープンイノベーションが活発化しています。

専門性の高い素材評価やラボ試験、特許取得・情報共有プラットフォームの活用など、多様な知見とネットワークが重要となります。

企業のSDGs・ESG経営とのリンク

界面活性剤規制対応は、単なる法的遵守だけでなく、企業のSDGsやESG経営、さらにはブランドバリューの強化にも直結します。
環境・社会・ガバナンスに配慮した原料調達・製品づくりを行い、透明性を高めることが、消費者や取引企業からも強く求められています。

まとめ:未来に向けた処方開発の鍵

界面活性剤に対する規制がグローバルで厳格化する中、従来の処方やレシピをそのまま維持することは困難となりつつあります。

今後は、最新の規制動向の把握、持続可能性や安全性に配慮した新素材への切り替え、グローバル展開を視野に入れた多国籍基準への適合、消費者への情報開示・コミュニケーション強化が、開発現場の不可欠な対応策となります。

メーカー各社にとっては、リスク管理や研究開発の強化・外部連携なども含め、より柔軟で持続的な開発体制が求められていくでしょう。

そして何よりも、「人や地球に優しい製品づくり」を実現するためには、業界全体でノウハウ・情報を共有し、革新的な界面活性剤・製品開発に挑戦していくことが、これからの持続可能な市場競争力のカギとなるのです。

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