焼成後の寸法測定で想定外の縮みが発生する現実
焼成後の寸法測定で想定外の縮みが発生する現実
焼成工程は、セラミックスや金属部品の製造現場において不可欠なプロセスです。
原材料を成形し、一定温度で焼成することで、強度や耐久性、化学的安定性を付与します。
しかし、焼成プロセスには思わぬリスクも潜んでいます。
それが「寸法の想定外縮み」です。
寸法精度が要求される部品において、この現象は品質問題や工程遅延の要因となります。
なぜ焼成後の寸法が想定より大きく縮むことがあるのか、その現実と克服方法について解説します。
焼成による寸法変化の基本メカニズム
焼成と収縮の仕組み
焼成とは、製品を高温で加熱することで、化学反応や構造変化を促すプロセスです。
セラミックスを例に取ると、原料の粒子同士が焼結によって密着し、空隙が減少します。
その過程で、製品全体が収縮します。
この「焼結収縮」は一般的に想定される現象です。
そのため、工程設計者は、焼成による収縮率を見込み、あらかじめ設計寸法に「焼成収縮分」を加味して成形型を設計します。
理論値と現実のギャップ
しかし、実際の量産現場では「設計値より大きな縮み」が起きることが珍しくありません。
たとえば、設計上8%の収縮を見込んで型設計したにもかかわらず、焼成後に10%以上収縮し、規格外の製品となるケースがあります。
このギャップは現場で深刻な問題を引き起こし、再成形や廃棄ロスに直結します。
焼成後に寸法が想定外に縮む主な原因
1. 原料特性の変動
原料の粒径や分布、形状、組成は焼結挙動に大きく影響します。
異なるロットや仕入先変更、原料の保管・劣化によって、想定より焼結性が高くなり、収縮率が増える場合があります。
特に、粒子が細かくなると空隙が減りやすくなり、より小さく焼き締まる傾向が強まります。
2. 成形密度のばらつき
成形時に加える圧力や造形方法の微妙な違いも、焼成収縮に大きな影響を及ぼします。
成形密度が不均一だと、密度の高い部分は収縮が小さく、低い部分は大きく縮みます。
全体の平均密度が計画より低ければ、焼成後の完成品は想定より小さくなるのです。
3. 焼成条件の変動
実際の炉温(昇温速度、最高温度、保持時間)、炉雰囲気(酸素分圧、水分量など)も寸法変化に影響します。
わずかな温度計の狂い、炉内の位置による温度勾配などが、熟成度合いの違いを生み、収縮率に差をもたらします。
また、一括焼成する場合、内部と外部で温度や雰囲気のバラツキが大きくなる傾向もあります。
4. 脱バインダーの不完全・過剰
成形体には、結合材(バインダー)が含まれていることが多いです。
焼成前の脱バインダー工程でこれが不十分だと、焼成中に急激なガス発生が起き、内部の空洞や割れにつながります。
一方、脱バインダーが過剰だと、焼成開始時に微細な空隙が残りやすくなり、収縮度が増す場合があります。
5. 製品設計段階での誤差
設計時に用いる収縮率が、原料や条件によって細かく異なることを見落とし、汎用データを流用してしまうケースも少なくありません。
また、形状によっても収縮の仕方(等方・異方)が異なるため、複雑形状品の場合は想定外の収縮が起こるリスクが高くなります。
焼成後寸法測定の工程管理ポイント
原料管理の徹底
原料ロットごとの粒度分布や組成分析を実施し、重要パラメータが計画範囲外の場合は工程調整あるいは原料変更を行う必要があります。
また、原料の受入時検査、保管状態の管理も収縮バラツキ防止に有効です。
成形工程の安定化
成形時の圧力や注入速度を厳密に管理し、成形密度にバラツキが生じないようにします。
サンプル体積や重量をロットごとに測定し、成形密度を定量的に把握しましょう。
焼成条件モニタリングと装置校正
炉の温度センサーやコントローラーは定期的に校正し、実際のサンプル温度との比較検証が重要です。
焼成雰囲気の酸素分圧や環境湿度も記録・分析しておき、不適な条件になった場合は速やかなフィードバックを行います。
脱バインダー工程の最適化
脱バインダーの温度プロファイルや保持時間を最適化し、分解ガスの排気能力や雰囲気流量も制御します。
製品の体積やバインダー量に応じてプロファイルを調整することが、異常な収縮やクラック発生防止につながります。
継続的な寸法データの蓄積と分析
測定データを蓄積し、収縮率や製品寸法の推移を統計的手法で管理しましょう。
異常値が出た場合は、前後工程データと照合し要因分析を迅速に行うことが重要です。
また、歩留まり向上や工程改善のための基礎データとしても活用できます。
想定外収縮への現場対応策
現場ですぐに実践したいポイント
・新規ロットの原料を使用する場合は、必ず試作による収縮率テストを実施する
・成形サンプルを焼成し、寸法データを測定・分析することで、型寸法や工程条件をリアルタイムで補正する
・炉内の温度分布や雰囲気測定を定期的に実施し、不均一な焼成がないよう配置や詰め方を工夫する
・設計側との情報共有体制を強化し、小さな変動でも速やかに伝達できる運用をつくる
長期的な改善アプローチ
・各工程ごとのバラツキ要因を洗い出し、FMEA(故障モード影響解析)などの手法で工程能力を向上させる
・IoTやAIを活用した生産管理システムを導入し、焼成履歴や原料情報と寸法測定データを統合管理する
・新規材料やプロセスを採用する場合は、量産試験を段階的に実施し、信頼性ある縮率データを取得する
寸法測定における注意点と品質保証
正確な測定方法の採用
焼成後の製品寸法測定は、マイクロメーターやノギスなどで確実に実施します。
測定基準の統一や、作業者による測定ばらつきの最小化も大切です。
また、測定温度や湿度の影響を考慮し、標準環境下、もしくは補正値を用いることで、安定したデータ管理が可能となります。
統計的品質管理(SPC)の活用
得られた寸法データは、管理図やヒストグラムなど統計的管理手法で傾向を定量化します。
小さな異常を見逃さないことで、量産不良の未然防止が実現できます。
また、不良の発生原因を早期にフィードバックし、工程改善に役立てることが重要です。
まとめ:焼成後の寸法測定は多因子管理がカギ
焼成後に想定外の縮みが発生する現象は、原料特性、成形密度、焼成条件、脱バインダー工程、設計想定など、複数要因が複雑に絡み合って発生します。
本質的な品質安定化には、各工程での厳密な管理と測定データの蓄積、早期フィードバック体制が不可欠です。
寸法測定の安定化を実現すれば、歩留まりの向上と顧客満足度の向上にもつながります。
常に工程を見直し、最新の情報管理技術も活用しながら、「想定外」を「想定内」へと変える品質管理を実践していきましょう。