塗装の吸い込み量が毎回違う“木材ならではの不確実性”

塗装の吸い込み量が毎回違う理由

木材に塗装を施す際、誰もが経験する悩みの一つが「吸い込み量が毎回違う」ことです。
同じ種類の木材を使用し、同じ塗料と工程で塗装しても、一度目と二度目で全く同じ仕上がりになるとは限りません。
この現象は、天然素材である木材ゆえの性質に由来しています。

そもそも木材は生きた植物から切り出されるため、一本ごとに繊維構造や含水率、密度などが異なります。
また、樹種ごとの違いだけでなく、同じ木から切った板でも部位によって性質が微妙に変化します。
そのため、塗料が木材へどれだけ染み込むか、つまり吸い込み量には大きな個体差があるのです。

木材の吸い込み量に影響を与える要素

1. 木材の樹種と組織構造

木材は針葉樹と広葉樹に大きく分かれます。
針葉樹は一般的に密度が低く柔らかいものが多いため、塗料の吸い込み量が多くなりがちです。
一方、広葉樹は組織が緻密で硬いものが多く、吸い込みは比較的少ない傾向があります。

同じ樹種であっても、年輪の幅や心材・辺材の割合、細胞の並び方によって吸い込み具合は大きく異なります。
さらに、木目(導管や線維)の向きも吸い込み量に影響を与えます。
たとえば、木口面は板の側面や表面より塗料が格段に吸い込まれやすい部分です。

2. 含水率

木材の含水率は、塗装時の仕上がりに大きな影響を与えます。
含水率が高いと、木材内部に水分が多く含まれているため、塗料成分が吸い込まれにくくなる場合もあります。
一方、乾燥しすぎて繊維がスカスカの状態では、塗料が急激に吸い込まれてしまうこともあります。

木材の安定した仕上がりを得るためには、適度な含水率(一般的には10%前後)を保つことが推奨されています。
しかし、実際に使う木材の含水率を常に一定にすることは難しく、それが吸い込み量の不確実性を生む大きな要因となります。

3. 加工方法や表面の状態

木材の表面がどれだけスムーズか、または粗いかによっても塗料の吸い込み量は変わります。
サンダーなどで細かく研磨した面は塗料の吸い込みが少なく、ざっくりとしたカンナ仕上げや製材面では吸い込みが多くなる傾向があります。

また、ヤニやオイル分が多い樹種では、これらの成分が塗料の浸透を妨げて吸い込みが一定しない場合もあります。

不確実性を前提とした塗装の考え方

「木材の吸い込み量が毎回違う」という現象は、木という素材の個性が現れる場面です。
これを欠点と捉えがちですが、自然の素材ならではの味わいや表情が生まれる源でもあります。

塗装作業時には、この不確実性を理解し、「一律な仕上がり」に固執しすぎず応用力を持つことが重要です。
たとえば、吸い込みの多い面は下塗りの回数を増やしたり、シーラーを併用する、といった調整が求められます。
また、表面の研磨や塗料の希釈率を現場ごとに見直すことで仕上がりのバラつきを減らすことが可能です。

プロが実践する吸い込み量の調整ポイント

1. プライマー・シーラーの使用

木材用の下塗り剤(プライマーやシーラー)は、吸い込みを一定に抑えるために有効です。
これらをしっかり塗布することで木材の表面を一度「目止め」し、表面の吸収性を均一化します。

良質なシーラーは微細な木の孔や導管にも浸透し、塗料が過剰に吸い込まれることを防ぎます。
下塗りが不十分だと表面のツヤむらや塗膜の割れが起こりやすくなるため、丁寧な前処理が肝心です。

2. 状況に応じた塗り重ね回数の調整

塗料の吸い込みが激しい木の場合は、下塗りや中塗りの回数を増やすことがよい結果につながります。
具体的には、1回目の塗りで十分な量を与えつつ、乾燥後に再度薄く塗り重ねていきます。

逆に吸い込みが少ない木では、厚塗りにならないよう注意し、希釈率や使用量を減らすことが大切です。

3. 表面の研磨調整

塗装前の研磨にもひと工夫が必要です。
一般的には、仕上げサンドペーパーは#180~#240程度がおすすめです。
粗すぎると過度な吸い込みと染みになり、細かすぎると塗料の密着不良が起こることもあります。

また、木目の凹凸が強い材種では、導管を軽く埋めるためのパテや目止め材を使うのも効果的です。

塗装と木材の“個性”を楽しむ

塗装の吸い込み量の違いを完全にコントロールすることは、実はとても難しいことです。
だからこそ、塗装のプロやDIY愛好家の多くは、素材の個性を受け入れ、その都度ベストな仕上がりを追求しています。

たとえば、同じ塗料でも色味やムラ、ツヤの出方が変わるのは、世界に一つしかない「作品」を生み出せる大きな魅力です。
無垢材にしか表現できない自然な風合いや、時間が経るにつれ深みを増す味わいも、木材ならではの不確実性から生まれる賜物です。

塗装吸い込み量のトラブル事例とその対策

1. ムラ・色ムラ

吸い込みが激しい部分にだけ色が濃くなったり、ツヤが消えてしまうことがあります。
この原因は下地処理不足や吸い込みコントロールの失敗によることが多いです。
プライマーによる“目止め”、十分な乾燥、過不足ない研磨が大切です。

2. 塗膜の割れや剥離

必要以上に塗料を吸い込んだ部分では、その後の塗装層が厚くなりすぎて塗膜が調和しません。
結果的に割れや剥離といったトラブルが生じます。
塗装前の試し塗りや、工程ごとの十分な乾燥でトラブルを回避しましょう。

3. 吸い込みすぎによる経済的ロス

無駄に塗料を消費したり、仕上がりに納得できず追加作業が発生することも、適正な下地づくりと吸い込み調整で大幅に減らせます。

まとめ:木材塗装は不確実性を楽しむもの

天然の木材はひとつとして全く同じものは存在せず、その自然な“ばらつき”が魅力でもあり、難しさでもあります。
塗装の吸い込み量が毎回違う現象は、木材本来の個性が現れた結果です。
この不確実性をうまく味方につけ、仕上げや色味の調整を都度行うことで、より魅力的な作品づくりが楽しめます。

木材塗装に取り組む際は、セオリーを守りつつも「木によって違うのが当たり前」という柔軟な考え方を持ちましょう。
プロの現場でも、不確実性と向き合いながらベストな答えを都度導き出しているのです。

塗装の吸い込み量という“木材ならではの不確実性”を理解し、楽しんで活用することで、唯一無二の仕上がりと木の魅力を最大限に引き出しましょう。

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