家具用ラッカー塗装とUV硬化塗装の耐黄変性比較試験
家具用ラッカー塗装とUV硬化塗装の概要
家具の美観や耐用年数を大きく左右する要素のひとつが塗装です。
家具用塗装にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとして「ラッカー塗装」と「UV硬化塗装」が挙げられます。
それぞれ特性や用途が異なり、塗膜の仕上がりや耐久性、作業性に違いがあります。
ラッカー塗装は、溶剤型の樹脂塗料を使用し、空気中の酸素によって乾燥・硬化するタイプです。
刷毛やスプレーなどで塗布されることが多く、明るく透明感のある仕上がりが特徴です。
一方で、溶剤の揮発によるにおいや、比較的黄変しやすい点がデメリットです。
UV硬化塗装は、紫外線(UV)を照射することで樹脂を瞬時に硬化させる技術を用いたものです。
非常に短時間で硬化し、量産家具などにも多く利用されています。
耐薬品性や耐摩耗性に優れ、黄変しにくい点が特徴です。
環境負荷の低減にも寄与できるとして、近年高い注目を集めています。
耐黄変性とは何か?家具塗装における重要性
家具にとっての「黄変」とは、長時間の使用や紫外線・酸素・熱の影響などにより、塗膜が黄色~褐色に変色する現象を指します。
見た目の美しさが損なわれるだけでなく、品質そのものの低下につながる可能性もあるため、家具用塗料において「耐黄変性」は重要な性能評価項目です。
とくに、白や淡色仕上げの家具、ナチュラルな木目を生かした無着色や薄色仕上げでは、わずかな黄変も目立ちやすいです。
また、店舗什器や医療施設・オフィスなど公共空間で使われる家具では、清潔感や高級感の維持が強く求められるため、耐黄変性は製品価値そのものを左右します。
家具用ラッカー塗装の耐黄変性の特徴
ラッカー塗料はセルロース系やアクリル、ポリエステルなど各種樹脂を主成分としています。
一般的な家具用ラッカー塗装は、優れた作業性とリーズナブルなコストから長年広く使われてきましたが、一方で光や空気の影響を直接受けやすく、黄変が進行しやすい点が課題とされてきました。
ラッカー塗膜は、紫外線や酸素の暴露で分子構造が変化しやすく、時間の経過とともに黄~褐色化する傾向があります。
とくに変色が目立つのは、日光がよく当たる場所に設置された家具や、白・淡色の塗膜表現です。
また、室内照明でも、長時間にわたり紫外線や熱を受ける環境では、徐々に黄変が進行していきます。
加えて、塗料に含まれる可塑剤や安定剤などの添加剤も、経年により変質しやすく、これが黄変促進の要因となる場合もあります。
UV硬化塗装の耐黄変性の特徴
UV硬化塗装に用いられる樹脂には、アクリルウレタンやエポキシアクリレートなどの高機能成分が多く使用されています。
これらの樹脂は、紫外線照射によって瞬時に高分子ネットワークを形成するため、非常に緻密で強靭な塗膜を実現します。
一般的なラッカー塗装に比べ、分子間の結びつきが強いため、酸素や紫外線の侵入・反応を最小限に抑えられます。
そのため、黄変の原因物質が生成されにくく、外観変化も起こりにくいという耐黄変性の高さが特徴です。
また、UV硬化塗料には、紫外線に強い原料や着色剤・顔料が使用されることが多く、加えて黄変防止のための専用添加剤も配合されています。
樹脂の選定や調合技術の進化によって、さらに高い耐黄変性を持つ製品が生み出されています。
家具用ラッカー塗装とUV硬化塗装の耐黄変性比較試験の概要
ラッカー塗装とUV硬化塗装の耐黄変性を客観的に比較するためには、専門的な比較試験が必要となります。
代表的な比較試験には、促進耐候性試験(耐光試験)、熱劣化試験、屋外曝露試験などがあります。
これらは、一定の環境下で塗装片(試験片)を長時間暴露し、色の変化や光沢の変化を測定する方法です。
一般的な試験手順としては、
1. 標準化された方法(JIS、ISOなど)に従い、各塗装を施した木製試験片を作成する
2. 紫外線照射装置(ウェザーメーター等)により、規定時間・規定強度の光・熱・湿度環境に曝露する
3. 試験前後の試験片の色相や光沢、透明性の変化を分光測色計や目視で測定・評価する
