テレセントリックレンズ選定と機上視差ゼロ化での寸法検査精度向上

テレセントリックレンズとは何か?その特徴を解説

テレセントリックレンズは、主に産業用カメラや画像処理システムに利用される特殊な光学レンズです。

その最大の特徴は、測定対象物がレンズから遠ざかったり近づいたりしても、投影される像の大きさが変化しないことです。

通常のレンズでは、被写体までの距離によって像の大きさが変わる「パースペクティブ効果(視差)」が生じます。

しかしテレセントリックレンズは、画像全体で倍率を一定に保つため、正確な寸法測定に最適です。

また、被写界深度(ピントの合う範囲)が深いため、厚みのあるワークや高さが異なる部品でも均一な画像が得られます。

この特性こそが、精密な寸法検査で重宝される理由です。

テレセントリックレンズ選定のポイント

テレセントリックレンズを選定する際には、いくつかの重要なポイントがあります。

測定対象や用途によって最適な仕様が異なるため、以下の観点から慎重に検討する必要があります。

ワークサイズと視野(Field of View)

検査したいワークの最大サイズが視野全体に収まることが大前提です。

視野に対してワークが大きすぎると、端が映らず情報が失われます。

逆に視野が広すぎると、解像度が不足して細部が検出できなくなる場合があります。

カメラのセンササイズと画素数も考慮に入れ、必要な解像度と視野を選択しましょう。

テレセントリシティ(Telecentricity)

テレセントリックレンズにも「物体側テレセントリック」「像側テレセントリック」「両側テレセントリック」といった種類があります。

最も一般的かつ寸法検査で推奨されるのは「物体側テレセントリック」タイプです。

物体側から入射する光線をレンズ軸と平行に制御することで、距離変化による誤差(視差)をほぼゼロにします。

カタログで「テレセントリシティ〇〇ミリラジアン」や「パララックス〇%」といった値が記載されています。

これらが小さいほど視差がなく、より高精度です。

解像力とディストーション

高精度な寸法検査には、解像力(解像度)が非常に重要です。

レンズの解像性能は、線対/mm(lp/mm)やMTF(Modulation Transfer Function)などで表されます。

対象物の微細な構造やエッジを識別するためには、ワークサイズ・カメラ画素数・レンズ解像能力のバランスを取る必要があります。

加えて、ディストーション(歪み)がなるべくゼロに近いレンズを選びましょう。

わずかな歪みでも、寸法検査の精度を大きく損なう要因になります。

作業距離(ワーキングディスタンス)

レンズとワークとの距離を必ず確認しましょう。

装置設計上、十分なスペースが取れるか、またワークの搬送や着脱に支障がないかも重要な要件です。

また作業距離は被写界深度とも関連し、微細な高さ違いにもピントが合うかどうかにも影響します。

価格と導入コスト

高性能なテレセントリックレンズほど価格が高くなる傾向があります。

必要十分なスペック・精度・コストの最適バランスを考えて最終選定しましょう。

導入後のトータルコスト(メンテナンス・交換性など)も見逃せません。

機上視差ゼロ化の重要性と実現方法

寸法検査で真の高精度を実現するには、テレセントリックレンズの選定だけでなく「機上視差ゼロ化」が極めて重要です。

機上視差とは、カメラやレンズが測定系機構に載った状態(=機上)で発生する残留的な視差(パララックス)や光学軸ズレなどを指します。

この残差を限りなくゼロに近付ける工夫が不可欠です。

機上視差の主な発生要因

1. レンズの光学軸とカメラセンサ位置の微小ズレ
2. 機構自体の組付け精度・平行度不足
3. レンズ固定やカメラ装着時の締め付けによる傾き
4. 推奨ワーキングディスタンスから逸脱した使用
5. レンズやセンサ自体の個体差や公差

