超純水導電率計のセル定数校正とCO₂吸収影響の除去
超純水導電率計のセル定数校正とは
超純水導電率計は、極めて低い導電率を持つ超純水の品質評価や管理に欠かせない計測装置です。
一般的な導電率計と比べ、計測誤差が大きく結果に現れるため、正確な導電率値を得るためには、より厳密な校正が求められます。
このときポイントとなるのが「セル定数」の正確な校正です。
セル定数(cell constant)とは、導電率セルの形状や電極間の距離、面積の構造的要素に由来する値であり、単位は1/cmで表されます。
導電率計では、測定セルの両極間に電圧をかけて流れる電流から抵抗値を測定しますが、実際の導電率値は「測定値×セル定数」として算出されます。
このセル定数がずれていると、純水や超純水のようなごく低い導電率でも結果に大きな誤差が生じてしまいます。
セル定数校正の基本手順
標準溶液を用いた校正
セル定数の校正には、あらかじめ導電率の値が正確に分かっている標準溶液(JIS規格溶液など)が使われます。
一般的な手順は、まず測定セルに規定温度(多くは25℃)に調整した標準KCl溶液を注入し、導電率計で抵抗または導電率を測定します。
測定値と標準溶液の既知導電率値から下記の式によりセル定数を算定します。
セル定数(1/cm)= 標準溶液の導電率(S/cm) ÷ 測定値(S)
この値を装置やソフトウェアに登録し、超純水測定時には、この校正済みの値を用いて計算することで、より正確な値が得られます。
超純水校正時の注意点
超純水の導電率は極めて低いため、器差や外乱、セル内部の気泡、汚染などの影響を受けやすい特徴があります。
校正および実際の測定時にはセルの清掃状態や標準液の温度管理、セル内への気泡混入防止など、きめ細やかな取り扱いが求められます。
また、標準溶液による校正は定期的(例:月1回~数ヶ月に1回)に実施し、装置本体の経時変化によるズレを防ぎます。
CO₂吸収による導電率値の影響
なぜCO₂吸収が問題になるのか
超純水は、わずかな不純物でも導電率値が大きく変動します。
なかでも空気中のCO₂(二酸化炭素)は超純水測定において重大な外乱要因です。
CO₂は空気と接触するとすぐに水に溶け込み、炭酸(H₂CO₃)として存在します。
炭酸は水中で一部が電離し、HCO₃⁻やH⁺イオンを生成するため、わずかな量でも超純水の導電率を顕著に上昇させます。
通常、超純水の理論限界の導電率は18.18 MΩ・cm(0.055 μS/cm前後)ですが、CO₂を吸収すると、測定値は非常に早い速度でこの値から逸脱します。
CO₂吸収を防ぐための測定環境
超純水の正確な導電率測定を行う上で、いかにCO₂影響を排除するかが最大の課題です。
そのためには以下のような対策が有効です。
- 密閉された測定セルやバイパスラインを使用し、外気との接触を避ける
- 測定時はサンプリングポイントで連続流路状態を維持し、充填式よりも開放時間を短縮する
- 装置材質はCO₂透過の少ない材質(ガラスや金属)を選ぶ
- ガスパージ(高純度窒素等)を用いてセル外部を置換する
- 測定フロー系の設計を工夫し、最適流速を維持する
また、室内空気のCO₂濃度にも注意し、換気や適切な設計が必要です。
測定操作の長期中断や開放状態での保管は避けるのが賢明です。
CO₂吸収の影響除去の実践例
バイパス測定ラインによる解決
超純水供給設備などでは、連続循環流路の途中に密閉型測定セルを配置し、測定直前まで空気と遮断してサンプリングする手法が採用されています。
これにより、超純水がCO₂と接触するのを最小限に抑え、理論限界に近い導電率値が安定して得られます。
密閉型セルの場合は、流速・撹拌の設計、セル材質の選定、温度安定化が重要です。
自動校正機能付きの計測器では、流路をクローズ状態に保ったまま標準溶液投入・排出を自動化できるものも増えています。
測定方式の工夫
滴下型サンプル測定やバッチ式サンプリングの場合には、できる限り測定部を密閉する、もしくはほとんど開放しない工夫が必要となります。
測定溶液を入れる直前まで空気に触れさせないよう配慮する、または測定直後素早く計測し、測定時間を最小限に留めることでCO₂影響の増幅を防ぎます。
超純水は保存中もCO₂を吸着しやすいため、サンプリング時はバイアル瓶を使用して密閉状態を維持する、あるいはより短時間で測定を終えるといった手順管理も重要です。
セル定数校正用標準溶液とトレーサビリティ
セル定数校正にあたり、使用する標準溶液の品質・正確性も重要です。
日本ではJCSSやJIS規格などに準拠した、導電率の国家計量標準へのトレーサビリティが確立された標準溶液が多く販売されています。
これらの標準液は、0.01 mol/L、0.1 mol/L、1.0 mol/L KCl溶液など、様々な濃度範囲で用意されており、導電率値も25℃換算で明確に規定されています。
超純水導電率計の場合は、できるだけ低濃度域(例:1.413 μS/cm, 0.147 μS/cmなど)を選び、測定範囲と近いレンジでの校正が推奨されます。
定期的な標準液の購入・交換、温度管理、保管方法にも注意を払いましょう。
標準液自体もCO₂吸収には弱いため、使用後は速やかに密封して保存することが重要です。
まとめ:適切な校正とCO₂管理が高精度測定につながる
超純水の導電率測定は、水質管理・電子材料製造・医薬・半導体業界をはじめとする多くの先端分野で求められています。
その正確な測定には、導電率計のセル定数を厳密に校正し、空気中CO₂の混入影響を最小限に抑える環境制御が欠かせません。
校正方法をよく理解し、適切な標準溶液を使って定期的に検証を行うこと。
そして、測定プロトコルや装置設計の工夫でCO₂の混入リスクを排除することが、高精度かつ安定した超純水導電率値獲得のカギです。
実験や装置管理の現場でこれらの基本ポイントを徹底することで、超純水品質の信頼性が高まり、その後の工程・製品の品質保証へも一役買うことができるでしょう。