ファッションOEMにおけるトレーサビリティ確保と素材履歴管理

ファッションOEMにおけるトレーサビリティ確保の重要性

ファッション業界は、今や単なる流行やデザインだけでなく、サステナビリティや透明性を重視する時代へ移行しています。

特にOEM(Original Equipment Manufacturer)による製造では、ブランドが消費者へ確かな品質や倫理的な背景を保証するための「トレーサビリティ確保」が不可欠となっています。

トレーサビリティは、製品が「いつ、どこで、誰によって、どのような素材・工程で」作られたかを追跡・記録できる仕組みのことです。

この分野で信頼性を担保することは、サステナブルファッションやエシカル消費が求められる現代において、ブランドイメージや消費者との信頼構築に直結します。

OEMプロセスにおけるトレーサビリティの流れ

OEMはファッションブランドが企画し、海外や国内の工場など外部パートナーに製造委託する形態です。

ブランド側が直接製造の全工程を把握しにくいという課題があります。

ここでトレーサビリティ確保のための仕組みが必要になります。

素材調達段階でのトレーサビリティ

最初のポイントは素材調達です。

綿・ウールなどの天然繊維、再生繊維、合成繊維など、素材の原産地がどこか、どのように生産・流通されたかを明確にします。

グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)やリサイクル素材の認証などで証明書を取得したり、生産農家や紡績工場との記録共有が求められます。

たとえばオーガニックコットンであれば、有機栽培農家の記録、輸出・輸入時の書類、紡績工場のロット番号と一貫した管理がポイントです。

生産工程での履歴管理

OEM工場での裁断・縫製・仕上・検品など、各工程ごとに担当者やライン、バッチ情報、設備状況が記録されることで、万が一問題が生じた場合にも発生源や原因を遡ることができます。

近年は製造現場ごとにQRコードを使い、ロットごとの生産状況や工程担当を電子化してクラウドで一元管理するケースも増えています。

IP(Intellectual Property:知的財産権)対策や不正流用防止にもつながります。

物流・流通段階でのトレーサビリティ

完成した製品は倉庫、輸送、卸問屋、小売などを経て消費者の手に渡ります。

この各段階でもロット番号やQRコード、RFIDタグを付与し、製品がどの経路で移動し、どの在庫から出庫されたのかまで追跡できる体制が重要です。

ここまで一貫して履歴が管理されることで、リコール(回収)や不具合発生時の対応が格段に早くなりますし、消費者へ説明責任が果たせる環境になります。

素材履歴管理の具体的な手法

素材履歴管理の項目には、「素材種類」「原産地」「認証情報」「混率」「染色・加工履歴」「輸送過程」「入出庫履歴」など多岐に渡ります。

これらをアナログ(紙台帳や伝票)で行うことは煩雑で、ヒューマンエラーのリスクも高まります。

したがって、多くのファッションOEM現場ではデジタル管理へのシフトが進んでいます。

ERPシステムやサプライチェーン管理ツールの活用

ERP(Enterprise Resource Planning)システムや、サプライチェーン管理(SCM)のための専用ソフトウェアを導入する企業が増えています。

これにより、素材の入荷から製品出荷までバーコードやRFIDタグで一元管理し、仕入先や生産工場ともリアルタイムで情報共有可能です。

取引ごとに自動的に記録され、人為的ミスの防止や業務効率化、迅速なトラブル対応も実現できます。

ブロックチェーンによる信頼性強化

さらに、最新事例として注目されるのがブロックチェーン技術の活用です。

分散型台帳によって、素材の生産から流通・販売まで一貫した改ざん不能な記録を持てるため、消費者自身がスマホでQRコードから履歴情報を確認できる取り組みも始まっています。

これはグリーンウォッシュ(見せかけのサステナビリティ)の抑止や、海外からの原材料調達の透明性確保にも大きな効果を発揮します。

トレーサビリティ確保のメリット

ハイブランドからカジュアルブランド、スポーツアパレルまで幅広くOEMを活用する現場で、素材履歴&トレーサビリティが確立されると、次のようなメリットがあります。

消費者への信頼性向上・ブランド価値アップ

「どのような原産地・工程を経て作られた服か」が説明でき、海外工場でも公正・適切な労働環境を証明できることは、購入の決め手となりやすいです。

特にSDGsやエシカル消費志向の高まりから、自社の社会的責任(CSR)アピールにも有効です。

クレーム・回収時の迅速な対応

万が一、製品不良、異物混入、品質問題が発生した際、履歴が明確ならば「どの工場で、どのバッチの、どの素材由来か」を特定しやすく、被害拡大防止・効率的なリコールが可能となります。

グリーン認証・規制対応

EUの「エコデザイン規則」や日本の「サステナブル報告義務化」など各国規制が進むなか、履歴情報の管理・開示が輸出条件・認証取得には不可欠です。

また、行政の監査や第三者機関の認証手続きで「証明できる体制」が信頼性向上や新規取引の獲得につながります。

全体最適化・コストダウン

部材ごと・工場ごとに詳細な記録が残るため、在庫管理や生産計画の精度向上、不良やロスの削減、各工程の効率化・最適な発注の実現などサプライチェーン全体のコストダウンにも貢献します。

OEM先選定・協力強化のポイント

トレーサビリティ確保は、ブランド側だけの努力では難しく、OEMパートナーやサプライヤーとの協力体制が不可欠です。

具体的に押さえるべきポイントを解説します。

現地視察・監査の実施

実際に生産拠点を訪問し、「どこまで履歴を電子化・記録しているか」「工程ごとに書類やデータが揃っているか」を確認するのが大切です。

専門の監査機関に委託するのも一つの方法です。

取引条件への明記・契約管理

素材履歴の開示や工程記録の提供・保存義務をOEM契約や基本取引条件として明記し、違反時の対応やトラブル時の対応ルールもあらかじめ策定しておきます。

ITシステムの標準化・教育

データ連携のためのシステム・フォーマット統一や、現地担当者へのトレーニングなども重要です。

特にグローバルOEMの場合は言語やITリテラシーの違い・法令の差異もふまえて実行体制を固めましょう。

今後の展望と課題

ファストファッション時代からサステナビリティ重視へと価値観が変化する中、ファッションOEMでのトレーサビリティ&素材履歴管理は今後さらに重要性を増していきます。

今後の課題としては、以下が挙げられます。

・業界全体でのデータ標準化、システムの共通化・普及

・サプライヤーや中小OEM業者まで含めた教育・支援の充実

・技術進化(RFID・ブロックチェーン・AI活用など)と現場コストや運用負担の最適化

・各国規制や消費者ニーズ変更への柔軟な対応力

これらの課題を乗り越えていくことで、さらなる品質・ブランド力向上が図れます。

まとめ

ファッションOEMにおけるトレーサビリティ確保と素材履歴管理は、現代のブランド運営やサプライチェーン管理における最重要テーマのひとつです。

透明性・証明力がブランド価値や信頼構築につながるだけでなく、市場拡大と消費者満足・社会的責任を果たす上でも欠かせない取り組みです。

デジタル化の加速とパートナーとの連携強化を進め、グローバルな基準に準じた体制を構築しましょう。

そうすることで、ファッション業界の持続的な成長と消費者への新たな価値提供が両立できるはずです。

You cannot copy content of this page