これらが積み重なると、ミクロンレベルの高精度要求を満たせなくなります。

視差ゼロ化の具体的アプローチ

1. 精密治具による機械組付け
 レンズ・カメラ・ワーク固定治具は、できるだけ高精度で剛性の高い設計にします。

 自社オリジナルの加工治具やアジャスト機構を使い、微調整できる構造を持たせるとより確実です。

2. 組付け時のアライメント調整
 カメラ・レンズ・ワークの各軸が完全に平行・直交するよう、ダイヤルゲージやシムなどでつき合わせて位置決めを行います。

 専用の調整ミラーやコリメータも大変効果的です。

3. 光源の均一化と最適配置
 斜め入射光や散乱光による疑似的な視差も発生するため、照明を斉一かつ適正な角度・距離でセットします。

4. キャリブレーション手順の確立
 標準尺(スケール)やトレーサビリティのあるゲージを用いて、画像中の寸法–実寸対応を必ず正規化・記録します。

 キャリブレーション値は定期的に再点検することもおすすめです。

5. ソフトウェアによる補正
 わずかに残るオフセット(レンズ歪み・センサオフセット)は、画像処理ソフトの幾何学補正で帳消しにできます。

 とはいえ根本的な物理調整が優先で、補正による無理な引き伸ばしは避けましょう。

寸法検査の精度が向上する理由

テレセントリックレンズ選定と機上視差ゼロ化がもたらす寸法検査精度向上の理由は、主に以下の3点です。

1. 視差がなくなることで「測定点のバラツキ」が抑制

視差(パースペクティブ)があると、高さや奥行きの違いによってエッジや形状のサイズが変動します。

テレセントリックレンズと視差ゼロ設計によって、この位置変動がなくなり、ワークどこを測定しても「一定の倍率」「常に同じ大きさ」で再現性のある値が得られます。

2. レンズ歪み・カメラ組付け誤差の寄与を排除

ディストーションや組付け時の僅かな傾き・ズレも寸法誤差の大きな原因です。

光学的・機械的な調整、およびソフトウェアによる最終的な補正によって、測長系全体の線形性・一貫性が大幅に向上します。

3. 生産現場でのトレーサビリティ・品質管理が容易に

パララックスフリーな画像は、生産現場や検査現場でもトレーサビリティを取りやすく、工程監査やISOなどの外部規格の要求にも柔軟に対応できます。

定量的な証明書、校正記録を残しやすくなるため、品質保証の観点でも大きなメリットです。

導入事例と現場での効果

近年、半導体業界や電子部品、自動車部品などミクロン精度を要求される現場で、テレセントリックレンズ+機上視差ゼロ化設計の導入が進んでいます。

たとえば、半導体ウェハ上のパターン寸法やピッチ、リードフレームの幅長検査、電子コネクタのピン間隔測定、自動車用Oリングの外径・内径検査等の場面です。

実際の現場では「従来2μmレベルの測定誤差が、1μm未満の再現性・安定精度に改善した」「ワークの取付状態変化や軽微な高さ違いで検査データのバラツキがなくなり不良流出が激減した」などの効果が多数報告されています。

また、画像検査装置設計者からも「設計初期段階からテレセントリックレンズ・高精度機構一体設計を進めることで、後工程の調整工数や検証負担が大幅に軽減した」と評価される事例も増えています。

まとめ:高精度寸法検査には「最適なレンズ選定」と「視差ゼロ化」が最重要

寸法検査の精度向上を目指すには、テレセントリックレンズの正しい選定と、機械的・光学的視差ゼロ化が不可欠となります。

ワークサイズ、必要解像度、装置設計条件に合わせて最適なスペックのレンズを選び、治具・組付け・キャリブレーションの全工程を一貫して高精度に管理しましょう。

結果として、生産現場での測定バラツキ低減、品質保証強化、クレーム減少、工程短縮、トータルコストダウンといった多大なメリットが享受できます。

今後も産業画像技術の進化に合わせ、テレセントリックレンズと高精度機構設計のノウハウを蓄積し、高度な寸法検査システムの構築にぜひ取り組んでください。

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