編立ゲージが安定しないことで起きる風合い差トラブル
編立ゲージが安定しないことで起きる風合い差トラブルとは
編立ゲージとは、主にニット製品の生産過程で使われる言葉で、一定区間内に編まれる針の本数、つまり「目の詰まり具合」を表すものです。
このゲージが安定しない状態で編み立てが行われると、結果として布地の厚さや伸縮性、肌触りなど、製品の「風合い」に大きな差が生じる可能性があります。
消費者が直接感じる「着心地」や「高級感」、「柔らかさ」、「伸び」など、極めて感覚的な要素であるため、メーカーにとっては見逃せないトラブルの一つです。
本記事では、編立ゲージが安定しないことで発生しやすい風合い差トラブルの特徴や具体的な発生要因、そしてその防止策について詳しく解説します。
編立ゲージが製品の風合いに与える影響
編立ゲージの安定は、製品ごとに一定の品質を確保するための基礎です。
ゲージが一定でなければ、同じ糸やデザインを使っていても、完成した布地の「風合い」が異なるという現象が生じます。
編立ゲージと布地の目詰まりの関係
ゲージが高い(目が細かい)場合、布地は締まって厚みが増し、耐久性が向上する一方で、通気性は低下しがちです。
低い(目が粗い)場合は、その逆となり、柔らかく伸縮性に富み、軽やかな風合いになります。
同じ糸で編んだとしても、ゲージの乱れによって部分的に風合いが異なり、「なんだか硬い場所がある」、「ここだけ伸びる」といった品質差が生じてしまいます。
なぜ風合い差が問題になるのか
アパレル製品では「全体の統一感」がとても重要です。
たとえば、セーターやカットソーの場合、同色・同デザインであっても、身頃や袖などパーツごとに風合いが異なれば、不良品と見なされる可能性もあります。
また、消費者が商品購入後に着用した際「期待した肌触りと違う」「左右で着心地が違う」と感じることが、返品やメーカーへの信頼低下に直結します。
編立ゲージが安定しない主な原因
ゲージが安定しない要因は、機械・資材・人的要因など多岐にわたります。
ここでは、主な3つの視点から原因を整理します。
1. 編機本体の調整不良
長時間稼働した編機は、経年によって針やカムの摩耗、フロント・バックベッドのズレなどが生じ、設定したゲージと実際の目詰まりが異なる場合があります。
定期的な点検や調整を怠ると、同じセッティングでも日によって風合いが変わってしまうことがあります。
2. 糸の張力管理のムラ
原料となる糸の太さや撚り、オイル量、張力のかけ方などは、風合いに大きく影響します。
糸のロットごと・編み立てタイミングごとに微細な違いが生じやすく、安定した張力を保たないと、編地の締まり具合にバラツキが生まれます。
また、糸通しルートや供給装置への詰まり・トラブルが起きても、想定外のゲージずれにつながります。
3. 生産現場での管理不足
編み立て作業者のスキルや現場の管理体制によっても、編立ゲージの安定性は左右されます。
昼夜や天候など外的条件の変化、あるいは複数名が交代で作業するケースでは、同じ設定値でも再現性が損なわれやすくなります。
さらに、作業マニュアルに数値管理の徹底がなく、「感覚」で調整している現場では、安定した品質確保が難しくなります。
風合い差トラブルが発生した際の具体的な事例
実際のアパレル現場や生産拠点で起きた風合い差トラブルには、いくつか共通するパターンがあります。
製品内での強い風合い差
たとえば、同じセーターの胴体部分と袖部分を別ラインで編み、それぞれのゲージ管理が不十分だった場合、実際に縫製したときに「袖だけ柔らかく、ボディは硬い」といった現象が発生します。
また、肩線や脇線部分だけ風合いが変わることで、着用時にごわつきやシルエットの崩れを招きます。
色や柄による風合いの違い
多色使いのニットの場合、特定の色のみロット差や糸質の違いによりゲージのばらつきが顕著に現れることがあります。
見た目は均一でも、触ったとき、着用したときに「違和感」があり、クレーム化するケースがあります。
着用後の耐久性や伸びの差
風合い差トラブルにともない、洗濯や数回の着用で部分的に伸びて型崩れする製品や、早期に穴が空く製品も少なくありません。
これはゲージ不安定による編地の脆弱化が原因で、生産段階だけでなくアフタークレームにつながりやすい現象です。
風合い差トラブルの防止策と品質管理のポイント
編立ゲージの安定化は、最終製品のクオリティ保証の根幹となります。
ここでは、実効性の高い品質管理の方法と現場で実践できるチェックポイントを紹介します。
機械メンテナンスの徹底
定期的に専門技術者による編機の点検・分解・調整を行い、針やカム、ベッドの摩耗に早期対応することが重要です。
また、ゲージ検査やサンプリングテストを組み込むことで、微細なズレも早期発見が可能になります。
糸の管理・ロットごとの差異チェック
糸を仕入れるたびに、撚りや太さ、風合いを確認し、ロット番号ごとに管理します。
同一ロット内での裁断・編付け、また異なるロットを混ぜて使わないなどの管理徹底が、品質ばらつき防止の基本です。
糸供給ルートも定期的に清掃し、スムーズな供給ができているか現場で随時チェックを行います。
明確なマニュアル・数値管理の導入
作業担当者の個人技術や経験値に頼るのではなく、ゲージ、張力、編立条件について明確な基準値を設定し、毎ロットごとにチェックシートに記録する体制を整えます。
また、可能であればIoT対応の管理機器や自動計測装置を導入し、デジタルデータとして管理することで、人的ミスや伝達漏れも防げます。
段階的なサンプル確認とフィードバック
量産前段階においては、実際の生産と同条件でサンプルを複数作製し、実際の風合いを事前確認します。
サンプルと量産品を並べて比較し、微妙な風合いの差も事前に察知。
問題があれば早期にゲージや機械条件を修正することが「大きなロスを未然に防ぐ」鍵となります。
まとめ:高品質ニット製品には編立ゲージの安定が不可欠
編立ゲージは、アパレル・繊維業界において製品の「見た目」や「触感」だけでなく、「着心地」「耐久性」に大きな影響をもたらす重要な要素です。
ゲージが安定しないまま生産を行えば、外観では分かりにくい品質不良=「風合い差トラブル」を引き起こし、最終的には消費者からの信頼を損ねることにつながります。
そのため、機械の調整・メンテナンス、糸管理、作業手順の標準化や数値管理、検査体制の徹底など、多角的な品質管理の取り組みが不可欠です。
特に現場スタッフの教育や、数値による管理の徹底は、長期的な品質安定化には欠かせません。
今後、競争が激化するアパレル市場においては、「差別化できる品質」の持続が重要です。
風合い差のない、安定した高品質製品づくりを通じて、消費者に安心と満足を提供しましょう。