4. ΔE(色差値)や黄変指数(YI)などの数値で耐黄変性を比較する
これらの試験により、両者の耐黄変性能を定量的に比較できます。
具体的な耐黄変性比較試験の結果事例
ある比較試験の例を挙げます。
代表的な家具用ラッカー(セルロース系)塗装とUV硬化型アクリルウレタン塗装を比較した場合、以下の傾向が得られています。
【促進耐候性試験結果の一例】
– 条件:ウェザーメーターによる紫外線400時間照射
– 測定方法:分光測色計によるΔE(色差)と黄変度(YI)判定
結果概要(標本値・数値は一例)
| 塗装種 | 400時間後 ΔE | 400時間後 黄変指数(YI) |
|————–|————-|————————|
| ラッカー | 8.5 | 15.2 |
| UV硬化塗装 | 2.1 | 3.8 |
この試験結果が示すように、UV硬化塗装はラッカー塗装に比べて顕著に黄変度が低いという結果となりました。
この傾向は、淡色仕上げや白色仕上げなど特に視覚的変化が目立つケースで顕在化します。
耐黄変性試験結果の解釈と実用評価
耐黄変性の評価指標である「ΔE」は、色の変化量を表す国際的な数値基準で、一般的にΔE=1未満ならば肉眼で変化がわかりにくい、ΔE=3以下で軽微な変色、ΔE=5を超えると明らかな変色(黄ばみ)が目立つとされています。
上記比較では、ラッカー塗装がΔE=8.5に対し、UV硬化塗装はΔE=2.1と明らかな性能差があります。
また、黄変指数(YI)も同様に大きく異なります。
この数値は実際の家具製品の長期美観保持やメンテナンスサイクルに大きく影響します。
とくに、店舗什器や高級家具、医院・福祉施設向け家具など、美観維持が強く求められる現場では、UV硬化塗装の採用に大きなメリットがあります。
耐黄変性だけでないラッカー塗装とUV硬化塗装のメリット・デメリット
耐黄変性以外にも、塗装仕様の選択に影響するさまざまな要素があります。
ラッカー塗装のメリットは、作業性の高さと美しい発色、そしてコストの安さです。
小ロット・多品種生産に向いており、オーダーメイド家具や一部アンティーク家具の修復にも根強い需要があります。
修理もしやすく、部分的な補修塗装がしやすいのも特長です。
一方で、溶剤臭の発生やVOC(揮発性有機化合物)排出への環境対策、耐摩耗性・耐薬品性がやや劣るという弱点があります。
また、上記の通り長期的な黄変にも課題があります。
UV硬化塗装のメリットは、圧倒的な耐黄変性・耐摩耗性・耐汚染性・硬度の高さです。
大量生産向けの自動化ラインに親和性が高く、トータルコスト削減や省エネにも寄与します。
しかし、専用設備(UV照射装置)の導入が必要なこと、現場での部分補修が難しいこと、初期投資が比較的高いことが導入の障害となる場合もあります。
耐黄変性テストから得られる家具設計への示唆
これらの試験結果や塗装特性から、家具メーカーやデザイナーは用途や設置環境に応じた最適な塗装仕様を選択すべきだといえます。
例えば、家庭用家具であっても窓際の設置や照明光が強い場所、さらには医療・福祉・教育施設、オフィスなど、常に明るい環境下で長期間使用される場合には、UV硬化塗装の優れた耐黄変性が大きなメリットとなります。
一方、クラシカルな質感や仕上がりの柔らかさ、手触りを重視し、多少のエイジングが味わいとして許容される高級家具・アート家具では、ラッカー塗装の良さが引き立ちます。
つまり、
– 高耐久・高美観が必要な現場→UV硬化塗装がおすすめ
– 補修性や感性表現重視の場合→ラッカー塗装が有効
という住み分けが導き出されます。
まとめ:家具の耐黄変性を確保するための選択肢
家具用塗装の耐黄変性は、美観・耐久性・製品価値維持に直結する重要なテーマです。
耐黄変性の比較試験結果から見ると、UV硬化塗装は家具用ラッカー塗装に比べて圧倒的に変色しづらいというメリットがあります。
最終的には、設置場所や用途、予算、求める仕上がりによって最適な塗装仕様を選択することが大切です。
最新の家具塗装技術や環境配慮型塗料の進化も積極的に取り入れ、長期間美しさを保てる家具作りに役立ててみてはいかがでしょうか。