新人担当者向け！シリコーン改質塗料の特性と適用業界の選び方

シリコーン改質塗料とは？基礎知識から理解する

シリコーン改質塗料は、従来の有機塗料や樹脂塗料にシリコーン樹脂を複合・改質することで、さまざまな特性向上を実現した塗料です。
その最大の特長は、耐候性や耐熱性、撥水性などの性能が格段に優れており、幅広い産業分野で採用されています。
ここでは、シリコーン改質塗料とは何かについて基本的なポイントを押さえておきましょう。

従来塗料との違い

従来のアクリル、ウレタン、エポキシ樹脂などの塗料は、耐候性や耐薬品性、耐熱性に限界がありました。
一方、シリコーン改質塗料は、シリコーン樹脂の分子構造（シロキサン結合）による優れた安定性を活かし、紫外線や高温、多湿環境下でも劣化しにくいという利点があります。

シリコーン改質の仕組み

シリコーン改質塗料は、ベースとなる樹脂成分の一部をシリコーンで置換、あるいは混合・添加することで生成されます。
このことで、もとの樹脂の特長を残しつつシリコーンの特性（耐候性、柔軟性、防汚性など）が付与されます。

シリコーン改質塗料の主な特性

新人担当者の方が業界や製品選定の際に知っておくべき、シリコーン改質塗料の代表的な特性を詳しくご紹介します。

1. 優れた耐候性

シリコーン改質塗料は、紫外線やオゾンなどの外的要因に非常に強く、色あせや劣化を防ぎます。
結果として塗膜の耐久年数が伸び、長期間美観や保護機能が維持できます。
屋外構造物や建築外壁に適しています。

2. 高い耐熱性

シリコーン樹脂は300℃以上の高温域でも安定した性質を保つため、自動車部品や製造設備、煙突、ボイラー等の高温接触部にも対応できます。
一般的な有機塗料よりも明確に長持ちする点が評価されています。

3. 優れた撥水性・防汚性

シリコーン成分が外部から水分や油分の浸入を防ぎ、表面の汚れ付着も防ぎます。
このため、雨や汚染物質の影響を受けやすい環境や、クリーニング頻度を下げたい設備にも向いています。

4. 低温～高温まで柔軟性を発揮

シリコーン改質塗料は、高温だけでなく低温環境下でも割れや硬化が起きにくいです。
機械部品や屋外インフラなど、温度変化の激しい場所でも安心して使用できます。

5. 防食性・耐薬品性

金属の腐食防止や、薬品にさらされる装置・配管への塗装としても有効です。
この特性は食品加工工場や化学プラントでも高く評価されています。

シリコーン改質塗料が使用される主な産業分野

多機能な特性を持つシリコーン改質塗料は、さまざまな業界で活用されています。
ここでは、代表的な適用分野についてご紹介します。

建築・建設分野

住宅やビルの外壁塗装、屋根材の防水塗装、外構設備の保護など、耐候性と美観維持が求められる場面で幅広く採用されています。
また、ビルのアルミサッシや金属パネルへの防食塗装も一般的です。

産業機械・プラント分野

煙突、ボイラー、蒸気ラインといった高温設備への塗装や、耐薬品性の求められる化学プラント内の配管・タンクなどにも使用されます。
配管の継手部分など、温度変化や膨張収縮が発生する部位も安心です。

自動車・輸送機器分野

エンジンルーム内の金属カバーや、排気系のコンポーネントなど、高温部品の塗装に利用されています。
さらに、バスや鉄道車両の外板、各種産業輸送容器の防錆・保護塗装にも向いています。

一般産業分野

食品工場の床や壁、食品製造設備の外装塗装、各種パッケージング機械など、衛生面と耐薬品性が重視される箇所でも選ばれます。
また、家庭用家電や電気機器の外装にも応用が広がっています。

用途と業界に合わせた最適な塗料選定のポイント

新人担当者が現場や顧客から用途や条件のヒアリングをしたとき、どのような基準でシリコーン改質塗料を選べばよいか、その基本的な流れについて整理します。

1. 環境条件を正確に把握する

塗装する対象物の使用環境（屋外・屋内、温度変化の幅、湿度、紫外線曝露量、化学物質との接触有無など）を正確にヒアリングします。
例えば高温環境なら耐熱性能重視、外構物では耐候性と防汚性を重視することになります。

2. 下地素材や下地処理方法の確認

鉄、アルミ、ステンレス、プラスチック、コンクリートなど、塗装下地の種類によって最適なシリコーン改質塗料は異なります。
また、下地処理条件（グリットブラスト、脱脂など）も商品の推奨仕様と照らして確認しましょう。

3. コスト・施工性などの要求を整理する

長期耐久性だけでなく、初期コストやメンテナンスサイクル、現場での施工工程（刷毛・ローラー・スプレーなど）、既存塗膜との相性といった条件も重要です。
特に大規模塗装では経済性の観点も無視できません。

4. 法規制や安全性のチェック

最近は環境規制やVOC規制など、塗料の成分に関する法規制も厳しくなっています。
製品が対応規格を満たしているか、施工にあたっての安全指導が必要かも必ずチェックしましょう。

シリコーン改質塗料の最新トレンドと今後の展望

近年、環境配慮型塗料や省力化ニーズの高まりから、シリコーン改質塗料にも新しい流れが登場しています。

ノンホルマリン・低VOC対応製品の増加

揮発性有機化合物（VOC）をできる限り抑えた水性シリコーン改質塗料や、ホルムアルデヒド発生を防止した配合処方が普及しています。
屋内・屋外問わず、より安全・安心な塗装環境を構築できる点が評価されています。

多機能性・高耐久設計の進化

抗菌性や防カビ性能、自己洗浄機能を持つシリコーン改質塗料開発も進んでいます。
特に医療現場や食品工場など、衛生基準の高い分野への提供が今後増えていくでしょう。

簡易施工・工期短縮への対応

「高隠蔽性」や「速乾型」といった新製品も多数登場しています。
塗装業者やエンドユーザーの負荷軽減と経済メリットの両立も可能となっており、施工性も商品選定の大きなポイントとなっています。

まとめ：新人担当者は用途と特性のマトリックスを活用しよう

シリコーン改質塗料の特性や適用業界は非常に多岐にわたります。
新人担当者は「どんな環境下で何を守るために塗装するのか」という基本を押さえたうえで、取扱メーカーや塗料商社が用意する「特性マトリックス表」や「用途別カタログ」を積極的に活用しましょう。

それぞれの塗料の性能、価格、施工性、安全面、環境対応という観点で比較し、お客様と最適な選定ができるスキルを身につけていくことが大切です。
今後も進化を続けるシリコーン改質塗料の最新情報にアンテナを張りつつ、的確な提案を目指しましょう。