ポリカーボネートとポリウレタンの耐熱性と成形法の違い

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ポリカーボネートとポリウレタンの基礎知識

ポリカーボネート(PC)は熱可塑性樹脂に分類されるエンジニアリングプラスチックです。
透明性、耐衝撃性、寸法安定性に優れ、光学部品から家電筐体まで幅広く利用されます。
一方、ポリウレタン(PU)はイソシアネートとポリオールの化学反応によって生成される高分子で、硬質フォームからエラストマーまで多様な形態を取り得ます。
弾性、耐摩耗性、柔軟性に富み、靴底、シーリング材、コーティングなどで活躍します。

耐熱性に関する比較

ガラス転移温度(Tg)と耐熱限界

ポリカーボネートのTgは約145℃前後です。
Tgを超えるとゴム状となり、耐衝撃性は保たれるものの剛性が急激に低下します。
連続使用温度は一般に120〜130℃程度とされ、短時間なら140℃近辺まで耐えます。

ポリウレタンは組成によりTgが−50℃から100℃まで幅広く変化します。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)の場合、軟質セグメントと硬質セグメントの比率が温度特性を左右しますが、連続使用温度は80〜100℃程度が上限です。
熱硬化性ポリウレタンエラストマーでは架橋密度を高めることで最大120℃前後まで性能を維持できるものの、PCほどの耐熱性は得にくいです。

熱分解温度と燃焼性

ポリカーボネートは280〜300℃付近で分解が始まります。
自己消火性が高く、UL94 V-2またはV-0グレードを取得しやすい点が特徴です。
ポリウレタンは200〜250℃で熱分解生成物が発生し、フォーム形態では燃焼速度が速い傾向にあります。
難燃グレードを設計するにはハロゲン系またはリン系難燃剤の添加が不可欠です。

熱老化と機械的劣化

ポリカーボネートは高温下での加水分解や紫外線による黄変が問題となります。
耐候グレードではシリコーンブレンドやUV吸収剤の添加が行われます。
ポリウレタンは高温域での加水分解、酸化による硬化、柔軟性低下が顕著です。
防湿梱包や酸化防止剤の配合で長期耐久性を向上させます。

成形法の違い

ポリカーボネートの主な成形法

1. 射出成形
溶融温度は260〜315℃、金型温度は80〜120℃が推奨されます。
厚肉品では真空引きやゲート位置の最適化でヒケを抑制します。

2. 押出成形
光学シートや中空パネルに利用されます。
樹脂温度を280℃前後に設定し、溶融せん断を低減して光学ムラを防ぎます。

3. ブロー成形
大型容器やヘルメットシールドで採用されます。
パリソン温度管理と急冷で透明度と耐衝撃性を両立させます。

4. 熱曲げ・真空成形
押出シートを加熱し、真空吸引で立体形状に加工します。
リードタイムが短く、少量多品種に対応しやすい点がメリットです。

ポリウレタンの主な成形法

1. 反応射出成形(RIM)
イソシアネートとポリオールを高速混合し、金型内で発泡・硬化させます。
低圧注入が可能で、大型複雑形状や低歪み部品に向きます。

2. キャスティング成形
二液を重力注入し、脱泡後に常温または加熱で硬化させます。
エラストマーホイールや防振ゴムで一般的です。

3. TPUの射出・押出成形
溶融温度は170〜220℃とPCより低く、金型温度は30〜60℃で十分です。
可塑剤不要でリサイクル性が高い点が近年評価されています。

4. スプレー発泡・フォーム成形
建築断熱材や自動車内装で採用されます。
液反応系のフォームは自由発泡が可能で、複雑な空隙へも充填できます。

設計・加工時のポイント

肉厚設計

ポリカーボネートは可視光透過率が高いため、光学用途では肉厚均一化と流動シミュレーションが必須です。
ポリウレタンフォームは発泡倍率に応じて肉厚が変動しやすいので、金型設計段階で膨張率を補正します。

金型材料の選定

PCは成形温度が高く、耐熱性に優れるP20鋼やH13鋼が推奨されます。
PU-RIMでは低圧成形のため、アルミ合金やニッケルメッキモールドでコストダウンが図れます。

後加工・接合

ポリカーボネートは超音波溶着、溶剤接着、レーザー溶着が可能です。
高温ソルベントはクラックを誘発するため、メタクリル酸メチル系より炭酸エステル系溶剤が安全です。
ポリウレタンは表面エネルギーが低いので、接着にはプライマー処理が推奨されます。
TPU同士の溶着は高周波溶着で強固に接合できます。

用途別にみる材料選択の指針

高温環境下の機械部品

125℃付近で連続稼働する歯車やハウジングではポリカーボネートが適材です。
耐衝撃性と寸法安定性によりノイズやバックラッシュを抑制できます。

耐摩耗・弾性を求める部品

可動部のガスケット、ローラー、靴底にはポリウレタンエラストマーが有利です。
低温柔軟性が高く、−40℃でも弾性を保持する配合が可能です。

透明性と柔軟性の両立

TPUの光学グレードはポリカーボネートほどの透明度はないものの、屈曲耐性に優れます。
スマートフォンケースやウェアラブルデバイスの外装で採用例が増えています。

断熱材・軽量化ニーズ

硬質ポリウレタンフォームは熱伝導率0.02W/m・K以下を実現でき、冷蔵庫や建築パネルで主流です。
ポリカーボネートハニカム板は断熱と採光を両立でき、温室や屋内間仕切りに使われます。

環境・リサイクル観点の比較

ポリカーボネートは熱可塑性であり、メカニカルリサイクルが比較的容易です。
近年はケミカルリサイクルとして加水分解でビスフェノールAとカーボネートモノマーへ戻す技術が進展しています。

ポリウレタンは熱硬化性フォームが多く、機械的リサイクルは困難です。
マテリアルリサイクルでは粉砕後にバインダーとして再利用されますが、用途は限定的です。
ケミカルリサイクルとしてグリコール解重合や加水分解が研究段階にあります。

TPUは熱可塑性のため、PC同様に再溶融してペレット化が可能です。
自動車OEMではバンパーや内装のTPU回収ループが構築されつつあります。

まとめ

ポリカーボネートは高い耐熱性と透明性、成形加工の自由度が魅力で、120℃を超える環境や光学用途に適しています。
ポリウレタンは弾性、耐摩耗性、発泡による軽量・断熱性に優れ、多様なフォームやエラストマーとして機能を発揮します。

成形法はPCが射出・押出・ブローなど熱可塑性加工に特化しているのに対し、PUは反応射出成形やキャスティングのような化学反応成形が中心です。
設計段階で連続使用温度、機械特性、形状複雑度、リサイクル性を総合的に評価し、最適な材料と成形法を選択することが高品質な製品づくりの鍵となります。

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