食品製造の外注管理で頻発する“想定外の品質差”

食品製造の外注管理で頻発する“想定外の品質差”とは

食品製造業界では、安全で高品質な製品を消費者に届けるため、厳格な品質管理が欠かせません。
近年、コスト削減や生産能力強化などの理由から、食品メーカーが製造の一部、あるいは全てを外部に委託するケースが増加しています。
しかし、外注によって想定外の品質差が頻発し、クレームやリコールにつながる事例も少なくありません。
なぜ外注管理では品質差が生まれるのか、その要因やリスク、そして未然に防ぐためのポイントについて詳しく解説します。

外注先で品質差が発生する主な要因

1. 製造環境・設備の違い

食品メーカーが自社で管理している工場とは異なり、外注先ごとに製造環境や設備のスペック、清掃・衛生基準が異なる場合があります。
例えば、同じ製品指示書に従っていても、設備の性能や取り扱いの熟練度がわずかに異なっていることで、製品の見た目や食感に予期しない変化が出ることがあります。
また、一部原材料の保管温度や湿度、交差汚染などのリスク管理が異なる工場では、品質差や安全性の問題が生じやすくなります。

2. 作業者の経験・教育レベルの差

外注先の現場担当者と自社で長年培った技能者とでは、同じマニュアルを読み取っても解釈や実行に差が生じることがあります。
定められた手順や注意事項が徹底されていない場合、手順の“省略”や“自己流アレンジ”が起こり、結果として製品のばらつきや劣化が発生します。
教育時間の確保や、新しい人員へのフォロー、日々の声掛けなど、現場のコミュニケーション不全も想定外の品質低下につながる要因です。

3. 品質基準や合意内容の不明確さ

そもそも自社と外注先とで、「どのレベルで何を品質とするのか」の共通認識が曖昧になっているケースも多く見られます。
たとえば、見た目の色あい、粘度、風味などを数値で示さず感覚的な表現で伝えている場合、外注側が「合格」と判断した品が自社の基準では不合格となることが珍しくありません。
また、「許容範囲」「NG項目」「仕様変更手順」など契約時の合意が曖昧なままだと、トラブルの原因となります。

“想定外の品質差”から生じるリスク

顧客からのクレーム増加

外注先の品質差によって、消費者の手に渡った際に「味が違う」「色や形状が変わった」「食感が悪い」「異物が混入していた」などのクレームに繋がります。
特にリピーターが多い商品では、いつもの味や品質を期待していた顧客からの不満が殺到し、企業への信頼低下を招きます。

商品の回収・リコール発生リスク

アレルギー物質の表示漏れ、規格外の異物混入、賞味期限偽装など、重大な品質事故が起きた場合、回収やリコールに発展する可能性があります。
こうしたリコール対策には多額の費用や人的リソースがかかり、企業イメージにも大きなダメージを与えかねません。

外注コスト・ロスの増加

品質を安定させるための再教育や追加検査、手直し品の廃棄や返品対応など、想定外のコストや時間的ロスが発生します。
また、納期遅延や取引停止にまで発展した場合、サプライチェーン全体に悪影響を及ぼすケースもあります。

“想定外の品質差”を防ぐ具体的な対策法

1. 合意仕様の明確化と文書化

外注管理を開始する前に、あいまいな基準や言い回しを撤廃し、「図面」「規格」「検査基準」などを全て文書で明確に定めます。
主観ではなく客観的な数値や写真を用いた品質規格書を作成し、双方で合意のもと正式にサインを交わすようにしましょう。
また、想定外の仕様変更やイレギュラー対応が発生した場合の協議フローも予め定めておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

2. 工場監査や現場視察の実施

定期的な外注先工場の監査は、衛生状態や作業手順が契約通りに守られているかを確認する絶好の機会です。
五感を使った現場視察、突発的な抜き打ち検査、担当者との直接対話などを通じて、日常の問題点や改善余地を早期発見できます。
工場監査のチェックリストや評価表も、できれば自社独自のポイントを反映させて作成し、監査結果は必ずフィードバックと改善提案につなげましょう。

3. 外注担当者とのコミュニケーション強化

単なる取引先ではなく、一緒に品質を作り上げていく「パートナー」の意識を持つことが重要です。
製品を納入するまでの流れ、異常時やトラブル時の連絡体制、日々の進捗報告・フィードバックループなど、綿密なコミュニケーションを築く努力を怠らないようにしましょう。
共に困難を乗り越える関係になれば、現場の小さな変化にも迅速に気づき合えるようになります。

4. 社内・外注先への定期教育の実施

新たな技術や品質基準、商談内容など、その都度教育資料をもとに社内・外注先の双方へ勉強会や研修を開催しましょう。
特に外注先の作業現場リーダーや担当者層は、現場の状況を正しく汲み取り、迅速に現場へフィードバックできる役割者としてキーパーソンになります。
eラーニングやリモート研修、現場ロールプレイングなど、時代に即した教育手法を柔軟に取り入れることも効果的です。

外注管理の成功事例と失敗事例

成功例:大手ベーカリーの製造委託

全国展開するベーカリーチェーンでは、外注先ごとに品質基準や思い描く「おいしさ」の基準にズレがあり、初期段階では想定外の品質差が発生しました。
そこで本部主導で写真付きの仕様書を作成。
細かな成型方法や焼成温度、時間を工場ごとに摺り合わせ、事前の立ち会い試作や現場見学会を頻繁に実施しました。
また、外注先との定期品質レビューと現場意見交換会を導入。
半年で品質のバラツキが大きく改善し、クレーム件数も激減しました。

失敗例:惣菜メーカーの急な外注切り替え

繁忙期対応のため、複数の新規外注先へ生産を一気に委託したある惣菜メーカーでは、基準書の準備や現場教育が不十分のまま稼働を開始してしまいました。
結果、包装ミスや原料の投入間違い、不揃いな見た目の製品が出荷され、大規模な返品とお詫びの対応に追われる事態となりました。
この教訓から、次シーズン以降は余裕を持って外注先の教育・監査体制を強化し、短期間の大量委託が発生しない生産計画に刷新しました。

まとめ:食品製造の外注品質差をゼロに近づけるには

食品製造の外注管理における“想定外の品質差”は、たった一つの気の緩みや連携ミスから、企業にとって重大なリスクとなり得る問題です。
しかし、事前の基準明確化や現場教育、監査体制、コミュニケーション力の強化によって、限りなくゼロに近づけていくことは十分可能です。
「自社と同じ目線、自社と同じ品質」を常にゴールに据え、パートナーとしての信頼関係を築きながら、地道にPDCAサイクルを回していきましょう。
この積み重ねこそが、顧客満足と企業ブランド力向上の第一歩となるのです。

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