粘度調整が毎ロット必要で標準化が難しい本音

粘度調整が毎ロット必要で標準化が難しい本音

粘度調整は多くの製造現場で避けて通れない作業です。
特に塗料やインキ、接着剤、樹脂など、液体製品を扱う業界では、製品ごと、さらには同一製品のロットごとにも粘度に差が出ることがあり、都度その調整作業を強いられます。
本来なら安定した生産と品質管理のために、粘度管理は標準化されていることが望ましいですが、現場の本音として「毎回微調整が必要」なのが実情です。

どんなにマニュアルや基準を設けても、現場では粘度差が生じ、担当者ごとの経験や勘に頼った調整作業が続いています。
なぜここまで「標準化」が難しいのか、製造現場の本音を交えながら、主な課題と対策を深堀りしていきます。

ロットごとに粘度が違う主な理由

原材料の個体差・入荷時品質のばらつき

粘度は、原材料の特性に大きく左右されます。
化学的なレベルでみれば、分子量や分子分布、含有水分量、添加剤の割合など、材料のばらつきがロットごとに生じます。
メーカー間、場合によっては同じメーカーでも納入されたロットで微妙に異なります。
特に天然系原料や高分子材料などは、環境やロットにより大きなばらつきがあるため、毎回同じ条件での生産が難しいところが悩みです。

気温・湿度の変動による影響

日本の四季折々の気候変動は、製造現場にさまざまな影響を与えます。
特に夏場の高温・高湿度、冬場の低温・乾燥といった極端な条件では、材料の粘度が大きく変わることがあります。
溶剤の揮発量や水分の混入、原材料の膨張・収縮などから、理論値通りの粘度に収まりません。
こうした環境要因はコントロールしきれず、その都度調整せざるを得ない現状となっています。

分散・混合の過程によるムラやエア混入

分散や混合工程で適切なミキシングが行えなかった場合も、粘度にムラやバラツキが生じます。
撹拌条件や機械のコンディション、撹拌時間のわずかな違いが、最終的な粘度値に影響を与えます。
また、十分な脱泡ができずエアーが混入した場合にも、見かけの粘度上昇が発生します。
こうした工程管理の徹底も、毎ロットごとの調整を難しくしている理由の一つです。

粘度標準化を阻む現場の本音

粘度測定方法の統一が困難

理想的には、標準的な粘度計、標準サンプル、統一測定条件で数値管理すべきですが、現場の実態は違います。
粘度カップ(フォードカップ、ズーンカップ等)のタイプ、計測温度、滴下方法など細かな違いがあり、データがブレやすいです。
また、現場によっては作業効率のために簡易方法を用いたり、担当者の経験値に頼るケースが多いのが現実です。
この「何となくこれくらい」という数値以外の判断基準が、標準化を一層困難にしています。

担当者ごとの感覚の違い

例えば「ここまでトロミがあればOK」「若干サラサラしているから、もう少し添加」など、最終判断は担当者個人の感覚に委ねられることが多いです。
ベテランほど「体感」で合致させる技術を持ちますが、この職人技は標準化・数値化が困難です。
若手や異動者への引継ぎがうまくいかず、ヒューマンエラーや品質不安につながるリスクもあります。

時間・手間コストと品質優先のジレンマ

理想を追えば追うほど、「精密な粘度測定」「計量調整」「工程ごとの温調管理」など、細かな作業が増えます。
しかし、現場は限られた人員と時間で多くのロットを処理する必要があります。
そのため、「ある程度まで標準値に合わせたら妥協せざるを得ない」という状況に陥りやすいです。
効率と品質、どちらを優先するかのジレンマのなかで、やむなく人の勘と手間でバランスを取っているのが現場の本音です。

粘度調整標準化に向けた現場の実践例・工夫

粘度測定条件の明確化とルール徹底

まずは測定機器、測定温度、測定方法、評価基準を全生産ラインで統一し、ルールブックを整備することが基本となります。
簡易粘度カップ使用時にも、カップの種類・液量・滴下地点・温度補正の仕方を決め、写真や動画マニュアルを作って新人でも理解しやすくする取り組みが広がっています。

計量・調合システムの自動化

粉体や液体を計量・調合する工程に自動化装置を導入することで、人の勘による誤差を減らすことができます。
近年はIoT対応の粘度計、温度管理デバイス、投入量自動記録システムなど、「どこで、誰が、何をどれだけ」加えたか記録を残し、不良発生時のトレーサビリティ強化にもつながっています。

経験知の言語化と教育強化

ベテラン担当者の「コツ」「勘」の要素を、できるだけ言語化・数値化して共有することも大切です。
例えば、「標準粘度値±○○以内」「気温が高い日は1%希釈する」など、経験則をガイドラインに反映させます。
また、定期的に若手とベテランが協議する「調整会議」を開催し、経験やノウハウを伝承する動きも成功事例としてあります。

品質管理工程でのフィードバック体制

粘度管理は製造部門だけの問題でなく、品質保証部と連携したフィードバックが重要です。
「どのロットでどのくらいの粘度調整が入ったか」「製品不良や苦情発生時の原因分析」などを社内で共有し、次ロット以降の改善に役立てます。
こうしたPDCAサイクルが現場力を底上げするポイントです。

それでも残る現場の本音と今後の課題

標準化が進まない現場のジレンマ

機械やシステム化・マニュアル化が進む一方で、「人の勘と手作業しか頼れない場面」は多く残っています。
特に新原料や新製品の立上げ時、わずかな変化でも製品品質に影響する重要な工程では、最終調整を熟練スタッフが行わざるを得ません。
また機械化すると「余計なトラブル」や「対応の煩雑化」を招くケースもあり、現場スタッフからは「結局、最後は人の調整が一番早い」という声が根強く残ります。

粘度調整人材の属人化リスク

ベテランスタッフに粘度調整のノウハウが集中し、少人数に負荷がかかっている現場も多いです。
そのスタッフが急な休職や退職となると、調整がうまくできず製品品質がバラつく恐れが常にあります。
今後、多様な経験・スキルを持つ人材が育つまでは、属人化リスクの回避が必須課題となります。

AIやデジタル管理技術への期待

近年はAIやデータ解析による工程制御の導入検討も増えています。
過去の膨大な粘度測定データを機械学習し、「この原料・この気候条件なら、この配合・手順」とレコメンドしてくれるシステムも作られています。
その一方で、「設備投資コストが高い」「現場環境や材料ごとのクセには対応しきれない」といった声もあり、導入のハードルが高いと感じる企業もまだ多いです。

まとめ:苦労の本音と理想の両立に向けて

粘度調整作業が毎ロット必要で、標準化がなかなか難しい。
この本音は現場の誰もが抱える共通課題です。
根本的には「材料の性質」「環境要因」「人の感覚」のバラツキをゼロにすることはできません。

しかし、測定方法やルール・ガイドラインの徹底、計量・調合作業の自動化、経験知の共有、デジタル化など、できる範囲で標準化を進めることで、省力化と品質安定につなげることは可能です。
最も大事なのは、現場個々人の努力や苦労を仕組みとして吸い上げ、知見を将来に活かしていく持続的な改善活動です。

これからも粘度調整と標準化の間で悩み続ける現場担当者の本音を理解し、理想と現実のギャップを少しずつ埋めていく取り組みが期待されています。

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