水洗い可能な合皮素材の耐摩耗性試験と縫製条件設定
水洗い可能な合皮素材とは
水洗い可能な合皮素材は、従来の合成皮革とは異なり、水や洗剤による洗浄に耐えられる特別な構造や表面加工を持っています。
合皮素材は省資源性や動物愛護の観点から近年注目が高まっており、見た目や風合いも本物の革に近い製品が増えています。
しかし、合皮の弱点として「水に弱い」「加水分解しやすい」といった点が従来はありました。
そこで、水洗いに対応した合皮素材が開発され、衣料品やバッグ、インテリア用品など多くの分野に展開されています。
水洗い可能な合皮素材は、表面のコーティングやベースファブリックの改良により、高い耐久性と柔軟性、防水・防汚性を兼ね備えているのが特徴です。
耐摩耗性とは何か
耐摩耗性とは、素材の表面が摩擦や擦れによって損傷しにくい特性を指します。
日常生活や洗濯作業、着用中の動きなどで素材表面が摩耗しやすいため、水洗い可能な合皮素材にも優れた耐摩耗性が求められます。
摩耗試験は、JIS(日本産業規格)やISOなどの海外規格にもとづき、専用の機械を用いて素材の表面を繰り返し擦り、摩耗の程度や強度低下を数値化します。
耐摩耗性が高い素材は長期間にわたって美観を保ち、ほつれや破損のリスクを大幅に減少させることが可能です。
合皮素材の耐摩耗性試験方法
1. タバール摩耗試験(Taber Abrasion Test)
合皮素材の耐摩耗性試験のスタンダードの一つが「タバール摩耗試験」です。
この試験は、回転する台の上に素材を固定し、各種規定の負荷で摩耗ホイールを押し当てて一定回数擦り、その損傷具合を観察・測定します。
試験後の質量減少や外観の変化、コーティングやプリント部分の剥離の有無などを評価し、製品の耐久性を定量的に把握します。
2. マルテインデール摩耗試験(Martindale Abrasion Test)
衣料や家具用合皮の場合、マルテインデール摩耗試験もよく使われます。
この試験は、合皮のサンプルに対して規定の圧力でウール生地やサンドペーパーを円運動で接触させ、所定回数の摩擦後に外観や劣化を観察します。
繊維産業向けの耐摩耗性評価の基準となっており、素材のグレード選定に直結します。
3. 洗濯摩耗試験
水洗い可能な合皮素材にとって「洗濯摩耗」にも着目が必要です。
洗濯機を模して合皮サンプルを反復して洗濯・すすぎ・遠心脱水することで、水・洗剤・機械的摩擦の複合的なダメージにどこまで耐えられるかを試験します。
洗濯前後で表面の変化、引裂き強度、色落ちや表面つやの低下の有無などを比較評価します。
耐摩耗性試験における評価基準
耐摩耗性試験では、主に下記のポイントを評価します。
– 摩耗回数や回転数に対する質量減少(g単位)
– 表面の色変化やテカリ、白化、つや消失
– コーティングやエンボス層の剥離・割れ
– ホツレ・ピリング(毛玉)の発生
– 破れの有無
– 裏地やベースファブリックへの影響
また、両面摩耗や複合摩耗(縦横交互摩耗)、洗剤潤滑条件など不具合が発生しやすい条件下での追加試験が推奨されています。
数値的な基準としては、「100,000回摩耗後も劣化なし」「5,000回以上で表面変化なし」など、用途や製品規格ごとに細かく定められています。
水洗い合皮の縫製条件の重要性
水洗い可能な合皮素材は摩耗だけでなく、縫製工程にも特殊な配慮が必要です。
なぜなら、合皮素材は本革や布帛と異なり、縫い目からの破断・裂けやすさ、コーティング部の針抜けやひび割れリスクが高くなる場合が多いからです。
また、水洗い時の伸びやひずみも本革や布帛とは挙動が異なります。
そのため、縫製条件を適切に設定することが耐久性や美観維持に直結します。
針の選定
合皮素材には、細めで鋭い専用三角針(レザー針)を推奨します。
針先端の形状やサイズが適切でないと、コーティング層を余計に広げて剥離やひび割れ、縫い糸の滑脱の原因になります。
また、水洗いで膨潤・硬化した際の引き裂き強度低下も考慮し、できるだけピッチ(ステッチの間隔)を小さめにし、針穴によるピンホール効果を抑える必要があります。
糸の選定
縫製糸には、耐薬品性・耐水性・伸縮性を兼ね備えた高強力ポリエステル糸がベストです。
綿やナイロン糸は水分による劣化や耐久性の低下が大きいため、避けてください。
糸太さは、素材の厚みや用途(衣料、バッグ、家具用など)に合わせて調整し、バランスよく縫製できる太さを選びます。
縫い目ピッチと下糸調整
合皮素材の縫い目ピッチは通常よりやや広め(2.5mm前後)で設定するのが一般的ですが、水洗い対応素材の場合はコーティングの施されていない裏面の引き裂き防止も考慮し、様子を見ながら微調整します。
下糸の締め具合や上圧力も、引きつれやシワ、コーティング層のケバ立ちを防ぐために数値を細かく調整しましょう。
仮縫い・端処理・補強方法
水洗いを繰り返すことで縫製部の端から捲れ、剥離、糸抜けが生じやすくなります。
仮縫い時に洗濯を想定した耐久試験を実施し、端処理や補強テープの追加、二重縫いなどの工夫をしましょう。
また、端部・折り返し部のコーティング剥離防止に熱圧着バインダーや専用接着剤を併用することも効果的です。
量産前に必ず行うべき検証プロセス
新規開発の水洗い可能な合皮素材は、必ず量産前に耐摩耗・縫製耐久試験を入念に実施することが不可欠です。
サンプル製作後に実際に繰り返し洗濯・摩擦テストを行い、課題点(縫い目のホツレ、 合皮表面のひび割れ、色落ち、エンボスの摩耗消失等)をリストアップします。
その上で、縫製条件(糸の種類やピッチ、針の太さ)や端部処理方法を最適化し、顧客やマーケットの使用シーンに耐えうる仕様を確立することが、製品トラブルの低減とブランド価値の向上につながります。
水洗い合皮素材を選ぶ際の注意点
– JISやISO規格の摩耗試験成績を確認する
– 洗濯試験をパスしたことが明示されているか
– 表面コーティングの種類や技術(例:ポリウレタン50μm 2層構造など)を把握する
– 製品サンプルを実際に洗濯・摩擦テストして耐久度を確認する
– 使用予定の縫製糸や針との相性、縫いズレやひび割れが発生しないかプレテストする
上記を満たしていない合皮素材は、たとえ「水洗い可」と表示されていても実際は摩耗や縫製トラブルが多発するリスクがあるため注意しましょう。
まとめ
水洗い可能な合皮素材の製品開発には、「耐摩耗性の正確な評価」と「最適な縫製条件設定」が欠かせません。
タバール摩耗試験やマルテインデール摩耗試験、洗濯摩耗試験などの客観的な試験データを必ず取得し、数値で製品の耐久性を把握します。
縫製条件も、針・糸・ピッチ・圧力など細部までこだわり抜き、量産前に十分な耐久テストと原因分析、最適化を実施しましょう。
これらのプロセスを徹底することで、品質トラブルを減少させ、消費者が安心して長く使える水洗い合皮製品を市場に提供することができます。
耐摩耗性と縫製条件の両輪による品質管理こそ、これからの合皮素材モノづくりの要となるのです。