合成ゴムと天然ゴムの違いと選定基準【製品設計者向け】

合成ゴムと天然ゴムの違い

天然ゴムと合成ゴムは、どちらも多くの製品に使用されている材料ですが、その特性や化学組成、使用可能な環境条件に違いがあります。
それぞれの特性を理解することは、製品設計者が最適な材料を選定するために非常に重要です。

天然ゴムの特性

天然ゴムは、ゴムの木から採取したラテックス液を加工して作られます。
主成分はポリイソプレンという高分子化合物で、弾力性と伸縮性に優れています。
そのため、衝撃吸収や弾力が求められる製品に適しています。
また、耐摩耗性が高く、タイヤや防振製品などにも多く使用されています。

しかし、天然ゴムには弱点があります。
それは、耐熱性や耐油性が低いことです。
高温環境や油にさらされると、劣化が早く進行する可能性があるため、使用用途が限られる場合があります。

合成ゴムの特性

合成ゴムは、人工的に製造されたゴムで、異なる化学成分に基づいて多くの種類があります。
一般的な合成ゴムには、スチレンブタジエンゴム（SBR）、ニトリルブタジエンゴム（NBR）、クロロプレンゴム（CR）などがあり、それぞれに特有の特性があります。

合成ゴムは、耐油性、耐熱性、耐候性において優れています。
たとえば、ニトリルゴムは油への耐性が高く、工業用シールやガスケットに適しています。
クロロプレンゴムは、耐候性が高く、屋外で使用される製品に適しています。
また、合成ゴムは化学的に安定しており、長期間にわたって性能を維持する能力があります。

合成ゴムの欠点としては、天然ゴムに比べて弾力性や反発性がやや劣ることがあります。
これにより、用途によっては天然ゴムの方が適している場合があります。

どちらを選ぶべきか？

製品設計において、合成ゴムと天然ゴムのどちらを使用するかの選定基準は、求められる性能や使用条件によって異なります。
以下に、選定時の主な基準を挙げます。

使用環境の条件

製品が使用される環境条件は、ゴムの選定において非常に重要です。
高温環境で使用するのであれば、耐熱性が高い合成ゴムを選定するのが望ましいです。
また、油や化学薬品と接する環境でも耐性が必要で、その場合も多くの合成ゴムが有利です。

一方、特に極端な環境でない場合や弾力性が非常に重要な製品（例えば、弾性ゴム製玩具など）には、天然ゴムが適しています。

耐久性と寿命

長期間使用する製品には、劣化しにくい素材を選ぶことが重要です。
合成ゴムは一般的に耐久性に優れ、化学的な安定性が高いため長い寿命を持つ傾向があります。
したがって、耐久性が製品の重要な性能指標である場合、合成ゴムが適していることが多いです。

コスト考慮

製造コストも、材料を選定する際の重要な要素です。
一般に、合成ゴムは製造コストが比較的高いこともありますが、量産効果を考慮するとコストパフォーマンスが向上する場合もあります。
相対的に低コストで製造可能な天然ゴムは、コストが重視される製品において有利です。

実際の製品事例における選定例

具体的な製品設計のケースにおいて、合成ゴムと天然ゴムの選定判断例を紹介します。

自動車タイヤ

自動車タイヤでは、耐摩耗性と引張強度が求められるため、スチレンブタジエンゴム（SBR）などの合成ゴムが使われることが多いです。
一方で、柔軟性と高い弾性が求められる部分には天然ゴムが使用されます。
タイヤは複合的な素材選定が行われる製品の一例です。

工業用オイルシール

オイルシールは、頻繁に油と接触するため、耐油性が非常に重要です。
このため、ニトリルゴム（NBR）のような合成ゴムが一般に選ばれます。
また、温度変動にも耐えられる素材としても適しています。

スポーツ用品

卓球やテニスのラケットに用いられるグリップ素材では、天然ゴムの弾力性やグリップ性が重要視されます。
使用感が非常に重要なため、このようなケースでは天然ゴムが選ばれることが多いです。

まとめ

合成ゴムと天然ゴムは、それぞれに強みと弱みがあり、適材適所で選定することが求められます。
使用環境、耐久性、コストなどの要素を総合的に考慮して、最適な材料を選ぶことが製品の性能と寿命を左右します。
製品設計者は、これらの特性を理解し、用途に応じた選択を行うことが肝要です。